[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年7月中旬〜2003年8月中旬)

[米 国]
核軍縮に伴う余剰高濃縮ウランの希釈・核燃料加工が本格化

 米エネルギー省(DOE)は7月21日、核軍縮に伴い余剰となった高濃縮ウラン(HEU)を低濃縮ウラン(LEU)に希釈し、燃料加工するため、サバンナリバー・サイト(サウスカロライナ州)からニュークリア・フュエル・サービシーズ社(NFS)のエルウィン・サイト(テネシー州)に初出荷したと発表した。

 NFS社で加工されたLEUは、1997年にDOEとテネシー峡谷開発公社(TVA)の間で取り交わされた合意覚書に基づき、同社のブランズフェリー原子力発電所(BWR、1号機:109万8000kW、2、3号機:115万5000kW×2基)に装荷される予定である。

 米国のクリントン大統領(当時)は1995年3月、「冷戦終結による核軍縮に伴い、米国の国防計画上、合計で約200トン(核弾頭4300基に相当。うち174トンが高濃縮ウラン:HEU)の核分裂性物質が余剰」と宣言。1996年に発表されたDOEの余剰核物質削減計画に基づき、2015年にかけて余剰高濃縮ウランの85%に相当する約155トンが低濃縮ウランに希釈・燃料加工されることになっている。このうち55トンが核燃料として利用するためUSEC社に引渡され、2003年6月時点で37トンが低濃縮ウランに希釈・転換されている。

 今回、NFS社に出荷されたのは、この約155トンの余剰高濃縮ウランのうち燃料加工のための前処理が必要な高濃縮ウラン(約33トン)の一部で、サバンナリバー・サイトで精製(不純物の除去)等の前処理と天然ウランによる希釈作業が行われていた(サバンナリバー・サイトにある残りの高濃縮ウランはNFS社が希釈・転換・燃料加工を行う)。

 一方、NFS社は1998年から少量の低濃縮ウランの試験用燃料集合体をTVAのセコヤー2号機(PWR、118万1000kW)に18ヶ月間装荷しており、良好な結果を得ており、2003年内の操業開始をめざして、サバンナリバー・サイトからの低濃縮ウラン(硝酸ウラン溶液)を酸化物燃料に転換・加工する施設をエルウィン・サイトに建設中である。

 なお、NFS社は、米国の核軍縮に伴い発生した米国の余剰プルトニウムのMOX燃料加工を行うプロジェクト(デュークパワー社、COGEMA、ストーン&ウェブスター社)のためのコンソーシアム(DCSチーム)にも参加しており、サバンナリバー・サイトに建設が計画されているMOX燃料加工工場の設計、保障措置・セキュリティ・システムの支援・運転を担当している。(7月21日)

上院でエネルギー法案通過、下院版と一本化へ

米上院で7月31日、84対14で包括エネルギー法案が通過したが、昨年の第107議会で両院協議会まで持ち込まれながら成立しなかった旧法案を持ち出して急遽通過させるという異例の事態となった。上院版のエネルギー法案は、すでに下院を通過しているエネルギー法案とすり合わせが行われ最終的に一本化される。今回、上院を通過したエネルギー法案は今秋に予定されている両院協議会での審議のタタキ台として使われるに過ぎず、今年の第108議会に提出されたエネルギー法案に盛り込まれた条項が復活する可能性もある。

上院のエネルギー・天然資源委員会の委員長を務めるP.ドメニチ議員(共和党、ニューメキシコ州選出)が発議者となった今年の上院版包括エネルギー法案(S.14)には、原子力発電所の新設に対して政府が財政面で支援するという「2003年原子力融資法」(Nuclear Energy Finance Act of 2003)が盛り込まれた。同法は、原子力発電所の建設プロジェクトに対して、6基・840万kWまで政府が最高で50%の融資保証を行い、原子力発電所の新設を国が後押しするというもの。

政府による新規原子力発電所への融資保証については、成熟した原子力産業に政府が肩入れするのはおかしいとの理由から民主党を中心に批判が出ていた。6月10日の上院本会議では、同条項の削除を求めた修正動議が出されたものの、共和党の40名と民主党の10名が反対票を投じ、50対48の僅差でかろうじて削除が免れていた。これ以外にも、法案の内容をめぐって上院内で対立が激化し、当初の案で妥協をはかることができなかったため、合意が成立していた旧法案が持ち出されたもの。

両院協議会の座長を務めることになっているドメニチ議員は、一本化される法案の中に、当初のエネルギー法案に盛り込まれていた多くの条項を盛り込む意向を示しているが、原子力産業界が注目している融資保証条項を復活させるかどうかについては明らかにしていない。

米原子力エネルギー協会(NEI)のJ.コルビン理事長は、ドメニチ議員のリーダーシップに期待するとした上で、原子力発電所をはじめとした発電所の新規プロジェクトには、加速減価償却や投資税控除といった奨励策が必要との考えを改めて表明している。

今年の上院の包括エネルギー法案では、原子力発電所の建設に対する政府融資のほか、@水素を製造するための原子炉を11億ドルかけてアイダホ国立工学環境研究所に建設するA使用済み燃料を化学的に処理するための方法を研究するとともに、使用済み燃料の量と長期に及ぶ放射毒性を低減するため8億6500万ドルを拠出するBその他の原子力研究開発予算を増額するCプライス・アンダーソン原子力損害賠償法を永久に認可する――などの原子力関連条項が盛り込まれていた。(7月31日)

サウステキサス・プロジェクト原子力発電所1号機が運転再開

 圧力容器底部からの冷却水漏洩のため運転を停止していたテキサス州のサウステキサス・プロジェクト(STP)原子力発電所1号機(PWR、131.2万kW)が、このほど運転を再開した。

 同機は燃料交換停止中の4月、原子炉圧力容器底部に設置された中性子計測装置の挿入口58ヵ所のうち2ヵ所から、冷却水に含まれるホウ素の残留物を検出し、その後の調査で計装ノズルにクラックが生じていることが判明した。

 米原子力規制委員会(NRC)は特別検査チームによる検査結果とSTP社による同機の安全運転を確保するためのあらゆる是正措置が実施されたと判断、漏洩の最終的な原因は未だ究明できていないものの、8月1日に運転再開を承認していた。(8月)

[カナダ] 世論調査で、原子力発電に対する支持が急増

 最新の世論調査によると、カナダ国民の5割が原子力発電を支持していることが明らかになった。原子力発電支持の割合は、前回2002年11月に実施した同様の調査の42%から8ポイント増加し、約半年間で原子力に対する支持率が急増していることが分かった。カナダの調査会社であるエンバイロニクス社が6月12日から7月6日にかけて、カナダ原子力協会(CNA)の委託により、10州の18歳以上の2018人を対象に電話による聞き取り調査を実施したもの。

 それによると、原子力発電について、「反対」「どちらかというと反対」を合わせ40%が「原子力発電に反対」と回答。このうち「反対」と回答した人は23%を占め、「支持」と回答した17%を上回ったものの、前回の調査に比べ10ポイント減った。一方、「支持」(17%)は、以前の2回の調査と比べて大きく上昇。「どちらかというと支持」(33%)と合わせると50%となった 。

 他の電源について聞いたところ、全体の96%が太陽光発電や風力発電の利用を支持すると回答。次いで水力(92%)、天然ガス(80%)という結果となり、いずれも原子力よりも圧倒的に高い支持を得た。石炭火力の利用については、「反対」(40%)と「どちらかというと反対」(27%)を合わせ、全体の67%が「反対」と回答した。これに対し、「支持」「どちらかというと支持」と回答した人の割合は29%となり、原子力よりも低い支持率にとどまった。

 報告書は、CNAが最近行った広報活動について、95%が見な(気付かな)かったことを明らかにしている。このうち、原子力を「支持」すると答えた割合が16%だったのに対し、CNAによる原子力広報に接した36%が「支持」と回答。一応、広報活動の効果は見られたものの、原子力広報の浸透が当面の課題である現状が浮き彫りになった。

 CNAは、原子力発電が他の電源に比べ環境負荷が少ないことや原子力の医学・医療等への利用、コスト面での優位性等を理解していると分析している。一方で、原子力発電所の安全性や放射線被ばくの影響、放射性廃棄物処理処分等について依然として強い懸念を持っていることが改めて明らかになった。

 CNAは、原子力産業界が引き続き、一般公衆に対して原子力発電の利点、特に医療分野への利用や原子力発電の環境面での貢献をアピールしていくことが重要との考えを示している。

 現在、カナダでは22基の原子力発電所があり、全てがカナダ型重水炉(CANDU炉)である。このうち現在、14基が稼働中。2002年の原子力発電電力量は761億kWhで、前年の775億kWhより1.8%減少した。総発電電力量に占める原子力発電の割合は14%で、前年(13%)より僅かに上昇した。

[英 国] 欧州委員会、英国政府によるブリティッシュ・エナジー社の救済に異議

 欧州連合(EU)の行政機関である欧州委員会(EC)は7月23日、英政府によるブリティッシュ・エナジー社(BE)救済策について正式に調査を開始。また、同28日には英政府に対し書簡を送付し、BE社再建策の一部に欧州協定に違反する可能性があるとの事前評価を発表した。

 ECは、M.モンティ競争政策担当委員名で英国のJ.ストロー外相に宛てた42ページに及ぶ書簡の中で、「ECは正式な調査が終了した段階で、問題ありと判断された救済策については認めない」と警告。英政府に、8月中に@ECの事前評価に対して釈明すること、ABE社救済策に関するあらゆる情報をECに開示すること――等を要求した。

 BE社の再建計画は以下の7項目で構成されている:

  1. 原子力債務への資金援助:英原子燃料会社(BNFL)との使用済み燃料管理契約や、将来的な廃炉措置に係る資金援助
  2. BNFLとの燃料サイクル契約:BNFLは、BE社との燃料供給および使用済み燃料の処理に関する既存の契約に代えて、市場価格に応じて燃料製造や処理サービス価格を調整する新しい支払い契約を締結する
  3. 支払いの一時停止:2003年2月14日より最短で2004年9月30日の期間、BNFLなど債権者はBE社の支払いを猶予する
  4. 主要債権者の合意:上記C以外の債務についても支払いの減額・延期などでBNFL以外の主要債権者と合意する
  5. 電力取引に関する新戦略の導入:中期的な固定価格による電力販売により価格変動リスクを回避
  6. 再建に向けた資産処分:BE社は北米市場から撤退する
  7. 地方税の支払い猶予

 こうした再建策のうち、原子力安全と供給安定性に関わる問題はユーラトム協定に従って評価されるが、EU域内の競争に影響を与える問題は欧州協定に従って評価される。つまり自由化された電力市場に政府が干渉する場合(「政府による救済策」)には、ECによる事前の承認が必要とされる。今回ECは、上記C、D、Eについては、政府による救済策には当たらないとして、評価の対象としていない。

 英政府が「政府による救済策」としてECに通告した上述の@に関し、ECは「本来BE社が処理すべきコストを政府が肩代わりすることは、BE社を競争他社より優位に置くことになる」と判断した。

 さらにECは、英政府が「政府による救済策ではない」とした上記A、B、Fを問題視。国営企業でありBE社の大口債権者でもあるBNFLが、BE社に有利な新契約を締結すること、およびBE社の支払いの一時停止に合意したことは、企業間の合意とは言えず、英政府によるBE社救済策に他ならないとの考えを示した。このため、ECの承認を得ずに両社間で交わされる新契約は協定違反と判断された。なお、BNFL以外の主要債権者は民間企業であるためBNFLとは扱いが異なっている。また、地方自治体がBE社に無利子の納税猶予を与えたことも政府による救済策の疑いがあるとの考えを示している。

 今後ECは英政府の返答を待ち、BE社再建策に最終的な結論を下す予定である。

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 BE社の経営危機は同社が2002年8月13日、2002/2003会計年度(2002年4月〜2003年3月)の原子力発電見通しを大幅に下方修正したあたりから浮上してきた。これは同12日にトーネス1号機(AGR、出力68万2000kW)が、冷却材ポンプの不具合で運転を停止したことが原因。2基で構成されるトーネス原子力発電所では、2号機(AGR、出力68万2000kW)も2002年5月に同じトラブルで運転を停止したばかり。ダンジネスB1号機(AGR、出力57万5000kW)も2002年8月から保守作業のため運転を停止している。このためBE社は、2002/2003会計年度の原子力発電見通しを、当初予定の675億kWhから630億kWhに大幅に下方修正することを余儀なくされ、大幅な減益となることが確実となった。

 こうしたことからBE社は2002年9月5日、危機的な財務状況にあることを認め政府に緊急の財政支援を要請し、政府も支援を決定した。同日にBE株の取引を一時停止したロンドン証券取引所は、政府の支援発表を受け同9日朝よりBE株取引を再開したものの、株価は取引停止前の80.75ペンスから28ペンスに急落。スタンダード&プアーズ(S&P)やムーディーズといった格付機関はBE株をそれぞれBB、Ba3の「ジャンク債」に格下げした。なおBE株は、同社が民営化された96年には203ペンスを記録、99年には750ペンスの最高値をつけていた。

 自由化当初の強制プール市場では、ベースロードの原子力は必ず引き取られるように価格を定めずにプールに入札、全体の需給バランスで決定される価格(ピーク用ガス火力に引っ張られて高値になる)で決済されていた。その後、プール制は売り惜しみなどが問題となり、2001年3月に新電力取引制度(NETA)に移行した。NETAは相対取引と1日前市場、リアルタイム市場のスポット取引を組み合わせたもので、原子力はスポット取引には不適なため、BE社はほとんどを相対契約に切り替えて販売している。しかし供給過剰によるスポット取引価格の低下に引きずられ相対契約価格も下落し、BE社は発電コストと販売価格の逆鞘を抱えることになった。原子力発電所は一定した稼働率で運転しなければならないため、卸電力価格の低迷による影響は、他の発電事業者に比べてBE社の方がはるかに大きい。傘下に小売企業を持たないため、卸価格の損失を補う有利な小売契約を結べないこともマイナス要因になっている。

 このほかにもBE社の経営を圧迫している要因がある。

  • 再処理契約:BE社はBNFLとの再処理契約によって、年間3億ポンドもの支払いを余儀なくされている。卸価格が低迷している現状では、使用済み燃料を再処理するよりも直接処分してしまう方がはるかに低コストだが、BE社に選択権はない。使用済み燃料管理および再処理/直接処分の決定権はBNFLにある。
  • 財産税:英国では原子力発電が他電源に較べ高率の財産税を課されている。設備容量1,000kWあたりの課税額は、ガス・石炭火力9,500ポンド、風力5,000ポンドに対し原子力は14,000ポンド。これによりBE社は年間2,000万ポンド以上もの余計な支出を強いられている。BE社は2002年8月、現行の税率は原子力以外の発電事業者に対して政府が助成していることと変わりないと批判し、ECの競争当局に、英国における税率の是正を申し入れていた。
  • 気候変動税:原子力はCO2を排出しないにも関わらず、発電電力量1kWhあたり0.43ペンスの気候変動税が課されている。BE社は、風力と太陽光に限られた気候変動税の控除対象に原子力が加えられれば、年間2億7000万ポンドの支出が回避されると試算している。

 BE社は2002年11月28日、A.モンターグ新会長が主導する再建計画を発表。政府は2003年1月10日、再建計画を支援するため現行の電気事業法の改正案を発表、同改正案は5月8日に成立した。改正案は、2002年11月にBE社が発表した再建計画の支援を具体化したもので、政府は必要に応じてBE社に公的資金を導入することができる。また最悪のシナリオとしてBE社再建計画が失敗した場合も想定しており、その場合、BE社またはその資産を政府所有とすることを盛り込んでいる。現行の「1989年電気事業法」は、BE社の株式を政府が保有することを認めていないが、法改正によって政府所有が認められることになった。また、原子力債務に対する財政援助の上限も撤廃するとともに、財政援助に対する課税を優遇することも可能としている。

 しかしこれまでたびたび問題とされ、BE社経営を悪化させた一因でもある気候変動税の原子力発電への課税問題については、2003年2月24日に政府が発表したエネルギー政策ではまったく考慮されていない。気候変動税の問題に関し野党保守党は2002年10月、原子力発電を気候変動税の対象から除外すべきと勧告。またOECD/IEA(国際エネルギー機関)も同10月、原子力に気候変動税を課す英国政府の姿勢を強く批判していた。

 今回のECによる英政府のBE社救済策に対する手厳しい事前評価も、気候変動税などで原子力発電コストを押し上げ、BE社の競争力を脆弱にしてきた本質的な問題を棚上げし、安易な財政支援に走る英政府に対する警鐘ととらえる向きもある。野党保守党は「政府はBE社に対し財政支援をする一方で、BE社に気候変動税を課税している」と非難。BE社の危機を招いた政府の責任を指摘すると同時に、政府のBE社救済策では気候変動税をBE社に課税していることについては何も検討していないと批判している。(7月23日)

[スイス] ゲスゲン原子力発電所の湿式貯蔵施設を拡張へ

 スイス連邦エネルギー局(BFE)はこのほど、ゲスゲン原子力発電所(PWR、102万kW)の使用済み燃料サイト内貯蔵施設の拡張計画を公表した。安全性レポートや環境影響評価、スイス連邦原子力安全検査局(HSK)等の専門家の意見が添付されており、拡張計画に対する一般からの意見を一定期間受付ける。政府はそうした意見を踏まえ、年末までに最終決定を下すことになっている。

 ゲスゲン原子力発電所を所有するゲスゲン・デニケン電力会社は2002年6月、BFEに対し、湿式貯蔵施設における使用済み燃料棒の貯蔵能力を現在の650体から1650体まで収容できるよう同施設の拡張を申請していた。

 同発電所は、総費用1億2000万スイスフラン(8000万ユーロ相当以上)と見積もられる大規模なアップグレードを計画しており、貯蔵施設拡張計画はその中核を占める。現在、湿式貯蔵施設は原子炉建屋内にあるが、追加施設は建屋の外に建設される予定。建設費用は約6700万スイスフランの見込み。(8月)

[スロバキア] ボフニチェ3、4号機の計装制御システム交換でフラマトムANP社と契約

 国営のスロバキア電力(SE)はこのほど、ボフニチェ原子力発電所3、4号機(PWR、出力各44万kW)の計装制御(I&C)システム交換でフランスのフラマトムANP社と契約した。交換作業は、大規模なバックフィット作業の一環として、2008年中頃までに順次実施する予定で、運転面での安全性やコストパフォーマンスを高めるのが目的。契約総額は約2500万ユーロ。

 フラマトムANP社(シーメンス社:当時)は95年から2000年にかけて、スロバキア電力研究所(VUJE)とともに、ボフニチェ1,2号機(同)のI&Cシステムの導入を手掛けた実績がある。

 なお、EU加盟の条件として、スロバキア政府は99年9月、ボフニチェ1、2号機をそれぞれ2006年、2008年に閉鎖することでEUと合意している。(8月)

[欧 州] 熱波による原子力発電所の運転への影響は軽微

 今夏、欧州を襲った記録的な猛暑による原子力発電所の運転への影響は、ドイツの一部のユニットで出力調整が行われた程度でとくに大きな影響はなかった。

 内陸部に立地する河川から冷却水を取水している汽力発電所では、河川保護規則等で河川への温排水温度に上限値が定められており、熱波により取水温度が上昇すると温排水温度を低下させるため出力調整を余儀なくされる。

 ドイツでは、冷却水を取水しているネッカー川の水温が26℃に上昇したため、8月5日からエネルギー・バーデン-ビュルテンベルク社(EnBW)のネッカー1、2号機(PWR×2基、1号機:84万kW、2号機:136万5000kW)とフィリップスブルク1号機(BWR、92万6000kW)の3基が80%出力で運転しているほか、オブリッヒハイム原子力発電所(PWR、35万7000kW)も8月17日に予定されていた計画停止(定期検査および燃料交換)を8月5日に前倒しした。また、バイエルン州では、与党社会民主党(SPD)と緑の党の議員がイザール河への温排水温度の上昇を理由にE.On社のイザール1、2号機(BWR×2基、1号機:91万2000kW、2号機:147万5000kW)の停止を求めたが、同州の環境省は、「イザール1、2号機からの温排水温度は、欧州連合(EU)およびバイエルン州の規制値以下の24℃」とし、これを拒否した。

 一方、フランスでも8月に入ってからセーヌ河の水温が23℃から27.2℃に上昇。北部では40℃をこえる気温も観測され、「熱波による河川温度の上昇のため、原子力発電所の4分の1が停止」(ファイナンシャル・タイムス紙)などとする報道がみられたが、フランス原子力エネルギー協会(SFEN)は、「(8月)現在、運転を停止している12基の原子力発電所は全て計画停止であり、熱波による河川の水温上昇とは無関係」とこれを否定している。さらに、8月12日には、ビュジェイ、ゴルフェシュ、サンタルバン・サンモーリス、クリュアス、ルブレイエの5つの原子力発電所と他の4つの火力発電所の温排水温度の上限が1℃緩和された。

 スイスでも、8月12日には過去最高の気温41.5℃が記録されたが、国内で運転中の5基の原子力発電所への影響は全くなかった。スイスでは、温排水温度の上限が32〜33℃に規制されているため、河川から冷却水を取排水している原子力発電所では、猛暑の年は定常的に出力調整が行われている。

 このほか、同じく8月10日に38.1℃の最高気温を記録した英国でも、原子力発電所の大半が沿岸部に位置し、海水から冷却水を取水しているため、運転にとくに影響はなかった。また、スウェーデン、オランダでも原子力発電所への運転への影響は報告されていない。(8月)

【終わり】


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