[諸外国における原子力発電開発の動向]
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オーストラリアにおける低レベル廃棄物処分場の建設計画
政府、2004年の操業開始めざして建設・操業認可を申請

 オーストラリア連邦産業・科学・資源省(DISR)は8月15日、連邦政府が建設を計画している国立低レベル廃棄物処分場(National Radioactive Waste Repository)の建設・操業認可をオーストラリア放射線防護・原子力安全庁 (ARPANSA)に申請した。

 国立低レベル廃棄物処分場の建設が予定されているのは、サウスオーストラリア州ウーメラ立入制限地区(ロケット打上射場、新型航空機試験場)近郊の「サイト40a」で、ARPANSAの許認可手続きが順調に進めば、「2004年にも操業開始できる見通し」(P.マクガーラン連邦産業・科学・資源相)である。

 オーストラリアでは、1992年から低レベル廃棄物処分場の立地作業がスタートしており、フェーズTとして処分場のサイト適性評価手法が整備され、フェーズUでは1992年に処分場の建設候補地として合計8ヶ所(北部準州に2ヶ所、クイーンズランド州に1ヶ所、ウェスタンオーストラリア州に1ヶ所、ニューサススウェールズ州とサウスオーストラリア州の州境に1ヶ所、サウスオーストラリア州に3ヶ所)が選定された。さらに、フェーズVとして、オーストラリア国立保健医療委員会(NHMRC)の「放射性廃棄物の浅地層処分に係わる実施規則」に基づいて、これらの候補地のスクリーニングが行われ、政府は1997年、@地下水面の深度が高いこと、A地下水が(農業・産業用水として利用できない)高濃度の塩水であること、B降雨量が少ないこと、C地震が少ないこと、D輸送インフラが整備されていること――などを理由にサウスオーストラリア州の3地点(サイト40a、サイト45a、サイト52a)を最終候補に絞り込んだ。その後、2001年から2003年にかけて、「環境・生物多様化保護法」に基づいてこれら3地点の環境影響評価声明(EIS)の詳細評価が行われ、連邦環境・遺跡省からサイト40aとサイト45aの許可が発給され、2003年5月にはサイト40aに最終決定された。

 浅地層処分場が建設されるサイトは用地面積1.5km×1.5kmで、管理棟と廃棄物保管建屋のほか、中心部の100m×100mの区域に浅地層処分トレンチが複数建設される。トレンチの深さは15m〜20mで、ここに鋼鉄製またはコンクリート製のドラム缶に封入された低レベル廃棄物と短寿命中レベル廃棄物が埋設処分される。なお、同サイトの地下水面は地下65mに位置するため、地表の水が地下水面に達するには1万1000年〜3万3000年を要し、地下水が地表に湧出するにも1万年程度の時間がかかる。また、大鑽井盆地(グレート・オーストラリア・ベイスン)とも地下水脈の連結はない。

 同処分場の操業はオーストラリア政府の契約業者が行い、NHMRCの「放射性廃棄物の浅地層処分に係わる実施規則」に基づき、処分容量が満杯となる時点あるいは放射能量が上限に達した時点で閉鎖されることになっている。現時点における推定操業期間は50年間で、閉鎖後200年間周辺の放射線モニタリングが行われる。

 同処分場に浅地層処分されるのは、医療、産業、研究などの部門で発生した衣類、紙、プラスチック、ガラス、汚染土壌などの低レベル廃棄物と使用済み産業用ゲージ、発光塗料、煙探知器等の短寿命中レベル廃棄物(NHMRCの「放射性廃棄物の浅地層処分に係わる実施規則」でカテゴリーA、B、Cに区分されるもの)。

 オーストラリアでは、過去40年間の医療、産業、研究などにおけるラジオアイソトープ・放射線利用に伴い合計3500m3弱の低レベル廃棄物が発生しているが、この半分以上が連邦科学工業研究機関(CSIRO)によるウラン鉱石の製錬技術研究に伴うものである(現在、操業中のウラン鉱山・鉱床の廃棄物は鉱山内で埋設処分されるのでこの中には含まれない)。

 同国の低レベル廃棄物発生量は年間50m3未満とわずかである(ちなみに英国やフランスでは年間2万5000m3が発生する)。 

 また、2035年に計画されているオーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)のHIFAR炉のデコミッショニング作業に伴い約500m3の低レベル廃棄物と短寿命中レベル廃棄物の発生が見込まれている。【参考資料】

 このほか、オーストラリアには、現在、使用済み線源や放射性医薬品の製造に伴う合計約500m3の長寿命中レベル廃棄物(NHMRCの区分だとカテゴリーS)があるが、これらは国立低レベル廃棄物処分場での浅地層処分には適さないため、最終処分場が完成するまで地上の専用施設で一時的に貯蔵されている。

 オーストラリア政府は1996年、現在、国内各地で一時貯蔵されている長寿命中レベル廃棄物を最終地層処分場(National Geological Repository)が建設されるまでの間、集中貯蔵する地上施設である国立中間貯蔵施設(National Store)の建設を決定。2000年8月から候補地(連邦政府所有地)の選定を進めており、2003年末まで国立中間貯蔵諮問委員会(National Store Advisory Committee)による候補リストの評価が行われることになっている。

 なお、オーストラリアでは、過去、内陸の乾燥・砂漠地帯に大規模な地層処分場を建設し、国外の高レベル廃棄物も含めた廃棄物処分事業を行うという「パンゲア計画」が米国のパンゲア社によって提唱されたことがあり、候補地としてグレートサンデー沙漠、グレートビクトリア沙漠および国立低レベル廃棄物処分場が建設されるウーメラ立入制限区域周辺などが噂されたが、オーストラリア政府は「国外で発生した放射性廃棄物を引き取ることはありえない」と公式に否定している。(8月15日)

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