[諸外国における原子力発電開発の動向] 主なできごと (2003年6月中旬〜7月中旬) |
台湾:第四原子力発電所の是非を問う住民投票を実施へ与党・民進党、原子力発電利用も含めた台湾の完全非核化を模索游錫 (ユウシャクコン)・台湾行政院長(首相)は、6月27日に開催された行政院の「非核国家推進委員会」で、行政院に専門小組(専門小委員会)を設置し、2004年3月に予定されている総統選挙までに第四(龍門)原子力発電所(ABWR、135万kW×2基)の建設問題に関する住民投票を実施すると発表した。 27日の非核国家推進委員会では、第四原子力発電所に関する住民投票のほか、@台湾原子力法と電力業務法(電気事業法)の改正、A代替電源確保と再生可能エネルギー利用の拡大、Bバックエンド問題の解決――などを骨子とした(原子力発電利用も含めた)台湾の完全非核化に向けた方針が打ち出された。 台湾では、2000年3月の総統選挙で脱原発を公約に掲げた民主進歩党(民進党)の陳水扁氏が当選。原子力発電利用を推進する野党・国民党との間で第四原子力発電所の建設が大きな政治問題に発展し、2000年10月から2001年2月まで建設工事が中断するなど紆余曲折を経てきている(囲み記事を参照)。龍門原子力発電所は2001年2月から建設工事が再開され、2003年7月現在、工事進捗率は47%。6月13日には、日本(バブコック日立)から1号機の原子炉圧力容器が出荷されており、1号機が2006年7月、2号機が2007年7月に完成する予定である。 民進党政権が第四原子力発電所問題に関する住民投票の実施を打ち出したのは今回が初めてではない。民進党は、2001年にも住民投票の実施が望ましい大きな問題について住民投票を実施するための「住民投票法案」を立法院に提出(対中関係や台湾経済への影響を懸念する野党・国民党などの反対により不成立)。また、2002年11月には、「最終的な(原子力発電利用を含む)台湾の非核化と経済・社会・技術政策の策定にあたっての環境配慮の最優先」を骨子とした環境基本法が成立している。 ただ、2002年12月、立法院・科学技術委員会で、「(原子力発電利用も含めた)非核化は台湾の国是となったが、いつになったら実現するのか」との民進党議員からの質問に対して、欧陽敏盛・台湾原子力委員長は、「(原子力発電利用も含めた)台湾の完全な非核化は、(建設中の第四原子力発電所が運転寿命に達する)2061年以降になると考える」と答弁しており、完全な非核化(脱原発)は実現可能としてもかなりの時間を要するとみられる。 今回、提案された住民投票の実施については、民進党も「住民投票は民生問題と公共工事問題に限定したもので、台湾独立の是非を問う住民投票をねらったものではない」と言明していることから野党側も軟化しており、立法院での審議が順調に進めば8月にも「住民投票法」が成立する可能性が高い。 今回、与党・民進党が第四原子力発電所問題に焦点をあてた住民投票の実施を打ち出した背景には、今年5月に中国によりオブザーバー参加が見送られた世界保健機関(WHO)への加盟問題や立法院改革(立法委員の定数削減)など、台湾住民に関心の高いテーマについて住民投票を行うことで、台湾の独自性と民主化の浸透を内外に印象付けるというねらいのほか、与党・民進党内の反原発派に対する”懐柔策”とみることもできる。 台湾では、現在、第一(金山)(BWR、63万6000kW×2基)、第二(国聖)(BWR、98万5000kW)、第三(馬鞍山)(BWR、95万1000kW)の6基(合計出力:514万4000kW)が運転中。2002年には前年実績(350億kWh)から8.5%増の380億kWhを発電し、総発電設備容量に占める原子力発電シェアは22.9%(2002年は21.6%)となった。 (参 考)
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