[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年6月中旬〜2003年7月中旬)

[米 国]
国際原子力研究イニシアチブにカナダとブラジルが参加

 エネルギー省(DOE)は6月、革新炉技術の国際協力拡大に向け、カナダとの間で17日、ブラジルとの間で20日、それぞれ「国際原子力研究イニシアチブ」(I-NERI)協定に署名した。2001年にはフランス、韓国との間でも同じ協定に調印している。

 また、ブラジルとの間ではエネルギー協力に関する覚書が正式に交わされ、今後両国間で本格的な協力が進められていくこととなった。

 エイブラハムDOE長官は、「ブラジルとの協力は、ブッシュ大統領が国家エネルギー政策の中で唱えている経済成長やエネルギー安全保障を促進するとともに、エネルギーの近代化や新技術開発における二国間協力を強化するものである」とした上で、「両国間の貿易や投資の拡大に加え、地域のエネルギー安全保障の強化、クリーン・エネルギー技術の利用促進につながる」との見解を示した。カナダとの間では、DOE、カナダ天然資源省(NRCan)、カナダ原子力公社(AECL)が資金を分担し、持続可能な先進的燃料サイクルや超臨界圧水冷却炉、原子力による水素製造、安全・設計コード、革新炉システムに関する共同研究を進める予定である。(6月)

NRC、キウォ−ニ原子力発電所の出力増強を承認

 米原子力規制委員会(NRC)は7月9日、ウィスコンシン・パブリック・サービス社(WPSC)とアライアント・エナジー・コーポレーション社(AEC)が所有するキウォ−ニ原子力発電所(PWR)の出力を1.4%増強することを承認した。NRCは、冷却水の正確な流量計測により、原子炉の出力を安全に上昇させることができると判断。これによって、同機の出力は、55万kWから55万7000kWとなる。

 NRCは、同発電所の運転者であるニュークリア・マネージメント社(NMC)による出力増強申請を連邦官報に公示したが、とくに一般からの意見や聴聞会の開催を求める要望はなかった。

 NRC事務局は同機について、原子炉蒸気発生設備(NSSS)や計装制御系、電気系統、事故評価、放射線影響、運転・技術仕様の変更などに焦点をあてて評価を行い、出力を増強した場合でも安全性に支障をきたさないと判断した。(7月9日)

米国とロシア、 プルトニウム生産炉の閉鎖作業に向け、旧秘密都市開放で合意

 米エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官とロシア原子力省(MINATOM)のルミャンツェフ大臣は7月17日、ロシアの旧秘密都市を開放することで合意した。今回の協定は、米ロ間の「兵器級プルトニウム生産中止計画(EWGPP)」に基づき、旧秘密都市にあるプルトニウム生産炉を閉鎖し、米国が代替の石炭火力発電所を建設する作業の開始に向けたもの。

 元プルトニウム生産炉3基は、セベルスクにあるトムスク4、5号機(LWGR、10万kW×2基)とジェレズノゴルスクのクラスノヤルスク3号機(LWGR、10万kW)で、現在も工場と都市に熱と電力を供給している。

 エイブラハム長官とルミャンツェフ大臣は今年3月、3基の閉鎖の見返りに、米国の支援により石炭火力発電所を建設することで合意。さらに米国は5月、石炭火力発電所の建設作業請負業者として米国の2社を選定したと発表した。契約総額は4億6600万ドル。今回の協定によって、米国の請負業者の閉鎖都市への立入りが保証され、作業がスケジュール通りに進められることになると見られている。(7月17日)

[カナダ]
CAMECO社、マッカーサーリバー鉱山の操業再開

 CAMECO社はこのほど、今年4月の洪水による影響から操業を停止していたマッカーサー・リバー鉱山の操業を再開した。

 マッカーサー・リバー鉱山は、1999年に操業を開始した世界最大のウラン鉱山。採掘された鉱石は、近くのキーレイク鉱山の製錬施設で処理されている。2つの鉱山を合わせた2003年のウラン産出量は、国から認可されている年間産出量1870万ポンドのうち、約1200〜1300万ポンド(このうち、CAMECO社のシェアは約900万ポンド)の産出が見込まれている。

 同社は、3ヵ月間の操業停止により、2003年の純損失総額が約400万〜500万ドルにのぼると予想。なお、同社によれば、操業停止期間中の販売契約は、手持ちの在庫や他の供給源で代替したという。

 世界最大のウランの生産者であるCAMECO社は、カナダを中心に米国やオーストラリアにウラン鉱山の権益を保有している。マッカーサー・リバー鉱山でも約70%を保有(残りは仏COGEMA社が保有)している。また、キーレイク鉱山の権益を約83%保有するほか、ラビットレイク鉱山を保有しており、その中でも、マッカーサー・リバー鉱山は、CAMECO社の所有する鉱山の中でも最大規模の鉱山。同鉱山では、CAMECO社の2002年ウラン全生産量の約80%を産出、世界の産出量の約17%を占めた。(7月)

[スウェーデン]
地元は使用済み燃料処分場の受け入れに好意的との調査結果

 使用済み燃料の処分場立地に向けて、地質調査を受け入れているオスカーシャムとエスタマルで800人を対象に対面形式によりこのほど実施された調査では、両地区ともに65%以上が「処分場の受け入れに賛成」であり、オスカーシャムでは67%、エスタマルでは56%が「処分場建設は地域にとって好影響を与える」と回答した。しかし処分方法などについては、両地区ともに過半数以上が「あまり知識がない」と答えたが、60%以上が情報の開示に不満を持っていないことも明らかになった。

 また、最新の世論調査によると、85%が自国での使用済み燃料の処分を支持していることが明らかになった。この調査は、5月下旬から6月上旬にかけて全国の1006人を対象に実施された。スウェーデン核燃料廃棄物管理会社(SKB)や環境省の管轄下に置かれている放射線防護機関(SSI)とスウェーデン原子力発電検査局(SKI)に対する信頼度とともに、使用済み燃料の最終処分場建設や廃棄物管理システムについてどの程度理解しているかが問われた。

 それによると、3つの関係機関の活動に対する信頼度を1(最も低い)から5(最も高い)の5段階に分けて意見を聞いた結果、平均値が3.6となった。SKBによれば、同社に対する国民の信頼は全般的に高く、最終処分場の地質調査を実施している地域に近い住民ほど高い信頼感を抱いていることが浮き彫りになったとしている。

 しかし最終処分場建設候補地での地質調査の実施については、75%の人が「どこで実施されているか知らない」と回答。実際に地質調査が行われているオスカーシャムとエスタマルのどちらか、あるいは両地区の名前を正確に答えることができた人は全体の20%しかいなかった。

 使用済み燃料の処分について聞いたところ、85%が自国での処分を支持しているものの、SKBが推進する廃棄物の処分方法に関する知識について、「あまり知識がない、ほとんど知識がない」との回答が75%を占め、「よく知っている、大変良く知っている」の20%を大きく上回った。

 スウェーデンでは、バックエンド事業の実施主体として、電力会社の出資により72年にSKBが設立され、同国で発生する放射性廃棄物の、貯蔵、輸送、処理、処分に責任を持っている。使用済み燃料の最終処分場については、SKBはこれまでに6地点における実行可能性調査を終了。2000年11月に、最終処分場候補地での詳細な地質調査をオスカーシャム、エスタマル、ティエルプの3つの自治体で実施することを決定した。このうち、エスタマルが2001年12月に、オスカーシャムが2002年3月にそれぞれ最終処分場の地質調査受け入れを承認したが、ティエルプは2002年4月、地質調査受け入れを拒否した。SKBは今後5〜6年かけて、ボーリング調査等の詳細な地質調査を行い、2007年までに最終処分場1ヵ所を選定し、2008年の着工、2015年の操業開始を予定している。

 なお、地質調査の受け入れは、最終処分場自体の受け入れを意味していない。SKBは処分場の選定において技術的な実行可能性だけでなく、地元住民から支持が得られることを処分場立地の前提にすると強調している。(7月)

[ロシア]
BN-600が解体核兵器プルトニウム用いたMOX燃料を初装荷

 ロシア原子力省(MINATOM)は7月11日、解体核兵器から発生した余剰プルトニウムを利用したMOX燃料をベロヤルスクのBN-600(FBR、60万kW)に初装荷したことを明らかにした。今回のMOX燃料装荷は、ロシアの商業炉では初めてで、1998年に米ロ間で取り交わされた解体プルトニウムの民需転換に関する協定の一環として行われた。

 核兵器の解体に伴って発生した軍事用プルトニウムの処分については、ロシアと米国が2000年9月には、それぞれ34トンのプルトニウムを処分することで合意している。ロシア側は、解体プルトニウムをMOX燃料に加工して発電に利用する方針を打ち出しており、国際的な資金援助20億ドルによってMOX燃料加工工場をウラルかシベリアに建設する予定としている。しかし、資金調達が思うように進まないことから着工の見通しは立っていない。(7月11日)

[ウクライナ]
EBRD、チェルノブイリ4号機の「石棺」補強計画に融資

 欧州復興開発銀行(EBRD)は7月9日、1986年に事故を起こしたウクライナのチェルノブイリ4号機(RBMK、100万kW)の「石棺」を覆う新しいシェルターの建設に対し約8500万ドルの融資を行うと発表した。同機を覆っている古い「石棺」は、崩壊や放射能漏れの危険性が指摘されている。

 ウクライナとG7は1997年4月、石棺の安定化と石棺内部の燃料含有物質(FCM)の除去を進めることで合意し、石棺実施計画(SIP)が取りまとめられた。SIPの実施には、総額で7億6800万ドルが必要と試算。G7やEUを中心とした各国からの拠出により、EBRDが管理するチェルノブイリ石棺基金(CSF)が設立された。EBRDによる今回の融資額は、国際チェルノブイリセンター(ICC)が4月末に試算した2003年度中のSIPに対する支出金額7700万ドルを大きく上回っている。1998年のSIP`開始以来、支出金額は約1億2,000万ドルに達している。

 EBRDは同日、新シェルターの建設に関する競争入札の実施を発表、2つのコンソーシアムに対して入札の打診を行った。両コンソーシアムの詳細については不明。なお、この競争入札をめぐり、ロシア原子力省関係者は、EBRD側からロシアの入札は不適当であるとして、入札を拒否されたことを明らかにした。

 EBRDは、新シェルターの概念設計が完了し、ウクライナのSIP関係企業への優遇税制措置が整えば、来年にも建設が開始されるとの見通しを示している。新しいシェルターは、2万トンの鉄を用いた最低でも100年の寿命をもった構造物になるとみられている。SIPの完了は2007年を予定している。(7月9日)

[アルメニア]
アルメニア原子力発電所2号機の運転管理をロシアに委託へ

 アルメニアのモブシシヤン・エネルギー相はこのほど、同国唯一の原子力発電所アルメニア2号機(PWR、40万8000kW)の運転管理を5年間ロシアに委託する協定を締結すると発表した。詳細については現在、ロシア統一電力会社(UES)と協議中。同氏は、この協定によって、返済が滞っているロシアからの同発電所向けの核燃料代4000万ドルが完済できるとの見通しを示した。今回の協定は今年2月初旬、ロシア-アルメニアの経済協力委員会によって承認されていた。

 アルメニアがロシアへ同発電所の運転管理を委託する背景には、国内の電力供給を安定させるとともに、ロシアの支援で余剰電力をアゼルバイジャンやトルコなどの隣国へ輸出したいというアルメニア側の思惑がある。

 アルメニア原子力発電所はロシア型PWR(VVER)2基からなり、1号機は1977年10月、2号機は1980年5月にそれぞれ運転を開始した。80年代には国内の全電力の3〜4割を供給していたが、1988年の大地震を契機に原子力発電所の閉鎖論が高まった結果、両基とも閉鎖に追い込まれた。その後90年代に入り、ソ連の崩壊やアゼルバイジャン紛争などによって深刻なエネルギー危機に陥ったため、運転再開の要望が強まり、ロシアなどの支援・協力を得て、2号機だけが1995年11月に運転を再開した。1号機の運転再開の計画はないが、2010年までに新規原子力発電所を建設する計画が浮上している。

 2002年のアルメニアの原子力発電電力量は22億9000万kWhとなり、前年の19億kWhから21%増加。総発電電力量に占める原子力の割合は41.8%を占め、前年の34.8%を大幅に上回った。(7月)

[英 国]
政府、BNFLの部分民営化を見送り

 P.ヒューイット貿易産業相は7月3日、英原子燃料会社(BNFL)の部分民営化を断念したことを明らかにした。

 政府は6月、BNFLと英原子力公社(UKAEA)が保有する施設の法的、財務面の責任を負う「原子力廃止措置機関(NDA: Nuclear Decommissioning Authority)」の設立を盛り込んだ法案を発表。NDA設立により、BNFLの資産・債務・資金はすべてNDAに移管されることになるため、同相は、NDAの設立後はBNFLの民営化は「もはや選択肢とすべきではない」と表明した。

 BNFLは、政府が株式の100%を保有する独立採算制の国営企業で、ウラン濃縮施設や燃料加工施設、再処理施設などを持つ燃料サイクル企業。1998年にはガス冷却炉(GCR:マグノックス炉)を所有するマグノックス・エレクトリック社を吸収合併。さらに、1999年には米国のモリソン・クヌーセン社とともに、米ウェスチングハウス社の原子力部門を買収し、ウラン濃縮、燃料加工、発電、再処理、エンジニアリング、輸送、廃棄物管理、除染・デコミッショニングなどの部門を擁する世界最大の総合原子力企業となった。一方でマグノックス・エレクトリック社を吸収したことにより、将来のデコミ費用などの”債務額”は16億ポンド(96/97年度)から101億ポンド(97/98年度)に膨れ上がった。

 貿易産業省は1999年、官民協同出資方式でBNFLの民営化を進める方針を明らかにし、現行法で政府保有株の放出が認められている49%を従業員持株会などに売却する方針を掲げ、検討を進めていた。しかしBNFLが引き起こしたMOX燃料データ改ざん問題などの影響で、民営化は先送りされていた。

 そうした中で、政府は6月24日、NDAの設立に向けた法案「原子力施設・放射性物質法案」(Draft Nuclear Sites and Radioactive Substances Bill)を発表した。NDA(2003年2月にLMA:Liabilities Management Authorityより改称)は、省庁から独立した公的機関として位置付けられ、BNFLとUKAEAが保有する施設の法的、財務面の責任を負う。具体的にはBNFLのセラフィールド、ドリッグ、カーペンハーストの3サイトとマグノックス炉26基、UKAEAのドーンレイ、ウィンズケール、ハウェル、ウィンフリス等のサイトが、NDAに移管される。

 NDAはこれらのサイトを直接管理するわけではなく、定められた計画達成を義務づけた上でサイトの許認可保持者と管理契約を結ぶ形をとる。管理契約は5〜10年単位で見直され、その管理者選定にあたっては競争原理が導入される。例えば将来的には、BNFL以外の会社がセラフィールドのサイト管理者となることも起こりうる。こうして戦略立案と実施を分離することで、NDAはその戦略的役割に焦点を当て、廃炉・除染の計画を推進することができる。

 BNFLは2000年5月、全てのマグノックス炉の閉鎖計画を発表し、経済性の低いマグノックス炉の閉鎖前倒しを決定。2003年7月14日には規制当局である原子力施設検査局(NII)がヒンクリーポイントA原子力発電所(出力32万1000kW×2基)のデコミッショニングを認可した。しかしデコミ費用の詳細については明らかにされていない。これは、NDAの設立により、作業契約が競争入札によって決定される可能性が高いため。

 なお、NDAに移管されるセラフィールド・サイトの中には、“原子力債務”ではないTHORP(酸化物燃料再処理工場)とSMP(MOX加工施設)のような商業的資産も含まれている。NDAは、こうした商業資産からの収益も債務の処理に回すことも考えている。

 英国における原子力債務は、1940年代から1960年代にかけて政府の研究計画を支援するために開発された施設、および関連して発生した廃棄物、使用済み燃料、そして1960年代から70年代に設計・建設されたマグノックス炉(現在はBNFL所有)などが85%を占めている。これら原子力債務は一貫して政府の責任とされており、NDAの設立は、政府が原子力債務問題の解決に本格的に取り組み始めたことの表れといえる。ちなみに民間の原子力事業者であるブリティッシュ・エナジー社は、廃炉費用を化石燃料賦課金と自社内部の基金で負担しており、NDAの管理対象から除外されている。

 貿易産業省が2002年7月に公表した白書によると、2002年3月段階で廃炉・除染にともなう債務(施設の廃止措置・解体費用、処理・貯蔵・最終処分費用、環境復旧費用など)は、BNFL分が405億ポンド、UKAEA分が74億ポンドと試算されている。もちろん現在発生している原子力債務はこれらの半分にも満たないもので、この債務総額はあくまでも今後に発生すると予測されている数値に過ぎない。したがって条件を変えれば今後大きく変化する可能性もあると考えられている。

 政府とBNFLは、合同の検討チームを結成し、部分民営化に代わるBNFLの戦略を再検討することを決定した。同チームは、8月からBNFLの新最高経営責任者に就任するM.パーカー氏が委員長を務め、この秋にも報告書をとりまとめることにしている。(7月3日)

[欧 州]
欧州委員会が原子力プロジェクトへの早期関与を提案

欧州委員会は7月23日、計画段階の早い時期から欧州連合(EU)加盟国での原子力プロジェクトに委員会が関与できるとした、新しい手続きを提案した。原子力プロジェクトの透明性を高め、安全性とセキュリティをさらに強化するのがねらい。

今回の提案では、デコミッショニング計画と発生する使用済み燃料と放射性廃棄物の管理計画について、プロジェクトの計画段階から事業者が欧州委員会と協議することを求めている。委員会は、安全やセキュリティに関するあらゆる面に関して、計画の早い段階から事業者に対して意見を述べることもできる。新規プロジェクトだけでなく、運転中の原子力施設にも適用される。

事業者が、公的な資金援助に関する情報を委員会に提供することも要求している。原子力プロジェクトの資金調達についての詳細なデータが得られれば、委員会としても投資の展開にあたって調整ができるとの判断。欧州委員会は、欧州原子力共同体(EURATOM)条約にしたがい、240件の原子力プロジェクトに対する投資を審査してきたが、中東欧諸国の加盟にともなう拡大EUによって、EUや各国政府による資金援助がさらに意味をもってくるとみている。

委員会は、事業者に対してプロジェクトを実施しないよう勧告したり、プロジェクトを一部変更するよう勧告する場合もあるとしており、EU加盟国の原子力プロジェクトに対する関与を深めたい意向である。今回の提案については、10月に予定されている欧州議会の産業・環境委員会で審議される見通しである。(7月23日)

[南アフリカ]
PBMRの環境影響評価を承認

 南アフリカの環境・観光省(DEAT)は6月27日、南アフリカ電力公社(ESKOM)が提出していたペブルベッド・モジュール型高温ガス炉(PBMR)原型炉の建設、燃料製造とその輸送に関する環境影響評価報告を妥当として承認した。DEATはまた、ESKOMが原型炉建設に向けた申請手続きを進めることと、今後3年間をかけて詳細調査を実施することも承認した。

 PBMR開発計画を進めるESKOM社は2000年6月、環境保護法に従い、ケープ州のクーバーク原子力発電所サイトで、原型炉(11万kW級)建設と、北西州にある南アフリカ原子力会社(NECSA)のペリンダバ研究所でのPBMR用燃料の製造ならびにクバークへの輸送許可をDEATに申請。また環境影響評価報告書の最終版を2002年10月に提出した。一方、PBMR開発の実施主体であるPBMR社は、国家原子力規制局(NNR)に、原型炉と燃料製造施設の建設許可発給を申請中である。

 PBMR社は2002年7月30日、PBMRの詳細フィージビリティ・スタディ報告(DFR)の概要を公表。DFRは、PBMR技術の商業化は可能で、国際市場で南アフリカに経済的、社会的、政治的な恩恵をもたらすだけでなく、地球温暖化対策にも貢献すると結論付けた。また、国内的に水力資源や化石燃料資源の制約がある中で、クバーク原子力発電所(PWR、96万5,000kW×2基)が高い稼働実績を残している点に言及。既存の水力や火力の発電プラントに対して競争力をもったコストでプラントの建設・運転ができれば、PBMRは特にベースロードとして、新規電源の有力な候補になるとの見方が示された。

 DFRは、2020年までに国内外で200基を超えるPBMRの受注が期待できるとし、PBMR社に出資しているESKOM社から原型炉1基の建設に続いてさらに10基を購入するとの感触を得ていることに加え、米国最大の原子力発電事業者であるエクセロン社が、原型炉で所期の性能の達成が確認された場合、最大40基を購入すると表明していることを指摘した。

 また、PBMRの商業プランとして1サイトに5基(モジュール)を設置(5パックプラント)する場合、プラント設計・機器製造・建設に関して習熟効果が活かされて建設コストの低減が達成されることを前提に、発電単価が1kWh当たり2.6〜3.4米セントになると分析している。市場分析の結果として、PBMRの世界市場における潜在需要を、今後25年間で最大5パックプラントで235サイト、基数にして1175基程度になると試算している。これは同期間の新規電力供給量の3.3%に相当する。

 PBMR社は、多様な市場ニーズに応えるために、PBMRのオプションに幅を持たせる方針で、今後はアフリカ諸国のような発展途上国向けのより小型な炉や、内陸部の乾燥地域向けに乾式冷却方式の炉なども開発するとしている。

 PBMR社は2002年11月下旬にPBMRのガスタービン試験装置の運転を開始している。試験装置は世界最初の閉サイクル多軸形ガスタービンシステムで、設計と製作は、PBMR計画チームによる技術指導のもと、ヨハネスブルグ近郊のポチェフストローム大学工学部で行われた。

 環境影響評価や事業化調査、商業戦略作成などの机上作業や、ガスタービンによる実証試験などフェーズTは2002年末でほぼ完了。ESKOM社は2003年5月中旬、同計画に参加している国内外の出資者が、フェーズUの開始に合意したことを受け、政府によるライセンスの発給などの法的手続きが完了することを前提に、原型炉の開発・建設・運転を行うフェーズUを開始する準備が整ったと発表している。

 PBMRは電気出力11万kW(原型炉)から16万5000kW(商業炉)の小型高温ガス炉で、輸出も視野に入れた次世代発電炉として、ESKOM社によって1993年から実用化の検討が進められてきた。1998年には正式に開発計画がスタートし、現在はPBMR計画の事業主体としてESKOM社が中心となって設立したPBMR社が具体的な作業を進めている。フェーズTへの出資企業と比率は、ESKOMエンタープライゼス社(ESKOM社の非公共事業部門)30%、南アフリカ国営開発金融機関のインダストリアル・ディベロップメント社(IDC)25%、英原子燃料会社(BNFL)22.5%、米エクセロン社12.5%で、残りの10%は南アフリカの黒人権利推進プログラムにより義務付けられている黒人所有企業への割り当て分としてESKOM社が保留している。

 なおエクセロン社は2002年4月、PBMR開発計画のフェーズUには参加しないことを明らかにしたが、引き続きPBMRの導入には積極的に取り組むとしている。(6月27日)

[韓 国]
使用済み燃料の中間貯蔵と中・低レベル廃棄物処分場の建設候補地を選定

 韓国産業資源部(MOCIE)は7月24日、「原子力発電廃棄物管理施設敷地選定委員会」を開催し、中・低レベル放射性廃棄物処分場と使用済み燃料の集中中間貯蔵施設のサイトを、全羅北道扶安(プアン)郡・蝟島(ウィド)に最終決定したと発表した。

 MOCIEは、@地質調査や地球物理探査の結果、大規模な岩体の発達が良好で主な岩種である凝灰岩が非常に緻密であること、A科学技術部(MOST)が定める中・低レベル放射性廃棄物および使用済み燃料中間貯蔵施設立地基準としている活断層が存在しないことが確認されたことなどにより、蝟島が放射性廃棄物管理施設のサイトとして優れていると評価した。

 MOCIEと韓国水力・原子力発電会社(KHNP)は今年2月、廃棄物処分サイトの最終候補地として4ヵ所を選定し、官民で構成される管理施設敷地選定委員会が候補地選定作業を行っていた。同委員会は、政府関係者3名、学界および研究機関8名、マスコミ、社会団体、KHNPから各1名で構成。サイト環境、投資効率、港湾施設、インフラなど合計17項目に分けて検討が実施され、廃棄物管理事業推進上の条件に照らして、蝟島が最適と評価された。

 MOCIEは8月から、蝟島で詳細な地質調査と環境影響評価を開始し、2004年7月に蝟島を原子力発電開発事業予定区域に指定したあと、2006年9月までに土地を買収する。その後、各種許認可の取得と詳細設計計画の策定を終えて、同10月からは本格的な建設に着手する予定。なお、政府は今回のサイト決定に際し、立地地域に対する補償金以外に何らかの地域振興策を検討したいとしている。政府から扶安郡に支払われる補償金額は、2兆ウォン(約2,200億円)。韓国では今後、中・低レベル廃棄物処分場を2008年までに、また使用済み燃料の管理貯蔵施設を2016年までに操業させる予定である。(7月24日)

【終わり】


Copyright (C) JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. (JAIF) All rights Reserved.