[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年9月中旬〜2003年10月中旬)

[米 国]

NRC、セントルーシー原子力発電所1、2号機の運転認可を更新

 米原子力規制委員会(NRC)は10月3日、フロリダ・パワー&ライト社(FPL)のセントルーシー原子力発電所1、2号機(PWR、1号機:87万2000kW、2号機:88万2000kW)の運転認可を更新した。

 FPL社は2001年11月、セントルーシー1、2号機の運転認可更新を申請していたもので、同1号機は2016年3月から2036年3月に、同2号機は2023年4月から2043年4月にそれぞれ20年間運転期間が延長された。

 米国では、原子力法で最初の運転認可が40年とされているが、連邦規則基準(10CFR54)で定められた総合プラント評価(Integrated plant assessment :?IPA)および期間限定経年化解析(time-limited aging analyses: TLAA)を行い、延長された期間中も経年化による影響を管理することで現行認可ベース(current licensing basis: CLB)が維持され、設備機能が確保されることを実証すれば20年間の運転認可延長が認められている。

 原子力発電所は、当初、40年間の運転期間を前提として建設されているため、40年間を経過した時点で減価償却が完了する。このため運転認可更新のため大規模なバックフィットを実施しても、経済性(競争力)はきわめて高い。

 このため、米国では2000年3月のカルバートクリフス1、2号機(PWR、88万kW×2基)を皮切りに運転認可更新が相次いでおり、2003年10月末現在、18基(合計出力:1623万7000kW)に運転認可更新が認められており、14基(合計出力: 1268万kW )の運転認可更新申請が審査中。さらに、19基(合計出力:1892万9000kW)が運転認可更新を申請すると見込まれている(参考資料2)。

 また、原子力発電所を運転する電力会社も、供給者別にバブコック&ウィルコックス(B&W)・オーナーズ・グループ、ウェスチングハウス・オーナーズ・グループ、BWRオーナーズ・グループ(ゼネラル・エレクトリック社製BWRのオーナーズ・グループ)などを結成し、原子炉容器、炉内構造物、配管、加圧器など、各グループに共通の機器を対象とした経年化管理に関する技術レポートのとりまとめなど運転認可更新に向けた準備を共同で行っている。(10月3日)

原子力発電所の建設制約する州法改正へ

米国ウィスコンシン州議会下院のM.ヒューブスク議員は10月2日、原子力発電所の建設を実質的に禁止している州法の改正を求める法案を下院エネルギー・公益事業委員会に提出した。この法案は、同議員を含めた18名が発議者となっており、4名の上院議員も共同発議者に名前を連ねている。

ウィスコンシン州の現在の法律では、2つの条件をクリアーしていると公益事業委員会(PSC)が判断した場合に限って原子力発電所の建設を認めても良いことになっている。その1つは、州内の原子力発電所から発生するすべての高レベル放射性廃棄物(使用済み燃料)を処分する施設が国内か国外のどちらかで利用できること。もう1つは、提案された原子力発電所が他の電源と比べて経済的に有利であるということ。

2つ目の条件は、@核燃料の供給確保、A原子力発電所の建設・運転・廃止コストと廃棄物処分コスト、BPSCが経済性に影響を及ぼすと判断したその他の要因――に基づいてPSCが判断することになっている。

今回、提出された法案は、こうした2つの条件を削除するというもので、成立すれば、原子力発電が他の電源オプションと同じ扱いを受けることができるようになる。

ウィスコンシン州では、現在の法律が制定(1983年)される前に運転を開始したキウォーニ1号機とポイントビーチ1、2号機の3基の原子力発電所によって州内の電力の20%が供給されている。州のエネルギー局は、増加する電力需要をまかなうためには2016年までに630万kWの発電設備を新設する必要があると予測。このままの状態が続けば2007年には停電が発生する可能性があるとみている。

米国では、使用済み燃料と高レベル放射性廃棄物向けの処分場の建設計画がネバダ州のヤッカマウンテンで順調に進んでいる。また、国内の原子力発電所の運転実績がここ数年、過去最高を更新するなど、高い競争力に注目が集まっている。今回の法案は、そうした状況を反映したもので、成立の可能性はかなり高いとの見方がでている。(10月2日)

エクセロン社、BE所有のアマージェン社株を買収へ

 エクセロン社は10月3日、英国の原子力発電事業者ブリティッシュ・エナジー社(BE)が50%を所有するアマージェン社の株式を約2億7650万ドルで買収し、アマージェン社の全株式を保有する方針を明らかにした。

 アマージェン社は、米国の原子力発電所の買収・運転を目的に、BE社とPECOエナジー社(当時、2000年にUNICOM社と合併して現エクセロン社)が1997年8月に設立した合弁会社で、クリントン(BWR、101万7000kW、1999年12月にイリノイパワー社より買収)、スリーマイルアイランド1号機(PWR、83万7000kW、1999年12月にファーストエナジー社より買収)、オイスタークリーク (BWR、62万7000kW、2000年8月にファーストエナジー社より買収)の3基の原子力発電所を運転している。

 BE社は9月11日、経営再建の一環として、アマージェン社株式を米FPLエナジー社に約2億7650万ドルで売却する方針を明らかにしたが、BE持株の売却については、パートナー企業であるエクセロン社がFPLエナジー社と同じ条件で先買権(権利行使期日:2003年10月11日)を有していた。エクセロン社は、この先買権を行使。これによりBE社はFPLエナジー社に、829万5000ドルを上限とした違約金を支払わねばならなくなった。

 今回のアマージェン社の株売却にあたっては、米原子力規制委員会(NRC)、米連邦エネルギー規制委員会(FERC)、米連邦通信委員会(FCC)から許可を取得するとともに、ハート・スコット・ロディノ反トラスト強化法およびニューハンプシャー州産業施設復旧法をクリアする必要があり、一連の許認可手続きには約6カ月を要する見通し。(10月3日)

[米 国−中 国]

核不拡散の保証義務遵守で合意

 米エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官と中国国家原子能機構(CAEA)の張華祝主任は9月16日ウィーンで、原子力技術の移転の際に必要な核不拡散保証義務の遵守で合意、声明に署名した。これにより、米企業はDOEの規制下で中国に対して原子力技術やサービスを提供することが可能となる。エイブラハム長官は、「今回の合意は、米原子力産業界が拡大する中国原子力市場へ参入する門戸を開くものである」との見解を示した。

 合意内容としては、移転される原子力技術に核不拡散の保証が必要となった場合、受益国の政府は、移転技術は平和目的に限って使用することや供給国の政府による事前同意なしに第三国へ再移転することができないことなどが盛り込まれている。その他、両国で共同プロジェクトを実施する上で、相互の核不拡散保証義務の遵守が必要とされた場合、そうした保証義務の遵守が取り交わされる。この取り決めが最初に適用されるのは、モジュール方式高温ガス・ペブルベット炉(MPBR)に関するマサチューセッツ工科大学(MIT)原子力工学科と清華大学原子力技術研究所との協力となる。(9月16日)


[ブラジル]

2004年から濃縮ウランの生産を開始

 R.アマラル・ブラジル科学技術相は10月6日、国内で運転中の2基の原子力発電所に燃料供給を行うため、これまで欧州からの輸入に頼っていた濃縮ウランの生産を2004年からを開始するとともに、10年以内をメドに濃縮ウランの輸出もはかるとの計画を発表した。

 ブラジルは世界第3位のウラン資源国で、1980年からウラン濃縮を行っているが、これまでは研究開発規模にとどまっていた。

 水力発電への依存度が高いブラジルでは、渇水に見舞われた2001年に供給制限を余儀なくされており、今回の濃縮ウラン国産化も原子力発電の強化による電源構成の改善の一環である。計画では2010年までに運転中のアングラ1、2号機(PWR、1号機:65万7000kW、2号機:135万kW)の燃料の60%を自給し、2014年をメドに完全自給と輸出をめざす。(10月6日)


[オーストラリア]

オーストラリア原子力協会、原子力発電オプションの検討を勧告

 オーストラリア原子力協会(ANA)はこのほど、同国における将来のエネルギー供給の手段として、外部コストや環境要素も含めたコスト競争力を考慮した上で、原子力発電を再評価すべきとの草案をまとめた。最終文書は、今年11月にキャンベラで開催されるANAの会議で発表され、同国の連邦議員や州議員にも送付される予定である。

 草案は、長期的にみて石炭や天然ガス価格が不安定であるのに対して、安定した価格のウランを利用できる原子力発電は「成熟した技術」であると位置付けている。放射性廃棄物については、少量の廃棄物を安全かつ経済的な方法で管理できるとする一方、化石燃料の燃焼により大量に発生する二酸化炭素や有毒ガスの処分方法は、コストが高いことに加え、有効性が現段階では立証されていないと指摘している。

 また、オーストラリアでは現在、石炭火力発電が電力需要の85%を占めており、再生可能エネルギーの利用が増加しつつあるものの、今後10−20年間で電力需要全体の2、3%以上を賄うことは難しいとの見通しを示している。ANAは、2020年までに年率約3%で電力需要が伸びると予測、現在の需要から70%増加すると見られることから、新たに約5000万kW相当の発電設備容量が必要であるとしている。(10月)


[英  国]

BNFL、原子力研究開発部門に大幅な政府予算を要求

 英原子燃料会社(BNFL)はこのほど、原子力研究開発に3年間で計1億ドルの予算計上を要望した報告書("An Essential Programme to Underpin Government Policy on Nuclear Power")を公表した。同報告書は、BNFLの委託により専門家で構成されたパネルが作成したもので、政府が今年2月に発表したエネルギー政策の中で明記した再生可能エネルギーの研究開発予算と同額を原子力研究開発にも計上するよう勧告している。

 政府のエネルギー政策では、原子力発電を「オプションとして堅持する」との表現が盛り込まれている。しかし専門家パネルは、年間200万ドルという原子力研究開発予算額では、原子力発電を将来のオプションとして堅持するのには不十分と懸念を表明。原子力研究開発への予算を増額することによって、二酸化炭素の排出削減目標だけでなく、競争力のある価格でエネルギー・セキュリティを達成できるとして、政府に対して以下の施策の実施を提言した。

  • 既存の原子力発電所の運転期間を最大限に延長
  • 新しい原子炉システムを選定・許可・運転する能力の維持
  • モジュール方式の高温ガス炉(PBMR)開発プロジェクトや小型軽水炉の開発国際プロジェクトIRIS(International Reactor Innovative and Secure)、第4世代原子力システム国際フォーラム(GIF)など、次世代炉や燃料サイクルの国際的な開発プロジェクトに参加する
  • 放射性廃棄物管理分野での競争力を維持・向上させる

 この専門家パネルは、前ロールスロイス社理事のP.ラッフルズ氏が中心となっており、報告書を7月に完成。これにBNFLが使用済み燃料に関する補遺を加えて9月29日に発表した。この中でBNFLは、スウェーデンやフィンランド、米国のヤッカマウンテン計画など、各国の放射性廃棄物管理方法を説明し、放射性廃棄物の深地層での長期保管が最も信頼性の高いオプションであると結論している。(9月)

【終わり】


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