[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2003年5月中旬〜6月中旬)

米国:原子力発電所新設の財政支援法案可決が現実味

― 9月に支援法案が可決へ

米国上院は6月10日の本会議で、原子力発電所の新設に対して財政面で国が支援することなどを盛り込んだ規定を包括エネルギー法案(S. 14)から削除するとした修正動議を50対48の僅差で否決した。共和党の40名と民主党の10名が反対票を投じた。上院のエネルギー・天然資源委員会の委員長を務めるP.ドメニチ議員は、この規定を盛り込んだ包括エネルギー法の成立に自信を深めている。

上院版の包括エネルギー法案は最終採決のあと、両院協議会で下院版のエネルギー法案とのすり合わせが行われ、そこで合意に達した最終的な法案についてそれぞれ上院と下院で再度採決が行われる。両院で可決されれば、あとは大統領の署名を経て正式に法律となる。ドメニチ議員は、議会が休会になる8月前に包括エネルギー法案に対する上院としての最終採決を行ったあと両院協議会にかけ、9月には最終的な法案を両院で可決できると予想している。

今回、かろうじて生き残った原子力関連の規定のうち最も注目されているのは、原子力発電所の建設プロジェクトに対して、6基・840万kWまで最大で50%の融資保証を政府が行い、原子力発電所の新設を国が後押しするというもの。

このほか原子力関係では、(1)水素を製造するための原子炉を11億ドルをかけてアイダホ国立工学環境研究所に建設する(2)使用済み燃料を化学的に処理するための方法を研究するとともに、使用済み燃料の量と長期に及ぶ放射毒性を低減するため8億6500万ドルを拠出する(3)その他の原子力研究開発予算を増額する(4)新しい原子力発電所の電力を購入する契約をエネルギー省が結ぶことを認める(5)プライス・アンダーソン原子力損害賠償法を永久に認可する――などの施策が盛り込まれている。

政府による融資保証は、原子力だけではなく他のエネルギー源に対しても行われることが規定されている。具体的には、天然ガスをアラスカのノーススロープ油田から48の州(ハワイを除く)まで持ってくるパイプラインの建設に総額で180〜200億ドル、また風力発電についても310億ドルを融資保証することが盛り込まれている。

【終わり】

Copyright (C) JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. (JAIF) All rights Reserved.