[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2003年8月中旬〜9月中旬)

ブリティッシュ・エナジー、北米資産の売却で事業再編をはかる

米子会社アマージェン社の保有株式を米FPLグループに売却へ

 ブリティッシュ・エナジー社(BE)は9月11日、経営再建の一環として、同社が50%を所有するアマージェン社の株式を米FPLエナジー社に売却する方針を明らかにした。売却額は2億7700万ドル。

 アマージェン社は、米国の原子力発電所の買収・運転を目的に、ブリティッシュ・エナジー社とPECOエナジー社(当時、2000年にUNICOM社と合併して現エクセロン社)が1997年8月に設立した合弁企業で、クリントン原子力発電所(BWR、101万7000kW、1999年12月にイリノイパワー社より買収)、スリーマイルアイランド1号機(PWR、83万7000kW、1999年12月にファーストエナジー社より買収)、オイスタークリーク原子力発電所(BWR、62万7000kW、2000年8月にファーストエナジー社より買収)の3基を運転している1)

 ブリティッシュ・エナジー社の持株の売却は、同社の米持株会社であるブリティッシュ・エナジーUSホールディングス社をFPLエナジー社が吸収する。

 ブリティッシュ・エナジー社の2003年3月決算によれば、アマージェン社の持株の純資産額は7100万ポンドだが、アマージェン社は2003年3月時点で500万ポンドの税引前損失を出しており、米国法人の流動資産等を勘案すると売却対象となる総純資産は6700万ポンドとなる。

ブリティッシュ・エナジー社の経営危機

2002年8月13日2002/03年度の発電量見通しを675億kWhから630億kWhに大幅下方修正。
9月5日英国政府に緊急財政支援を要請。ロンドン株式市場でのBE株の取引停止。
9月9日政府、4億1000万ポンドの緊急融資を発表。ロンドン市場でのBE株取引再開(80.75ペンスから28ペンスに急落)。
9月26日政府、BEに対する追加融資(6億5000万ポンド)を決定。
11月4日BE社の臨時株主総会で借入限度額を16億ポンドに増額。
11月28日A.モンターグ新会長(政府上級財務顧問)、北米事業資産の売却や債権編さの繰延など7項目の再建計画を発表。
2003年2月14日北米事業資産の1つであるブルースパワー社の持株をCAMECO社、トランスカナダ・パイプライン社、BPCジェネレーション・インフラストラクチャー・トラスト社に売却
3月7日アマージェン社の持株の単独売却方針を表明。
5月8日電気事業法改正法が成立。BEへの公的資金の導入、BE株の政府保有が可能に。
9月11日アマージェン社の保有株式をFPLエナジー社に売却する方針を表明。

 ただ、アマージェン社のBE持株の売却については、パートナー企業であるエクセロン社がFPLエナジー社と同じ条件で先買権(権利行使期日:2003年10月11日)を有するため、同社がこの権利を行使(BEの持株を買収)した場合、FPLエナジー社に829万5000ドルを上限とした違約金がBEから支払われる。また、エクセロン社はアマージェン社の定款に基づき、先買権を行使せず、エクセロン社が25%、FPLエナジー社が25%づつ保有するケースもあり得る。

 今回のアマージェン社の持株売却には、英貿易・産業省、米原子力規制委員会(NRC)、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)、米連邦通信委員会(FCC)の許可とハート・スコット・ロディノ反トラスト強化法およびニューハンプシャー州産業施設復旧法をクリアーする必要があり、一連の許認可手続きには約6ヶ月を要する見通しである。

 FPLエナジー社は、24州で事業を展開する米国屈指のエネルギー企業(年間総売上:80億ドル)であるFPLグループの1つで、エンタジー社やドミニオン社と並び米国における原子力発電事業統合の一方の雄。FPLグループのフロリダ・パワー&ライト社は、セントルーシー1、2号機(PWR、1号機:87万2000kW、2号機:88万2000kW)、ターキーポイント3、4号機(PWR、76万kW×2基)を運転しているほか、2002年11月にはノースイースト・ユーティリティーズ社からシーブルック原子力発電所(PWR、119万4000kW)の88.2%を買収している。

 アマージェン社をはじめとするブリティッシュ・エナジー社の北米事業資産の売却は、2003年2月に英貿易・産業省(DTI)との間で合意した同社の再建計画の条件の1つ。もう1つの北米事業資産であるカナダのブルースパワー社の持株(カナダ法人であるBEカナダ社を通じて82.4%を保有)も、2003年2月にCAMECO社ほか2社に全株式が売却されている2)。(9月11日)



1)米国では、1990年代末から本格化した電力市場自由化・規制緩和に伴い、経済性の低い原子力発電所を所有・運転する電力会社の事業再編(送配電事業への特化など)として、原子力発電所の売却が相次いだ。アマージェン社は、それまでワンサイト・シングルユニットで運転されていたため運転・保守面で経済性に劣っていた原子力発電所を複数買収することでスケールメリットを確保するとともに、両社の優れた運転管理能力を活かすことをねらいとした適用外発電事業者(1992年に改正された公益事業持株会社法により複数の州での事業展開が可能)である。

2)ブルースパワー社は、ブリティッシュ・エナジー社とCAMECO社の合弁企業(JV)として2000年に発足したブルース原子力発電所(CANDU、A1〜4号機:90万4000kW×4基、B5〜8号機:84万kW)の運転会社である(原子力発電所はオンタリオ・パワー・ジェネレーション社からのリース)。


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