[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2003年11月中旬〜12月中旬)

米エネルギー省、「2004年版エネルギー見通し」で原子力発電量を大幅に上方修正

運転認可更新と出力増強で2025年には原子力発電設備容量が390万kW増加

 米エネルギー省・エネルギー情報局(DOE/EIA)は12月16日、2025年までの米国のエネルギー需給を予測した「2004年版エネルギー見通し」(AEO2004)をとりまとめ発表した。

 今回のエネルギー見通しは、これまで経済性、環境影響などの特長から発電部門で大幅な伸びが見込まれてきた天然ガスの価格上昇が予測されるため下方修正された一方で、近年、パフォーマンス(設備利用率)向上が著しく、熱出力増強や運転認可の更新が相次いだ原子力発電が上方修正されるなど、米国の「ニュークリア・ルネサンス」(原子力発電の復活)を反映したものとなっている。

 「2004年版エネルギー見通し」によれば、米国の一次エネルギー消費量は、2002年の97.7QBTU(1015BTU:英国熱量単位)から年平均1.5%で増加、2025年には136.5QBTUに達すると予測されており、AEO2003の予測(139.1QBTU)から下方修正された。

 一次エネルギー消費量をエネルギー別にみると、天然ガス価格の上昇や軽トラックを対象とした「自動車メーカー別の平均燃費規制」(CAFE)などのため、発電部門や輸送部門で石油と天然ガス消費量が下方修正された一方、原子力発電、石炭、再生可能エネルギーの消費量は上方修正されている。

 また、電力消費量(自家発電を含む)は2002年の3兆6750億kWhから年平均1.8%で増加し、2025年には5兆4850億kWhに達すると予測されている。また、電力需要も2002年の3兆4752億2100万kWhから2025年には5兆2067億800万kWhに増加すると予測されている。

 2002年から2025年に至る発電電力量を電源別にみると、原子力発電が7800億6410万kWhから8164億8880万kWh、石炭火力が1兆9264億4200万kWhから3兆280億8140万kWh、石油火力が1019億7220万kWhから1104億9190万kWh、天然ガス火力が6858億3970万kWhから1兆3041億7100万kWh、再生可能エネルギー電源(水力を含む)が3474億5050万kWhから5158億7570万kWhになると予測されている。

 発電設備容量の伸びを電源別にみると、これまで急速に拡大してきた天然ガス火力の増加が下方修正された一方、石油火力、石炭火力、原子力発電および再生可能エネルギー電源(水力を含む)が上方修正されている。

 このうち原子力発電設備容量は、前回のエネルギー見通し(AEO2003)では、「2006年の1億40万kWをピークに減少に転じ、2025年には9960万kWまで落ち込む」と予測されていたが、今回のエネルギー見通しでは、2002年から2025年にかけて390万kWの出力増強が見込まれているほか、運転認可の更新が相次ぐとみられること、また、2007年にはブランズフェリー1号機(BWR、106万5000kW、1985年3月より運転休止中)の運転再開が期待されることから、「2002年の9870万kWから2025年には1億260万kWに増加する」と大幅に上方修正されている。

 ただ、原子力発電所の新規建設については、前回と同様、「他電源との競争力を考慮すれば、2025年までは新規運開するユニットはないとみられる」と今回のエネルギー見通しも慎重な予測をしている。

 燃料価格の上昇が見込まれる天然ガス火力については、今回のエネルギー見通しは2025年の発電用天然ガス価格を前回予測から平均100万BTUあたり25セント高く予測しており、2002年から2025年までに増設される天然ガス火力設備容量も、前回予測の2億9200万kWから2億1900万kWとされたほか、2025年の天然ガス火力発電量も1兆6780億kWhから1兆3040億kWhに下方修正されている。ただ、天然ガス発電電力量は、現時点(2002年)の6820億kWhから倍増することには変わりなく、依然、天然ガス火力が新規に増設される電源の大半を占めるとみられている。

 2004年版エネルギー見通しによれば、米国の二酸化炭素排出量は2002年の57億2900万トンから年率1.5%で増大し、2025年には81億4200万トンに達すると予測している。

 二酸化炭素排出量を部門別にみると、前回予測と比べて、産業部門と輸送部門の排出量が減少した一方で、発電部門、家庭部門および商業部門の排出量が増加しているが、これは発電部門での石炭消費量が上方修正されたことが最大の要因である。

 天然ガス価格の上昇により石炭火力の競争力が相対的に向上するため、2003年から2025年にかけて合計1億1200万kWの石炭火力発電所が新たに建設され、総発電電力量に占める石炭火力の割合も2002年の50%から2025年には52%に増加するとみられている。(12月16日)


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