[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2003年7月中旬〜8月中旬)

国務院、三門(浙江省)、嶺東(広東省)への新規建設を承認

2010年末の運開めざし、2005年までに合計4基を建設

 中国核工業集団公司(CNNC)の康日新・総経理は8月11日、国務院が浙江省・三門地点と広東省・嶺東地点への原子力発電所の新規建設計画(両地点に100万kWユニットを2基、合計100万kW×4基)を承認したことを明らかにした。

 嶺東地点は、現在運転中の広東・大亜湾1、2号機(PWR、98万4000kW×2基)と広東・嶺澳1、2号機(PWR、99万kW×2基)の近郊の大亜湾嶺澳地区。また、三門地点は浙江省台州市で、フィージビリティ・スタディが完了しているほか、2002年には敷地造成工事もスタートしている。

 いずれも香港、上海などの経済発展が著しい南シナ海沿岸都市への電力供給が目的で、炉型など詳細な計画は明らかにされていないが、両地点とも2005年までに着工、2010年末までに運転開始される見通しである。

 中国では、前回の第9次五ヵ年計画(1996年〜2000年)で、秦山第U-1、2号機、秦山第V-1、2号機、広東・嶺澳1、2号機および田湾1、2号機の4プロジェクト(8基、合計出力678万4000kW)が盛り込まれ、2002年から2003年にかけて、広東・嶺澳1、2号機、秦山第U-1号機、秦山第V-1、2号機など5基の運開が相次いでいる。

 ただ、2001年3月に決定された現行の第10次五ヵ年計画(2001年〜2005年)では、三峡ダムをはじめとする大規模水力や火力発電所の増設(および小規模火力の閉鎖)などに重点が置かれ、原子力発電所の新規建設については具体名が盛り込まれず、原子力発電開発「適度に発展させる」との記述にとどまっている。

 今回の国務院による嶺東、三門の両プロジェクトの承認は、1997年の田湾1、2号機(VVER-1000×2基)以来で、五ヵ年計画に盛り込まれなかったプロジェクトが承認された背景には、今夏の熱波の影響もあり、16の省および自治区で停電が発生するなど、電力供給がかなり逼迫した状況にあることが理由の1つとみられている。

 このほか8月20日付の国際原子力情報ネットワーク(ENS/NucNet)が中国核学会(CNS)からの情報として伝えるところによれば、国務院は年内にも陽江1〜6号機(炉型未定、100万kW級×6基)の建設計画(総額:80億ドル)も承認する見通しという。

 陽江原子力発電所は、香港の西約500kmの南シナ海沿岸の陽江市に建設され、今後15年〜20年の間に順次、運開する模様で、すでに事業主体である中国広東原発集団公司(CGNP)は陽江市当局との間で建設用地47万2000m2の確保を合意している。

 中国の総発電設備容量は3億1800万kW(2001年1月1日現在)。総発電電力量は1兆4200億kWh(同)で、内訳をみると、火力が1兆1390億 kWh(80.2%)、水力が2630億kWh(18.5%)、原子力発電が170億 kWh(1.2%)となっている(2002年は234億5000万kWh、シェア1.4%)。

 中国では、広東省で今年1月〜7月の電力消費量が対前年比18%増となるなど、沿岸地域を中心として電力需要が急増しており、中国全体の電力需要も経済成長に伴い2025年まで年率4.3%で増加していくと予測されている。

 この電力需要の増加への対応は、環境上の理由から、天然ガス火力発電所が主力になるとみられているが、石炭や天然ガス資源に乏しい南東部沿岸地域については、原子力発電所建設の優先地域とされており、広東省や浙江省のほか、福建省、江蘇省、山東省などの沿岸地域および湖南省、湖北省、重慶市などの内陸部を中心に、2020年までに原子力発電設備容量を3200万kW〜4000万kWに拡大する方針である。 (8月11日)


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