[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年8月中旬〜2003年9月中旬)

[米 国]
4年連続で2002年も原子力発電が最も低コストの電源に

 米原子力エネルギー協会(NEI)は9月3日、昨年に引き続き、2002年も原子力発電が米国で最も低コストの電源となったと発表した。

 NEIによれば、2002年の各電源の平均発電コスト(燃料コスト+運転・保守コスト)は、石炭火力が1.85セント/kWh、天然ガス火力が4.06セント/kWh、石油火力が4.41セント/kWhだったのに対して、原子力発電は1.71セント/kWhとベースロード電源としては最も安価だった。

 米国では2002年、運転中の103基(合計出力:9823万kW:送電端)の原子力発電所の総発電量が過去最高の7801億kWhとなり、1億7900万トンの二酸化炭素、200万トンの窒素酸化物、400万トンの亜硫酸ガスの排出削減に寄与した。なお、総発電電力量(3兆8390億kWh)に占める各電源のシェアは、原子力発電が20.2%、石炭火力が50.0%、天然ガス火力が17.6%、石油火力が2.5%、水力が6.9%、その他が3.0%である。

 米国の原子力発電コストは、設備利用率の改善や燃料(ウラン)価格の低下により1990年代初頭から低下し続けており、2002年は過去最低だった2001年(1.70セント/kWh)をわずかに上回ったものの、4年連続で最も安価な電源の地位を保った。とくに、近年、著しい改善を示している設備利用率によるところが大きく、2002年における米国全体の原子力発電所の平均設備利用率も91.5%と5年連続で過去最高を記録。NEIは、「1990年代初頭からのパフォーマンス改善は、合計2600万kWの新規電源に相当する」としている。

 また、発電コストに占める各電源の燃料コストも、石炭火力が1.36セント/kWh、天然ガス火力が3.44セント/kWhであるのに対し、原子力発電の燃料コストは0.45セント/kWhとウラン需給の緩和とウラン生産者間の競合により低下している。(9月3日)

米会計検査院、使用済み燃料輸送のセキュリティ強化で報告書

 米会計検査院(GAO)はこのほど、使用済み燃料に対するテロや事故に関する連邦政府の調査・研究結果についてレビューを行うとともに、使用済み燃料輸送のセキュリティ強化に向けた具体的な方策をとりまとめ、連邦議会に報告した。

 同調査は、2001年9月11日の同時多発テロ以来、使用済み燃料に対するテロの懸念が高まっていることから、下院エネルギー・商務委員会のエネルギー・大気汚染防止小委員会がGAOに調査研究を要請したもの。米国では現在、33州の原子力発電所周辺72ヶ所で5万トンあまりの使用済み燃料が中間貯蔵されており、この量は2010年までに6万9000トンに達すると見込まれている。これらを全てヤッカマウンテンに輸送するには、今後24年間、毎年175回の使用済み燃料輸送が必要とみられている。

 GAOは、まず、DOEや米原子力規制委員会(NRC)がこれまで実施した調査研究について、「『使用済み燃料に対するテロや事故で広範囲に及ぶ健康影響が生じる可能性はきわめて低い』とするDOEおよびNRCの結論は妥当」とする一方、「DOEの使用済み燃料輸送計画には改善の余地がある」とし、輸送回数の削減、輸送順序の調整、鉄道輸送の利用――を骨子としたセキュリティ強化策を提言している。

 第一の輸送回数の削減は、使用済み燃料輸送の回数自体を減らすことで、テロや事故の発生確率を低下させ、輸送全体のセキュリティ向上をはかるのがねらい。とくに、セキュリティ上、1回の輸送量を大量化すれば防護しやすく、追跡も容易である。

 第二の輸送順序の調整は、@閉鎖された原子炉の使用済み燃料(事故やテロのターゲットとなり得る使用済み燃料中間貯蔵施設の数自体を減らす)、A原子炉から取出してからの時間が長い使用済み燃料(放射能が減衰した使用済み燃料を優先することで輸送に伴うリスクを低減)、Bプールで貯蔵されている使用済み燃料(貯蔵プールの火災を未然に防止)――の優先順位で使用済み燃料の輸送を行うというもの。現在、合計約4100トンの使用済み燃料(全体の約8%)が14ヶ所の閉鎖施設で貯蔵されており、これらの輸送を優先すればテロのリスクを低減できる。また、貯蔵プールの容量不足に悩まされている米国の原子力発電所の多くはリラッキングで対処しているが、貯蔵プールでの火災発生を想定すればリラッキングによる高密度の使用済み燃料貯蔵の緩和が望ましい。

 第三の鉄道輸送は、使用済み燃料の専用貨車を利用した輸送を行うもので、専用貨車を3〜5両編成とし、1両に1台の輸送コンテナを積載するとすれば、3両で50〜65トン、5両だと約80トン〜110トンの使用済み燃料を一度に輸送することができる(トラック輸送だと1台につき1〜2トン程度)。

 ただ、原子炉から取出してからの時間が長い使用済み燃料を優先して輸送すれば事故やテロの放射線リスクを低下させることができるが、慢性的に貯蔵プールの容量不足に悩まされている電力会社は、プール貯蔵されている放射能レベルの高い使用済み燃料の搬出を優先的に求めるとみられる(「放射性廃棄物政策法(1982年改正法)」で定められたDOEと電力会社との間の契約では、輸送する使用済み燃料の決定権は電力会社側にある)。

 また、どの順序で輸送すれば最もリスクが少なくなるかについても定量的には明らかになっていない。このほか、鉄道輸送を利用すれば使用済み燃料輸送のセキュリティおよび安全性は向上するが、その費用対効果を検討しなくてはならない(現在、ヤッカマウンテンに至る鉄道はない)。

 このため、GAOは、一連のセキュリティ強化策について、「個々のオプションの中には互いに矛盾しているものもあり、電力会社との契約がネックとなる可能性のあるものがある」とし、各オプションの間のトレードオフについての比較・検討および費用対効果の検討の実施を勧告している。(8月)

クーパー原子力発電所の運転管理をエンタジー社に委託

 エンタジー社の子会社であるエンタジー・ニュークリア・ネブラスカ社(ENNEB)は9月16日、ネブラスカ・パブリック・パワー・ディストリクト(NPPD)社との間で、NPPD社が所有・運転するクーパー原子力発電所(BWR、80万1000kW)の運転管理支援サービスを行う契約を締結した。同発電所の運転実績や安全性・信頼性の向上がねらい。契約期間は、同発電所の運転認可ライセンスが切れる2014年まで。

 契約によると、NPPD社はエンタジー社に対し、固定費用として2004年に1200万ドル、2005年に1,300万ドル、2006年から2014年の契約終了時まで毎年1,400万ドルを支払うほか、エンタジー社の人件費等の関連費用も負担する。また、2007年以降、安全面や規制面における実績の向上に応じ、年間600万ドルを限度にエンタジー社に支払う。 なお、NPPD社は従来通り、同発電所の所有・運転者であり、運転認可を保有する。(9月16日)

[英  国]
BNFLがTHORP閉鎖報道を否定

 英原子燃料会社(BNFL)は8月26日、英ガーディアン紙が同日付で掲載した新酸化物燃料再処理工場(THORP)の閉鎖報道を否定した。同社は2010年に現行の再処理契約が終了するのは事実とした上で、再処理事業の継続は、今後の再処理契約の受注次第との考えを示した。なお、THORPのあるセラフィールド施設は、2005年に発足予定の原子力廃止措置機関(NDA: Nuclear Decommissioning Authority)が所有する予定で、BNFLは単なるサイトの管理者となり、事業計画はNDAが立案することになる。このため現行の再処理契約終了後についてTHORPをどうするかはNDAが判断することになる。

 ガーディアンの記事に対しBNFLは、@セラフィールド施設の事業の焦点は、再処理事業から除染・デコミなど原子力債務の管理事業へ移行しつつあるが、2010年までの現行の再処理契約は確実に遂行する、ATHORPの今後は、顧客の要望、NDAの意向、最終的には英国政府の承認によるものとなる、B2010年に現行の再処理契約が終了することは目新しい事実の暴露ではなく、すでに公開済み――と反論。記事が不正確な事実に基づいていることを強調した。

 BNFLは1950年代よりセラフィールドで使用済み燃料の再処理を開始。B204(1973年に閉鎖)とB205の2つのガス冷却炉燃料再処理プラントを用いて4万トン強(2003年10月現在)の使用済み燃料を再処理している。

 THORPは改良型ガス冷却炉と軽水炉の使用済み燃料用であり、1997年8月に操業を開始。これまでに1万トン弱(2003年10月現在)の使用済み燃料を再処理している。現在は主に日本の電力会社向けの使用済み燃料の再処理を行っている。(8月26日)


ドーンレイ材料試験炉のデコミッショニングが最終段階へ

 英原子力公社(UKAEA)は9月5日、スコットランド北部の北海に面したドーンレイ・サイトにあるドーンレイ材料試験炉(DMTR、1969年閉鎖)のデコミッショニング作業が、原子炉部分を除いて、全て終了したと発表した。原子炉は一定の保守・管理期間を経て、放射能の減衰を待って撤去される。

 UKAEAは2000年10月、総額40億ポンドに上るドーンレイ施設の環境復旧計画を発表し、今後50〜60年をかけ施設内の施設全てを解体するとともに、放射性廃棄物を安全な専用施設へ移し、敷地内の汚染箇所を除染する方針を打ち出した。

 DMTRは、材料の照射挙動を研究する目的で建設され、1958年に初臨界(出力25万kW)に達した。より安全性の高い新型炉開発等で貴重な情報を提供してきたが、1969年5月閉鎖された。1971年にはウラン燃料と重水冷却材が取り除かれ、その後、格納容器内の機器の撤去に向けた準備作業が開始された1996年まで、保守・管理下に置かれていた。現在、この撤去作業も終了し、あとは原子炉構造物を撤去するだけとなった。

 ドーンレイ施設は、DMTRの他、ドーンレイ高速炉(DFR、1970年代に閉鎖)やドーンレイ高速原型炉(PFR、1994年閉鎖)が建設された英国のFBR開発の中心地。このほか、ドーンレイには、DFRとPFRの使用済み燃料の再処理を行うFBR燃料再処理工場(処理能力:5〜6トン/年)とDMTR燃料、オーストラリアやグルジアなど海外の研究炉用高濃縮ウラン燃料の再処理なども行う材料試験炉燃料再処理工場(同:約1トン)の2つの処理施設もある。しかし、政府は1992年11月にFBR開発計画を中止、続いて1998年6月には経済性の理由により、ドーンレイ再処理施設を手持ちの再処理契約が完了する2003〜2004年に閉鎖することを決定した。現在ドーンレイ施設の業務は、DFR、PFRおよびDMTRのデコミッショニングと、PFR燃料の再処理が中心となっている。

 また、2001年1月にはPFRのナトリウム冷却材を塩水に転換するナトリウム処分施設の建設が完了。PFRから取り出した1500トンのナトリウムは、処理後に海に放出する計画になっている。(9月5日)


[フランス]
初の極低レベル放射性廃棄物貯蔵施設が操業開始

 仏放射性廃棄物管理庁(ANDRA)は8月14日、パリ北東部のモルヴィリエで国内初の極低レベル放射性廃棄物(VLLW)専用の貯蔵施設の操業を開始した。同施設は、政府との間で2001年に締結された契約の一環として建設されたもので、さる6月26日に地元当局から操業許可を取得。原子力施設の解体に伴って発生する放射性廃棄物のうち、放射能が極めて低いコンクリートや金属などの廃棄物を今後30年間にわたって浅地層処分する。貯蔵能力は約75万トン。1992年に操業を開始したオーブ低・中レベル放射性廃棄物センターに隣接している。

 ANDRAは、9月にも初のVLLWを同施設のセルに搬入する予定としているが、当面は一切処理する必要のないVLLWだけを受け入れる。来年春までに減容・固化施設を含む全施設が完全に操業を開始する予定。

 地質研究や施設建設に総額で約4000万ユーロが投じられたほか、今後30年間の操業コストは約2億2000万ユーロにのぼる見込み。

 なお、フランスでは、今後100年間で約1,500万トンの放射性廃棄物が発生し、このうち約160万トンがVLLWであると推定されている。(8月14日)


[スペイン]
アルマラス原子力発電所の計装制御システム交換をWE社が受注

 ウェスチングハウス社(WE)はこのほど、アルマラス原子力発電所1、2号機(PWR、1号機:97万4000kW、2号機:98万3000kW)の計装制御(I&C)システムの交換工事を受注したと発表した。

 WE社によれば、今回の契約は同発電所のI&Cシステムの改善がねらい。交換作業は、2004年から2008年の間に4回に分けて実施される燃料取替停止時に行われる予定で、契約総額は約800万ドル。アルマラス原子力発電所は、1号機が1983年、2号機が1984年にそれぞれ営業運転を開始している。(8月)


[EU] 欧州委員会、原子力の社会的環境コストの優位性を示す

 欧州委員会(EC)は9月3日に発表した報告書の中で、原子力発電がベースロード電源の中で社会的環境(外部)コストが最も低いとの分析結果を明らかにした。

 「外部コスト:電力および輸送による社会環境的損害に関する調査結果」と題する同報告書は、エネルギーと環境との関連のほか、天然資源や経済成長、社会的ニーズといった問題を調査したもので、市場競争や環境面からも検討を加えた。

 外部コストは、エネルギー利用に伴う人や自然生態系、人間環境への影響といった社会的費用のことであり、エネルギーの市場価格に反映されていないという意味で外部コスト、あるいは外部性と呼ばれている。

 同報告書は、外部コストで比較した場合、欧州連合(EU)に加盟している15ヵ国の中で、原子力発電がベースロード電源として最もコストが低く、また全ての電源で見ても2番目に安価な電源であると位置付けている。英国とドイツの2ヵ国では、風力発電が原子力発電の外部コストを下回る。ドイツにおける1kWhあたりの電源別の外部コストは、原子力発電が0.22ユーロセント、風力が0.06ユーロセント、天然ガスが1.1〜2.2ユーロセント、バイオマスが3.4ユーロセント、石炭及び褐炭が3.4〜6.7ユーロセント、石油が5.6〜9ユーロセントとなっている。

 一方、フランスやベルギーのように原子力発電はあるが風力発電のない国では、原子力発電の社会的環境コストが、他電源に比べ最も低いと分析している。同報告書では、天然ガスがkWh当たり1.1〜4.5セント、石油・褐炭の場合が、2.2〜16.8セントの範囲にあるなど、化石燃料を用いた電源の外部コストが高いと結論付けている。

 この研究結果は、ECが政策手段を決定する際の参考にされる。具体的な政策手段として、再生可能エネルギーの達成目標やエネルギー税の導入、クリーン・エネルギー戦略に関する政府と産業界との自発的合意等が挙げられている。(9月3日)


[カザフスタン]
ウラン転換工場建設で共同出資を呼びかけ

 カザフスタンの国営ウラン開発会社カザトムプロムのザキシェフ総裁はこのほど、ウラン転換工場の建設に向けて、来年末までに共同出資者を募る意向を示した。国際原子力情報ネットワーク(ENS/NucNet)の取材に対して語ったもので、東カザフスタンにあるVVER用燃料ペレット製造のウルバ冶金工場にウラン転換工場と再転換工場をそれぞれ建設する計画。

 最初に建設予定のウラン転換工場は、六フッ化ウランで年間最大3000トンの生産能力を持ち、2004年着工、2006年の操業開始を目指す。再転換工場は、CANDU炉用の燃料ペレット向け。ザキシェフ総裁は、合弁企業か長期契約、あるいは外国政府との共同事業になるとの見解を示した。

 また同総裁は、COGEMA、Katco両社とのウラン鉱山開発の合弁事業(COGEMA社が45%の権益保有)について、ウラン生産プラントの建設を評価するフィジビリティ・スタディが今秋にも終了することを明らかにした。年間生産能力は、1000トンか1500トンになる見通し。

 ザキシェフ総裁は昨年、同国で開催されたウラン産業に関する国際会議の場で、2027年までに同社を世界一のウラン生産者にする考えであることを表明した。同総裁は、国内のウラン生産量を現在の年間1030トンから2028年までに1万5000トンに拡大させるとともに、国内でのウラン鉱山の開発や外国企業との原子力関連の合弁事業を積極的に進めていく方針も示した。(8月)


[インド]
政府、カルパッカムへの高速増殖原型炉PFBR建設を承認

 インド政府は9月2日の閣議で、インド原子力省(DOA)がインド南部のカルパッカム・サイト(タミルナドゥ州)への建設を提案していた高速増殖原型炉PFBR (FBR、50万kW)の建設計画を了承した。

 PFBR(総工費:349億2000万ルピー)の着工時期は未定だが、工期は7〜8年間となる見通しで、インディラ・ガンジー原子力研究センター(IGCAR)が設計、インド原子力発電公社がプロジェクト管理を行い、建設・運転を行う新会社も近く発足する予定である。

 インドは1985年10月に高速増殖実験炉FBTR(FBR、4万kW)が初臨界に達しており、米国、英国、フランス、旧ソ連、日本に次ぐ6番目のFBR運転国。同国はトリウム資源が豊富(可採鉱量:29万トン)であること、および1970年の核拡散防止条約(NPT)脱退のため原子力分野で国際的に孤立状態にあることから、独自のトリウム・サイクル3)の確立を原子力開発計画の最終目標としており、FBRもその戦略の一部である。

 同戦略では、まず、@天然ウランを燃料に重水炉を運転し、使用済み燃料を再処理してプルトニウムを生産、A高速増殖炉を建設・運転してプルトニウムを増殖し、途中からトリウム232を装荷してウラン233を生産、B新型重水炉(AHWR)あるいは加速器駆動システム(ADS)によるトリウム・サイクルを確立――の三段階からなり、PFBRもプルトニウム増殖とトリウム322からのウラン233生産という第二段階のファースト・ステップとなる原子炉。この第二段階では、PFBRを含めて合計5基の50万kW級FBRの建設が計画されている。

 インドは1972年に、FBR原子力発電所の展開に向け、原子炉エンジニアリング、材料、燃料、再処理、計装・制御など一連のFBR技術の開発を目的として、IGCARにフランスのラプソディと同型の高速増殖実験炉FTBR(FBR、1万5000kW)を着工。FTBRは1985年10月に初臨界した後、初期トラブルはあったものの1997年7月には送電を開始し、2001年には燃焼度10万MWd/tを達成している。

 FTBRおよびPFBRのウラン・プルトニウム混合カーバイド燃料は、1998年に操業開始したカルパッカム再処理工場(処理能力:100トンHM/年)でマドラス原子力発電所(PHWR、17万kW×2基)の使用済み燃料の再処理により供給されることになっており、FBR燃料の再処理施設(FRFRP)も同サイトに建設中である。(9月2日)


3) トリウム232(非核分裂性)が中性子を吸収すると、トリウム232→トリウム233→プロトアクチニウム233→ウラン233の主系列核反応で、核燃料として利用できるウラン233(核分裂性)が得られる。ウラン233は中性子再生率が大きい(η値=2.28)ため、ウラン233とトリウム232の混合燃料を炉心に装荷し、ブランケット(燃料親物質)にトリウム232を配置すれば、消費量を上回るウラン233を生産できる。この増殖炉でウラン233を燃焼・増殖させ、増殖したウラン233を使って新しい燃料を供給する燃料サイクルをトリウム・サイクルという。



[南アフリカ]
英国原子燃料会社の経営危機はPBMRプロジェクトに影響せず

 ペブルベッド燃料・モジュラー型炉(PBMR)の建設を計画しているPBMR社は9月10日、現地紙(ケープ・タイムス)の「英国原子燃料会社(BNFL)が経営危機に陥り、事業再編がなされた場合、PBMRプロジェクトに影響するのではないか」とのインタビューに対して、「BNFLとは密接に連絡をとっているが、PBMRプロジェクトからの撤退といった話は全くない」(N.ターブランシュ最高経営責任者:CEO)と否定した。

 BNFLは、ESKOM社(30%出資)、南アフリカ産業開発公社(IDC、25%出資)に次ぐ第3位の出資者(22.5%)だが、2002年、2003年の経常損失がそれぞれ23億2800万ポンド、10億8800万ポンド(1ポンド=約187円)と経営が悪化しており、PBMRプロジェクトからの撤退が噂されていた。

 PBMR社は、2002年末までに15億ランド(1ランド=約16円)を投資し、環境影響評価やフィージビリティ・スタディ、ガスタービンによる要素機器の実証試験などのフェーズTを完了しており、現在、続くフェーズU(クーバーク・サイトへの原型炉の建設およびペリンダバ・サイトへのペブルベッド燃料工場の建設)に必要な認可を国家原子力規制局(NNR)に申請している段階。ただ、PBMRプロジェクトの第4位の出資者(12.5%)だった米エクセロン社が2002年4月、フェーズUへの不参加を表明。フェーズUでは、原型炉の建設だけで約100億ランドが必要とみられており、ペリンダバ・サイトへのペブルベッド燃料工場の建設も含めれば、さらなる投資が絶対必要な条件である。

 PBMR社は、フェーズUのネックの1つである資金不足を外国資本による投資でまかなえるようPBMRプロジェクト自体の信用を高めるべく、政府系の2つの出資者(ESKOM社およびIDC)にフェーズUに対する無条件のフルコミットメントを求めて交渉中である。(9月10日)

【終わり】


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