[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年3月中旬〜2003年5月中旬)

〔中 国〕

秦山V-2号機、初臨界を達成

 カナダ原子力公社(AECL)はこのほど、浙江省で建設を進めている秦山V期プロジェクトの2号機(CANDU、72万8,000kW)が4月29日に初臨界に達したことを明らかにした。当初計画より51日早く臨界に達成した同機は、6月にも発電を開始する見込み。同じサイトにある1号機(同)は2002年12月31日に営業運転を開始している。

 秦山V期プロジェクトは第9次5ヵ年計画に組み込まれており、1号機は1998年6月、2号機は同9月にそれぞれ着工した。建設費は2基合わせて40億jで、カナダの政府系金融機関から融資を受けている。

[米 国]

NRC、ピーチボトム2、3号機の運転認可延長を承認

 原子力規制委員会(NRC)は5月7日、エクセロン社が所有するピーチボトム2、3号機(BWR、2号機=113万9,000kW、3号機=114万4,000kW)の運転認可の20年間延長を承認した。これにより運転認可期間は、2号機が2033年8月8日、3号機は2034年7月2日までとなった。

 NRC事務局は1月、ピーチボトム2、3号機の運転認可更新に関する環境影響評価(EIS)を発表し、20年間延長した場合でも問題はないとの見解を示していた。また、NRC事務局は、2月の安全評価報告でも問題はないと結論付けていた。

 これまでに、NRCから運転認可の延長(更新)を認められた原子力発電所は、2000年3月のカルバート・クリフス1、2号機(PWR、各88万kW)、同5月のオコニー1、2、3号機(PWR、1・2号機=各88万7000kW、3号機=89万3000kW)、2001年6月のアーカンソー・ニュークリア・ワン(ANO)1号機(PWR、88万3000kW)、2002年1月のエドウィン・I・ハッチ1、2号機(BWR、1号機=89万8,000kW、2号機=91万1,000kW)、2002年6月のターキー・ポイント3、4号機(PWR、各72万6000kW)、2003年3月のノースアナ1、2号機およびサリー1、2号機などで、今回承認された2基を加えると計8サイト・16基。

〔カナダ〕

安全委、ブルースA3、4号機に運転再開認可を発給

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は4月4日、ブルース・パワー(BP)社に対して、ブルースA発電所3、4号機(CANDU、各90.4万kW:休止中)の運転再開を条件付で許可する改定認可を発給した。なお、CNSCは改定認可発給に際して付属文書を作成しており、認可の条件として同文書に記載されている運転再開の事前必要条件を完全に満たすことを求めている。また、BP社の準備状況をみた上で、CNSC動力炉規制局長が運転再開の最終的な承認の判断を下すことになっている。

CNSCが提示した運転再開の条件は、作業員訓練、大規模な配管破断による冷却材喪失事故の解析、安全性向上対策を含む55項目。CNSC事務局はこれらに対するBP社の対応状況をチェックして、委員会の定例会合に提出される動力炉状況報告の中で報告することになっている。

BP社は、現在休止中のブルースA発電所4基のうち、4号機を2003年4月に、3号機を同6月にそれぞれ運転再開することを前提に、CNSCに対して、運転再開に必要な運転認可の変更を申請していた。

CNSCは2002年9月11日にBP社からのブルースA発電所3、4号機の運転再開の申請を正式に受理。今年1月6日にはBP社の作成した環境影響評価報告書を承認し、1月16日と2月26日にオタワで開催された公開ヒアリングを経て、今回の運転再開の承認となった。なお、CNSCは1月14日、BP社に対して、ブルースA3、4号機への燃料装荷を許可。これを受けてBP社は同日午後、ブルースA4号機への燃料装荷を開始した。

BP社は、ブルース発電所を所有するオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社との間で2001年5月にリース契約を結び、現在、ブルースB発電所(5〜8号機 各CANDU、84.0万kW)のだけ運転している。出資者は、カメコ社(31.6%)、トランスカナダ・パイプライン社(31.6%)、BPCジェネレーション・インフラストラクチャー・トラスト(31.6%)のカナダ連合と、ブルース発電所の2労組(合わせて5.2%)。(原産マンスリー2002年9月号参照)

[カナダ]

安全委、ピッカリングA4号機の運転再開を承認

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は5月4日、オンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社が所有するピッカリングA発電所4号機(CANDU、54.2万kW=1997年12月より休止中)の運転許認可について、「保証停止状態(guaranteed shut-dowm state)」の解除と、運転再開に向けた残りの作業の継続を承認した。なお、残る1〜3号機(同)については、引き続き「保証停止状態」のまま据え置かれている。

これによって、OPG社は運転再開作業が完了し次第、4号機の運転を再開することが可能となったが、現段階では1%を超える出力での運転は許可されておらず、全出力運転までにはさらに各段階でCNSCの許可が必要。OPG社は7月1日に4号機の送電網への接続を計画しているが、5月21日のヒアリングでOPG社がCNSCに行った報告では、幾つかの技術的な問題により追加的な作業が発生しているために、送電再開が遅れる可能性が指摘されている。

CNSCは2001年11月5日、OPG社に対して、ピッカリングA発電所1〜4号機の運転再開準備を進める許可を発給したが、OPG社に対して運転再開の条件として、CNSCが指示した改善策を完了させることを要求している。また、OPG社は各原子炉の運転再開ならびに出力上昇の各段階において、CNSCスタッフの許可を受ける必要がある。さらにCNSCはOPG社に対して、各原子炉の運転再開作業の進展状況について、6カ月毎と再起動の直前に報告することも求めている。

OPG社はピッカリングA4号機の運転再開の時期について当初2002年末としていたが、2002年10月末に同社のオズボーン社長兼CEOが2003年上半期まで遅れるとの見通しを示していた。残る1〜3号機の運転再開については、それぞれ4号機の再開から6〜8カ月間隔で順次行われる予定であるが、OPG社がCNSCから現在取得しているピッカリングA発電所4基の運転許認可は2003年6月末が有効期限となっており、CNSCではOPG社に対してこの許認可を2年間更新するよう勧告している。

ピッカリングA発電所はOPG社の前身であるオンタリオ州営のオンタリオ・ハイドロ(OH)社が運転していたが、経済性の悪化を理由に1997年12月に運転が休止された。その後、1999年4月に発効したオンタリオ州エネルギー競争法によりOH社が分割され、同社の発電部門を引き継いでOPG社が発足。同社は州内電力市場自由化の流れの中で、競争力のある電源の確保に迫られ、同発電所の運転再開を決定した。(原産マンスリー2002年11月号参照)

〔カナダ − ルーマニア〕

AECL、チェルナボーダ2号機の原子炉建設を開始

カナダ原子力公社(AECL)は4月17日、海外の2会社と共同で受注したルーマニアのチェルナボーダ2号機(CANDU-6、70万6,000kW 1983年着工:建設中)の原子炉部分の建設を開始したと発表した。

チェルナボーダ2号機は運転中の同1号機(1996年完成)と同じAECLが開発したCANDU-6型炉で、AECLとイタリアのANSALDO社、ルーマニアのS.N.ニュークリアリアクトリカ(SNN)社が共同で1981年に受注した。建設にはこの他、カナダ、フランス、米国の企業も下請けとして参加している。建設費は7億米ドル。

建設期間は48カ月の予定で、建設の最盛期には、AECLの120名以上のエンジニアリングや土木、施工管理の専門技術者が現場で作業に従事する。

〔英 国〕

コールダーホール発電所、予定通り閉鎖 P> 英原子燃料会社(BNFL)は3月31日、運転を続けていたコールダーホール発電所1号機(GCR、出力6万kW)の運転を予定通り停止した。3号機は2001年9月に、2号機と4号機は2001年10月に運転を停止しており、1号機の運転停止により同発電所は閉鎖された。

 BNFLは2002年6月21日、8基のマグノックス炉の閉鎖を前倒しで行うと発表。コールダーホール発電所(GCR、6万kW×4基)は2003年初頭(当初予定は2006年)に、チャペルクロス発電所(GCR、6万kW×4基)は2005年3月まで(当初予定は2008年)に、それぞれ予定を早めて閉鎖されることになった。

 マグノックス炉は、1950年代から60年代にかけて運転を開始した初期のガス冷却炉。英国では電力の卸売価格の低下が顕著で、他のマグノックス炉に比べて出力が小さい両発電所では、運転コストが売電収入を上回っていた。こうしたことから、BNFLは両発電所に限り、2000年5月に発表したマグノックス炉の閉鎖計画に盛り込まれた閉鎖予定時期の前倒しを決断していた。

BE支援法が成立

 政府が1月10日に発表した電気事業法改正法が5月8日に成立した。改正電気事業法は、2002年11月にブリティッシュ・エナジー(BE)社が発表した再建計画の支援を目的としたもので、政府は必要に応じてBE社に公的資金を導入することが出来る。また最悪のシナリオとして再建計画が失敗した場合も想定しており、その場合、BE社または同社の資産を政府所有とすることを盛り込んでいる。

 現行の「1989年電気事業法」は、BE社の株式を政府が保有することを認めていないが、法改正によって政府所有が認められることになった。また、原子力債務に対する財政援助の上限も撤廃し、財政援助に対する課税を優遇することも可能としている。

 BE社の再建計画は、支払いの一時凍結や債権の一部放棄、BE社所有のブルース・パワー社(カナダ)とアマージェン社(米国)の株式売却などが柱になっており、すでにブルース・パワー社の売却は2月14日に正式に完了している。また、政府は3月に欧州委員会(EC)に対しBE社再建計画の承認を求める申請も行っており、ECの承認が得られ次第、実施に移すことになっている。

[フランス]

議会委員会、EPRの年内発注を提言

 議会科学技術選択評価局(OPECST)のバタイユ(社会党)とビロー(大統領多数派連合:UMP)両議員は5月14日、政府に対して欧州加圧水型炉(EPR)初号機(原型炉)の建設に遅滞なく取りかかるとともに、既存の原子力発電所の運転期間延長に積極的に取り組むよう提言した。提言が盛り込まれた「発電所の寿命および新型炉について」と題する報告書は、国民議会が昨年11月、OPECSTに調査を依頼していたもの。両議員はともに原子力推進派で、特にバタイユ氏は1991年に成立した放射性廃棄物管理研究法の生みの親であり、地下研究所の立地にあたり仲介役を務めた経験を持つ。

 報告書によると、運転中の原子力発電所は最も古いフェッセンハイム1号機(PWR、92万kW)が2017年に40年目を迎えるほか、2020年までに13基、2025年までに24基が40年目を迎える。このため、両氏はこれに代わる新型炉として、EPR数基を2020年までに稼働させる必要があるとしている。建設期間に5年間を見積もると、着工は2015年ごろ。それまでにEPR原型炉で運転経験を積み、商業炉に反映させるためには、初号機を2010〜2015年にかけて運転する必要があるとしている。これから逆算すると、EPR初号機は2003年に発注し、入札や法的手続きを経て、2007年までに着工、2012年には営業運転を開始しなければならない計算になる。両氏は、EPR原型炉から商業炉へ運転経験をフィードバックさせるとともに、電力の安定供給のため、90万kW級原子炉の閉鎖とEPR建設のタイミングを見極めることが重要だとしている。

 また、両氏は原子力発電所の運転期間(減価償却期間)を30年から40年に延長するとともに、将来は米国のようにさらに20年間の更新を可能とするよう提言している。フランスの現行の規制は、運転期間に関して明確に定めておらず、規制当局である原子力安全・放射線防護総局(DGSNR)が10年毎に安全審査を行った上で更新している。

 フランスでは、昨年シボー1、2号機(PWR、各151万6,000kW)が営業運転を開始し、建設中・計画中のサイトはなくなった。次の新規プロジェクトとして期待されているのは、ドイツと共同開発したEPR。昨年の総選挙で、シラク大統領率いるUMPが勝利を収め、緑の党が政権を離れたため、EPRの発注に期待が持たれたが、新政府はこれまで政府主導で推進してきた原子力を含めたエネルギー政策を国民参加型に変更する方針を打ち出した。その一環として、今年3月〜5月にかけて国内で6回にわたるエネルギー討議が開催された。予定では、6月中にも討議が総括され、これを踏まえて年内にエネルギー政策法が起草される。なお、今回の報告書では、法律の中にEPR建設についても明記するよう提言している。

[ベルギー]

総選挙で緑の党が敗退

 5月18日に行われた議会総選挙(下院:定数150)の結果、連立与党である自由党と社会党をあわせた議席が過半数を大きく上回る97に達した。前政権から連立に加わり、脱原子力政策を主導した緑の党は議席数を20から4議席へと大幅に減らした。今回の選挙戦では原子力は争点とならなかったが、緑の党がブリュッセル空港の夜間飛行問題で首相の方針を批判し、連立政権内の混乱を起こしたのが敗因と見られている。一方、移民排斥を訴えているフラームス・ブロックは、得票数を伸ばし、前回より3議席増の18議席を獲得した。

 新政権はフェルホフスタット首相(自由党)が続投し、自由、社会両党を中心に約1カ月間にわたって連立交渉が行われる予定。新政権に緑の党が加わるかどうかは未定。来年に予定されている地方選挙を有利に戦うため、緑の党との連立が必要とされる一方で、今回躍進したフラームス・ブロックが初入閣するとの見方もある。いずれにしても、新政権下における緑の党の発言力が低下することは避けらず、同党の肝いりにより成立した脱原子力法が廃棄される可能性も出てきた。

[オランダ]

新政府、ボルセラ発電所を2013年まで運転へ

 今年1月の総選挙を受けて、5月中旬に発足したバルケネンデ前首相(キリスト教民主勢力:CDA)率いる3党連立政権は、国内で唯一運転中のボルセラ原子力発電所(PWR、48万1,000kW)の運転期間を運転開始から40年目にあたる2013年とする方針を基本政策の中で明らかにした。新政権に参加しているのはCDAのほか、中道右派の自由民主党(VVA)と民主66党(D66)の2党。2013年は、同発電所の設計上の耐用年数にあたる。

 CDAは当初、第2党に躍進した労働党との連立を模索したが、最終的な経済政策で合意が得られず、連立交渉が4月に決裂した。労働党は選挙期間中、緑の党(グリーン左派党:GL)や社会党とともにボルセラ発電所の早期閉鎖を主張していたため、仮に保革連合が成立した場合、同発電所の早期閉鎖が政策に盛り込まれる可能性もあった。

 こうした経緯をふまえ、同発電所を所有・運転するEPZ社は3党新体制の下で、早期閉鎖が免れたことに対して一定の評価を下した。ただ、EPZ社は同発電所の運転管理や保守を適切に行い、2013年以降の運転継続をめざす姿勢を崩していない。

 1973年に運転を開始したボルセラ発電所の運転をめぐっては、これまでも政党間で意見が対立してきた。CDAは94年、当時のSEP社(現EPZ社)に対して発電所の安全性向上を条件に運転継続を認めたものの、その直後に労働党政権が誕生。議会は2003年末の停止を決定した。これを不服とするEPZ社の従業員らの訴えを受けたオランダ高等行政裁判所は2000年、議会の決定を違法と判断。民事裁判所も2002年、早期に閉鎖する法的な根拠はないとする判決を下した。これに対し政府は昨年、上訴しないことを決めたため、EPZ社と政府との訴訟は終結している。しかし、今後の政局によっては再び同発電所の早期閉鎖が浮上する可能性もあると見られている。

 ボルセラ発電所は、オランダの総発電電力量の約4%を供給している。ゲール環境副大臣(CDA)は、ボルセラ発電所が京都議定書の目標を達成する上で決め手になるとし、地球温暖化防止における同発電所の貢献度を高く評価している。

〔スウェーデン〕

81%が段階的閉鎖に反対

 最新の世論調査によると、8割を超える人が原子力発電所の運転継続を支持していることが明らかになった。

 スウェーデンの世論調査機関TEMOが4月、1021人を対象に実施した調査によると、50%が「安全上の問題がない限り運転を継続する」と回答。また19%が「運転を継続し、運転寿命に到達したら新規炉で代替する」、12%が「原子力発電開発を推進し、必要なら新規炉を建設する」と回答し、政府が方針としている段階的閉鎖に81%の人が反対している現状が浮き彫りになった。「11基の原子力発電所の段階的閉鎖を支持する」と回答した人はわずか17%だった。

 将来の電源を選択する際、原子力発電がCO2を排出しない点は、「非常に重要(48%)」か「比較的重要(38%)」と認識されており、「それほど重要ではない(8%)」と「まったく重要ではない(4%)」等の意見を大きく引き離した。

 政府は3月20日、2003年末とされていたバーセベック2号機の早期閉鎖期限を2004年末まで延期することを議会に提案。議会は6月11日に、採決をする予定である。なお同国の送電網を所有・運営するSvenska Kraftnät社は、「2号機が閉鎖された場合、南部スウェーデンへの電力供給は、厳冬期には電力輸入に頼るとしても危機に瀕する」と警告している。

〔フィンランド〕

TVO、新規建設の入札を締切

 民間電力会社であるテオリスーデン・ボイマ社(TVO)は3月31日、新規に建設する原子炉の入札を締め切った。同国5基目となる原子力発電所は、既存のロビーサ発電所かオルキルオト発電所のどちらかに建設される。2002年9月30日に発表された入札要件では、出力(100〜160万kW)だけが明らかにされていた。

 TVOは今後入札評価を行い、2003年末に炉型と建設サイトを最終的に決め、政府に建設認可を申請する予定である。順調に進めば2005年にも建設認可を取得して着工し、2009年にも運転を開始する見通し。建設費は17億〜25億ユーロ(約1990億円〜2930億円)と推定されている。

 米GE社製ABWR(出力136万kW)、仏フラマトムANP社のEPR(PWR、出力155万kW)とSWR1000(BWR、出力97万7000kW)、ロシア製VVER91/99(PWR、出力107万kW)が選定候補にあげられている。

オルキルオト1,2号機、出力増強

 TVOは4月4日、オルキルオト1,2号機(BWR、出力各87万kW)の高圧蒸気タービン交換でアルストム社と契約した。契約総額は3500万ユーロで、2005-2006年に納入される予定。タービン交換により熱効率が向上し、出力が増強される。

POSIVA社、地下研究施設の建設認可を申請

 POSIVA社は5月20日、地下研究施設(ONKALO)の建設認可を政府に申請した。ONKALOは最終処分場建設の前段階と位置付けられるもので、オルキルオト発電所近郊のユーラヨキ地点に建設される。

 POSIVA社は1999年5月26日、使用済み燃料の最終処分場建設について、オルキルオト原子力発電所近郊のユーラヨキ地点を建設候補地として選定、政府に申請した。政府は、建設予定地域住民が建設計画を支持していることや、原子力安全当局であるフィンランド放射線・原子力安全センター(STUK)も同計画を支持していることなどから、2000年12月21日、建設を承認する原則決定を下した。議会も2001年5月18日、159対3の圧倒的多数で承認した。

 岩盤の特性などを調査するONKALOは、2003〜2004年の間に建設を開始。ONKALOでの実際の調査作業は2006年頃にスタートする予定で、調査の結果問題がなければ、ユーラヨキでの最終処分場の建設・操業の認可申請を行うことになる。

 最終処分場は2011年着工、2020年操業開始を予定している。

〔スロバキア〕

スロバキア電力、2004年に部分民営化

 国営のスロバキア電力(SE)はこのほど、2004年上半期に同社の部分民営化を実施すると発表した。SEは2002年8月に49%の株式売却の予備的な競争入札を実施。現在、入札評価が行われている。

 部分民営化に当たっては、ボフニチェA-1原子力発電所(HWGCR、出力14万4000kW)の廃炉措置に加え、EUとの合意に基づきボフニチェ1、2号機(PWR、出力各44万kW)をそれぞれ2006年、2008年に閉鎖することが決まっているため、これらをどうするかという課題が残されている。また、SEの資産の49%を売却するのか、SEを原子力部門と非原子力部門に分離した上で各部門の資産の49%を売却するかも、まだ最終的に決まっていない。

 SEはスロバキア国内の電力の約86%を供給しており、うち、原子力シェアは65%(2002年実績)。部分民営化手続きに当たっては、世界最大規模の会計事務所であるプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が政府アドバイザーとして参画している。(2003年5月)

〔ルーマニア〕

チェルナボーダ2号機完成へ向け残金支払いが完了

 ルーマニアの国営電力会社Nuclearelectrica社はこのほど、海外からの融資を得てカナダ原子力公社(AECL)と伊アンサルド社に残る4500万ユーロの支払いを完了した。これにより2001年5月にNuclearelectrica社が両社との間で締結したチェルナボーダ2号機の最終的な建設契約が発効した。

 チェルナボーダ発電所では2〜5号機が建設中だが、3〜5号機の建設作業は現在中断されている。83年1月に着工された2号機の建設作業は、現時点で進捗率45%に達しており、追加資金の手当てが課題とされていた。2号機は2004年〜2006年には運転を開始する予定である。(2003年4月)

チェルナボーダ1号機、運転認可を更新

 ルーマニアの原子力規制国家委員会(CNCAN)は5月6日、チェルナボーダ1号機(CANDU、出力70万6000kW)の運転認可を2005年4月30日まで延長することを承認した。ルーマニアでは運転認可を2年毎に更新することが義務付けられている。

〔ブルガリア〕

最高行政裁、コズロドイ3,4号機の早期閉鎖は「違法」

 ブルガリアの最高行政裁は3月28日、コズロドイ3,4号機(PWR、出力各44万kW)を2006年に早期閉鎖するとしたブルガリア政府と欧州委員会(EC)の合意は違法との判断を下した。政府の早期閉鎖政策に反対する社会党副党首、L.コルネゾフ氏率いるグループの異議申し立てに基づくもので、最高行政裁は「政府は両機の早期閉鎖について社会、経済、安全面から十分に審査したとは言えない」として、この申し立てを支持した。

 ブルガリアの法律では最高行政裁の裁定は最終的なものであり、これに控訴することはできない。政府がこの裁定に従わない場合、責任者は3年以下の禁固に処せられる。しかし、国内の裁判所の裁定は国内でのみ有効で、EU加盟に関する合意事項に影響は及ぼさないとの見方もあり、S.パシ外相およびM.クネワ欧州問題担当相は、今回の裁定の解釈を閣僚議会の司法部門に求める方針である。

 また政府は5月12日、コズロドイ3,4号機を1機でも閉鎖した場合の経済的・社会的影響を検討するワーキンググループを発足。同グループは6月30日に政府に報告書を提出することになっている。

 ブルガリア政府とECは、99年11月30日、ブルガリアのEU加盟への条件としてコズロドイ1-4号機の閉鎖で基本合意。その後1,2号機(PWR、各44万kW)については2002年末までに閉鎖することで合意し、両機は2002年12月31日に運転を停止。また政府は2002年10月1日、3,4号機を2006年末までに早期閉鎖することでECと合意。しかしこれは「3,4号機の閉鎖はEU加盟を果たした2007年以降」とする議会決定に反するもので、政府は国内で激しい非難を浴びていた。

 ブルガリア原子力規制庁(NRA)は、規制当局としての立場から両機の安全性を認めており、2月26日にコズロドイ4号機の10年間の運転認可更新を承認したのに続き、5月23日に同3号機の8年間の運転認可更新を承認している。

〔ロシア〕

2005年就航予定の原子力砕氷船の船名を変更

ロシア原子力省(MINATOM)は5月中旬、建造中の同国8隻目の原子力砕氷船が2005年に就航すると発表した。また、就航の遅れから、船名を「勝利50年」号から「勝利60年」号に変更することも明らかにした。なお、バルチック造船所とロシア運輸省海上輸送局は2月25日、連邦政府予算25億ルーブルをかけて2005年に完成させる契約を取り交わしている。

「勝利60年」号は1989年10月4日に「ウラル」の名でバルチック造船所で建造が開始され、1993年12月3日に進水した。しかし、予算不足から1995年に進捗率80%程度で建設が中断。この時点では第二次世界大戦勝利50周年にちなんで「勝利50年」と船名がつけられていたが、就航が2005年となったことから再度変更されて、「勝利60年」となった。(原産マンスリー2003年3月号参照)

ウラン生産量の倍増を計画

MINATOMのソローニン第一副大臣は4月18日、議会での発言の中で、政府がウランの生産量の倍増を計画していることを明らかにした。現在年間およそ3,000トンのウラン生産量を、将来的に5,000〜6,000トンにまで引き上げる。

ロシアの現在の年間ウラン消費量は2,800〜3,300トンであり、これに輸出分を加えると、年間およそ6,000〜7,000トンになり、不足分は在庫等により賄われている。同副大臣によれば、こうした状況を前提として、増産によって2030年まではウラン不足を回避できるとしている。

建設中断の発電所10基を完成へ

イタル・タス通信によれば、MINATOMのルミャンツェフ大臣は4月23日、ロシアの今後の原子力発電開発に関して、建設が中断している10基の原子力発電所を完成させるとする一方で、新規の発電所の建設は原則行わないとの方針を示した。

完成を目指す原子力発電所は、1986年のチェルノブイリ発電所事故以前に着工されたものの、経済的な問題などから建設が中断された、カリーニン3号機(VVER-1000、100万kW)やクルスク5号機(RBMK-1000、100万kW)などの10基。同大臣は、これらの発電所はすでに進捗率が概ね70〜80%に達しているため、完成に要する費用は新規建設に比べて少なくて済むとしている。ただし、同大臣は、極東のプリモリエ(沿海)地方で建設が計画されているプリモリエ発電所(炉型未定)については、同地方の電力自立と日本などへの電力輸出が期待できるとして、建設計画を続行するとしている。

プリモリエ発電所建設計画は、プリモリエ地域ならびに隣接するハバロフスク地域の一部に電力を供給することを目的に、新規に64万kW(VVER-640)ないしは100万kW(VVER-1000)の原子力発電所を建設するというもの。また、余剰電力は日本、中国、北朝鮮、韓国などの近隣諸国に輸出することも検討されている。MINATOMでは2005年までにフィージビリティ調査を完了し、2015年以降に着工するとしている。

〔ロシア−インドネシア〕

インドネシアに海上浮揚式原子力発電所を提案

メガワティ大統領のロシア・東欧歴訪に同行したハッタ研究技術大臣は4月19日に行われた帰国後の記者会見で、今回の訪問中にロシアからインドネシアに対して、海上浮揚式原子力発電所建造の申し出があったことを明らかにした。アジアタイムズ誌が4月22日付けで報じた。

ハッタ大臣は、インドネシアでは電力消費の伸びと国内石油資源の減少により、2015〜17年には電力の供給不足が見込まれているとした上で、その頃には海上浮揚式発電所が必要になるだろうと語った。多数の島からなる同国にとって、遠隔地への電力の供給は大きな課題となっている。同大臣によれば、今回ロシアが提案した海上浮揚式発電所は電気出力4万kWで、海上を曳航して移動が可能。このため、ある一定の条件を備えた海岸部なら何処にでも設置することができ、電力供給の地域的な格差の是正に大きな役割を果たすことが期待されている。

ロシアはかつて、ソ連海軍向け推進用原子炉として設計された出力3.5万kWのKLT-40C型原子炉(PWR)2基を1隻に搭載する海上浮揚式原子力発電所の建造を、インドネシアの東部遠隔地への原子力発電導入計画に対して提案したことがある。しかし、この計画は同国の経済危機で、1998年に中止となった。

〔ウクライナ〕

チェルノブイリ発電所のシェルター計画が新段階に

ウクライナのヤヌコビッチ首相は4月3日、事故を起したチェルノブイリ4号機(RBMK-1000、100万kW、閉鎖)の既存の石棺を覆う新しいシェルターの設計に関する競争入札の手続きが開始されたことを受けて、チェルノブイリ・シェルター実施計画(SIP)が、新しい段階に入ったと発表した。

この発表は、ロンドンで行われたヤヌコビッチ首相と欧州復興開発銀行(EBRD)のルミエール総裁との会談の後に行われた。会談の席上、ヤヌコビッチ首相は、SIPに関連した制度ならびに規制上の環境の改善に対して、ウクライナ政府はさらに支援を行うと発言。ウクライナ政府のSIPに対する積極的な姿勢をアピールした。また、ガイダク副首相も、前日に開かれたEBRDのサッコマンニ副総裁との会合で、チェルノブイリ発電所のデコミッショニングとSIPは、ウクライナ政府にとって最優先事項であると語っている。

EBRDとウクライナによれば、まず既存の石棺の崩壊を防止するための安定化対策についての入札が行われ、続いて新しいシェルターの概念設計ならびに新シェルターを4号機の上まで移動するための橋渡し設備の設計についての入札が行われる。

既存の石棺の安定化は5月中には設計が固まる予定で、9月には請負業者を決定し、2003年末までには約1,500人の作業員を投入した現地作業も開始される見通しとなっている。一方、新シェルターは最低でも100年の寿命をもった2万トンの鉄製で、2003年中に概念設計を完了させる予定。なお、石棺内部に残っている燃料含有物質(FCM)を管理する最終戦略の策定については、新シェルターの設計完了後に行われることになっている。SIPの完了は2007年の予定。

国際チェルノブイリセンター(ICC)は4月末、SIPの本格化により、2003年中の設備や施設に対する支出が7,700万米ドルに達するとの見込みを示した。1998年の開始以来、SIPに支出された金額は1億2,000万米ドルに及んでいる。

ウクライナとG7は1997年4月、1986年に事故を起こしたチェルノブイリ4号機を覆っている石棺の安定化ならびに新シェルターの建設と石棺内部のFCMの除去を進めることで合意し、SIPを取りまとめた。資金については総額で7億6,800万米ドルが必要であると試算されており、G7やEUを中心とした各国からの拠出によりチェルノブイリ石棺基金(CSF)が設立され、欧州復興開発銀行(EBRD)が管理している。(原産マンスリー2002年6月号参照)

南ウクライナ発電所を改良へ

ウクライナの国営原子力発電会社エネルゴアトムは2003年中の投資計画の中で、南ウクライナ発電所(VVER-1000、100万kW×3基)の改良と機器交換のために1億6,200万グリブナ(約2,800万ユーロ)を割り当てることを明らかにした。

投資額の内訳は、交換機器の購入や改良工事に8,700万グリブナ、政府承認による「包括的近代化並びに安全性向上計画」の実施に5,700万グリブナ、予備機器の購入に1,800万グリブナ。エネルゴアトムによれば、交換機器の中には、2003年の定期検査中に交換が予定されている2号機の蒸気発生器2基も含まれている。(2003年4月中旬)

放射性廃棄物等の取扱い強化法案が可決

ウクライナ議会は放射性廃棄物等の取扱いに関する現行の原子力法令を修正・強化する法案を可決した。

新しい法律は、放射性廃棄物や電離放射線源の物的防護に関する全ての活動に対して、義務的なライセンスを導入するというもので、放射性廃棄物管理に責任を負う国の機関が執行状況を監視するとしている。この法律の施行により、現行の原子力法令はこの法律に適合するように修正されることになる。(2003年5月中旬)

〔南アフリカ〕

PBMR計画、原型炉建設段階へ

南アフリカ電力公社(Eskom)は5月16日、同社が中心となって進めているペブルベッド・モジュール高温ガス炉(PBMR)開発計画について、政府によるライセンスの発給や環境影響評価作業(EIA)結果の承認などの法的手続きが完了することを条件に、原型炉の開発・建設・運転を行うフェーズUを開始する準備が整ったと発表した。同計画に参加している国内外の出資者が、フェーズUの開始に合意したことを受けたもの。

PBMR計画はまずフェーズTとして、原型炉建設のためのEIAや詳細フィージビリティ調査、商業化戦略作成などの机上作業に加え、ガスタービン試験装置による実証試験などが実施され、2002年末でほぼ完了した。

Eskomは、原型炉に続く商業炉について、原型炉の建設・運転を通じて費用対効果などの条件が満たされ、政府の認可が得られれば、引き続き商業炉の建設まで進めるとの立場を改めて示した。

PBMRは電気出力12.5万kW(原型炉)〜16.5万kW(商業炉)の小型高温ガス炉で、輸出も視野に入れた次世代発電炉として、Eskomによって1993年から実用化の検討が進められてきた。現在はPBMR計画の事業主体としてEskomが中心となって設立したPBMR社が具体的な作業を進めている。PBMR社にはEskomの営利事業部門であるEskomエンタープライゼス社の他、南アフリカ国営開発金融機関のインダストリアル・デベロップメント社(IDC)、英国原子燃料会社(BNFL)、米国のエクセロン社が出資。なお、エクセロン社は2002年4月、PBMR開発計画のフェーズUには参加しないことを明らかにしており、PBMR社では残りの出資者の出資比率変更や新しい出資者の募集など、エクセロン撤退にともなう対応を検討している。(原産マンスリー2003年2月号参照)

【終わり】


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