[諸外国における原子力発電開発の動向]
最近の動き (2003年11月中旬〜2003年12月中旬)

[米 国]

コンステレーション・エナジー社、R.E.ギネイ原子力発電所を買収へ

 コンステレーション・エナジー社は11月25日、ローチェスター・ガス&エレクトリック社のR.E.ギネイ原子力発電所(PWR、49万5000kW)を4億100万ドルで買収すると発表した。

 同社は、ローチェスター・ガス&エレクトリック社と、今後10年間、ギネイ原子力発電所の電力の90%を44ドル/MWhで売電することになっており、残る10%は、今後、大幅な電力価格の値上がりが見込めるニューヨーク州やニュージャージー州で売電される。

 コンステレーション・エナジー社は、2001年10月にナイアガラモホーク社からナインマイルポイント1、2号機(BWR、1号機:63万5000kW、2号機: 116万9000kW)を7億6200万ドルで買収しているが、今回の買収額は設備容量kWあたりでみると50%近く高い。

 米国では、1998年7月のGUP社からアマージェン社へのスリーマイルアイランド1号機の売却を皮切りに、電力市場自由化・規制緩和に伴う競争劇化により、ワンサイト・シングルユニットなど比較的経済性に劣る原子力発電所を所有する電力会社が、コンステレーション・エナジー社やエンタジー社、ドミニオン社など、複数のユニットを所有することでスケールメリットを享受でき、優れた運転管理ノウハウを持つ電力会社に売却し、送配電事業などに特化する事業再編が進展しており、今回のギネイ原子力発電所は12件(15基)目。こうした買収劇の初期には、事業再編を急ぐ売手側の事情から、原子力発電所が簿価を大幅に下回る「バーゲン価格」で売却されるケース(スリーマイルアイランド1号機の売却額は燃料費を含めわずか1億ドル)もあったが、最近は適正な評価価格に近づいてきており、今回の買収は一連の買収劇が終盤に近づいていることをうかがわせる。(参考資料1)

 さらに、今回の買収条件には2029年まで20年間の運転認可更新も含まれているほか、同発電所では1996年に蒸気発生器(SG)交換が行われたほか、原子炉圧力容器上蓋、ポンプ・バルブ類など多数の機器交換などの投資がなされていることも買収価格が高い理由である。また、これらの1990年代に実施された大規模改造工事により、ギネイ原子力発電所は出力増強が可能な条件が整っており、同社は現在の49万5000kWから58万kWに17%の出力を増加させる計画である。この出力増強も計算に入れれば、設備容量あたりの買収額は667ドル/kW(ナインマイルポイントは415ドル/kW)となる。(11月25日)

カトーバ原子力発電所とマクガイヤー原子力発電所の運転認可を更新

 米原子力規制委員会(NRC)は12月5日、デュークパワー社のカトーバ原子力発電所1、2号機(PWR、112万9000kW)とW.B.マクガイヤー原子力発電所1、2号機(PWR、110万kW×2基)の運転認可を20年間更新した。

 カトーバ原子力発電所は2002年に米国で最も発電コストが低かった原子力発電所で、W.B.マクガイヤー原子力発電所も第10位にランクされている。今回の運転認可更新により、カトーバ原子力発電所は1号機が2045年、2号機が2046年、W.B.マクガイヤー原子力発電所は1号機が2041年、2号機が2044年まで、それぞれ運転継続される。

 米国では原子力発電所の運転認可更新が相次いでおり、今回の4基を含め、合計22基(合計出力:2108万7000kW)で運転認可が更新されている。(参考資料2) デュークパワー社も2000年5月に運転認可を更新している。

 デュークパワー社は1990万kWの設備容量を有し、ノースカロライナ州とサウスカロライナ州を供給基盤とする米国屈指の電力会社で、カトーバ1、2号機、W.B.マクガイヤー1、2号機およびオコニー1〜3号機(PWR、84万6000kW×3基)の7基を運転しており、発電設備容量の48%が原子力である(石炭・石油・天然ガス火力が51%、水力が1%)。なお、カトーバ原子力発電所は、デュークパワー社(12.5%)のほか、ノースカロライナ・エレクトリック・メンバーシップ社(28.1%)、ピードモント電力局(12.5%)、ノースカロライナ・第一電力局(37.5%)、サルーダリバー電力共同組合(9.4%)の共同所有である。(12月5日)

官民協力で原子力発電所の建設・運転一体認可実証へ

 米エネルギー省(DOE)のエイブラハム長官は2003年11月21日、民間事業者との協力によって2010年までに新規原子力発電所の建設をめざす「原子力発電2010」(Nuclear Power 2010)計画の一環として、建設・運転一体認可(combined construction and operating license: COL)の実証に着手するため、このプロジェクトに参加する事業者を公募すると発表した。

 原子力発電所のワンステップ(one-step)許認可手続きとして知られている建設・運転一体認可は、「1992年エネルギー政策法」(Energy Policy Act of 1992)に盛り込まれ、原子力規制委員会(NRC)の規則・規制の中に明文化された。具体的には、予め定められたNRCの要件に適合することを条件として、原子力発電所を建設し運転するための一体認可を申請者(事業者)が取得することができるというもの。それまでの旧い許認可手続きでは、建設許可と運転認可を別々に取得することが義務付けられていたが、不必要な遅れを生じさせる不完全な手続きであるとの認識から改定されることになった。

 DOEが今回、公募した建設・運転一体認可は、原子力発電2010計画の一環として進められている「事前サイト許可」(early site permit:ESP)につづくもので、数千万ドルの費用がかかるとみられており、民間事業者が最低でも50%の資金を負担する。なお、2002年にスタートしたESPプロジェクトには、エクセロン社、ドミニオン社、エンタジー社といった米国を代表する原子力発電事業者が参加。すでに3社とも、既存の原子力発電所サイトを対象に、NRCに対してESPを申請している。

 NRCの新しい許認可手続き自体が、標準化された設計の原子炉の採用に合わせたものであることから、次のステップとなるCOLでは、まず「第3世代+」と呼ばれている新しい設計の原子炉の検討に焦点があてられる。この中には、ゼネラル・エレクトリック社のESBWR(Evolutionary Simplified BWR)や、ウェスチングハウス社のAP1000(PWR)、カナダ原子力公社のACR700(CANDU)などが含まれている。

 DOEは2010年までに新規原子力発電所の運転を開始するためには2005年までに発注が行われる必要があるとみているが、現在の作業の進捗状況などから判断すると、運転開始はどんなに早くても2012年頃になりそうとの見方が強まっている。(11月21日)

[フィンランド]

テオリスーデン・ボイマ社、第5原子力発電所の炉型をEPRに最終決定

 テオリスーデン・ボイマ社(TVO)は2003年12月18日、計画中のオルキルオト3号機の炉型を出力160万kWの欧州加圧水型炉(EPR)に決定し、正式な建設契約(契約総額:約30億ユーロ)を締結した。EPRは、フランスのフラマトムANP社とドイツのシーメンス社のコンソーシアムが入札した原子炉で、フラマトムANP社が原子炉系統、シーメンス社がタービン系統を供給する。契約は、掘削作業を除く、設備の設置から試運転までの建設工事全体に関する業務を一括で請け負うターンキー方式。

 EPRの国内導入に積極的な姿勢をみせているフランスのフォンテーヌ産業担当大臣は、今回の契約を「産業面、技術面における大きな成功」としている。フランス政府は2004年早々にも、EPRの実証炉建設が盛り込まれるとの見方が出ているエネルギー政策法案を議会に提出する見通し。今回の契約は、官民上げてEPRの早期建設をめざすフランスにとって、まさに追い風となった。

 フィンランドで5基目となる新規原子力発電所の建設を手掛ける民間電力会社のTVOは、2001年1月の政府による新規建設の原則決定、続く2002年5月の議会承認を経て、2002年9月に原子炉の競争入札に着手。2003年3月に入札を締め切った後、入札評価作業を行っていた。すでにTVOは10月、建設サイトにオルキルオトを選定しており、採用される炉型については、フラマトムANP社―シーメンス社のEPRが最有力という見方を示していた。その他の候補炉型としては、米GE社製ABWR(出力136万kW)、仏フラマトムANP社のSWR1000(BWR、出力97万7000kW)、ロシア製VVER91/99(PWR、出力107万kW)が挙げられていた。

 TVOの社長兼最高経営責任者のパーボラ氏は、2004年1月中に政府に建設認可を申請する意向を示しており、順調に進めば2005年にも建設認可を取得して着工し、2009年の運転開始をめざす。

 なお、最新の世論調査によると、この10年間でフィンランド国民の原子力発電に対する見方が大きく変わり、肯定的な意見が否定的な意見を上回ったことが分かった。この調査はTNSギャラップ社が2003年10月、フィンランドエネルギー産業連盟(Finergy)の委託で実施したもので、45%の人が原子力発電に支持を表明した。

 原子力発電を支持すると答えた人の割合は、1993年に行われた世論調査結果の29%から16ポイント増加し、45%へと大きく上昇。一方、原子力発電に反対すると答えた人の割合は28%で、93年調査の43%から15ポイントも下落した。どちらでもないと回答した人の割合は、93年の26%とほぼ横ばいの27%となった。

 なお、20年前に実施された同様の調査では、反対の意見が51%と過半数を占める一方、支持はわずか17%だった。

 男女別に見た場合、57%の男性が原子力発電を支持すると回答。これに対し、女性の支持は35%で、10年前の15%から倍増し、反対と回答した女性の割合33%(10年前の調査では49%)をわずかに上回った。

 支持政党別にみると、原子力発電を支持すると回答した人のうち67%が中央党、社会民主党、スウェーデン人民党による連立政権の支持者で、このうち48%が社会民主党を支持していた。また、緑の党の支持者の54%が、原子力発電に反対であった。

 専門家によれば、フィンランド国民の原子力発電に対する支持が急増している背景には、2001年1月の政府の原則決定に続き、2002年5月に議会が新規原子力発電所の建設を承認したことがあるとの見方を示している。議会決定直後に実施された世論調査結果でも、国民の過半数が新規建設を支持した。また、二酸化炭素排出量削減など環境面からも、温暖化防止に果たす原子力の役割が評価されたと分析している。(12月18日)

[英  国]

政府、原子力廃止措置機関の設立を盛り込んだエネルギー法案を提出

 英政府は2003年11月27日、「民生用原子力産業」、「再生可能エネルギー源」、「エネルギー市場と規制」の3分野を柱とするエネルギー法案を議会に提出した。同法案の民生用原子力産業の項目には原子力廃止措置機関(NDA:Nuclear Decommissioning Agency)の設立が盛り込まれている。政府は2003年6月24日にNDAの設立に向けた法案を発表し、その後の意見聴取を経て、今回議会へ提出することとなった。NDAは、軍事用を除くこれまでの原子力開発プログラムの実施にともなって発生した廃棄物の処理や施設の除染・デコミッショニング等の債務整理を行う公的機関で、2005年4月までに設立される予定。

 英国における原子力債務は、以下の2つに分けられる:

  1. 1940年代から1960年代にかけて政府の原子力研究開発計画を支援するために建設された施設、および関連して発生した廃棄物、使用済み燃料など

  2. 1960年代から1970年代に設計・建設された26基のマグノックス炉および付随する廃棄物など

 第一の項目には、英原子力公社(UKAEA)が保有するドーンレイ、ウィンズケール、ハーウェル、ウィンフリス等のサイト、ならびに英原子燃料会社(BNFL)のセラフィールド、ドリッグ、カーペンハーストの3サイトなどが含まれる。セラフィールド・サイトの酸化物燃料再処理工場(THORP)とMOX加工施設(SMP)は原子力債務ではない商業的資産だが、それらを除いた各サイトのほとんどの施設はすでに閉鎖され廃止措置がスタートしたり、閉鎖が決定されている。そのほとんどが原型炉や試験炉、小規模な核燃料サイクル関連施設など。

 マグノックス炉は、原子力開発初期段階の1950〜1960年代に開発された炭酸ガス冷却型炉(GCR:Gas Cooled Reactor)で、BNFLが所有している。英国が世界に先駆けて実用化したマグノックス炉は、軽水炉と比べて経済性が低く、老朽化も進んでいることから、マグノックス燃料製造施設やマグノックス燃料の再処理施設なども含めてすべて閉鎖されることになっている。

 原子力債務に分類される施設は、政府の計画に従って開発されたという経緯があるため、廃止措置も一貫して政府の責任とされていた。こうしたことから政府は2001年11月28日、原子力債務を整理する意向を表明し、NDAの設立へ向けた動きが本格化した。

 NDAは省庁から独立した公的機関として位置付けられ、BNFLとUKAEAが保有する施設がNDAに移管される。NDAはそれらのサイトを直接管理するわけではなく、実際の施設運営はこれまで通りBNFLとUKAEAが行う。NDAは長期的な事業計画を策定し、両社と管理契約を結び、規制当局と調整を行いながら廃炉・除染の計画を推進する。貿易産業省が2002年7月に公表した白書によると、2002年3月段階で廃炉・除染にともなう債務(施設の廃止措置・解体費用、処理・貯蔵・最終処分費用、環境復旧費用など)は、約479億ポンド(BNFL約405億ポンド、UKAEA約74億ポンド)と試算されている。このうち、すでに発生している原子力債務は199億ポンドで、今後150年間で債務総額は約479億ポンドに達する見込みである。しかしこれらは予測値に過ぎず、条件を変えれば今後大きく変化する可能性もある。(11月27日)

[イタリア]

スカンツァーノ・ヨニコへの放射性廃棄物処分場建設を決定

 イタリア政府は11月13日、スカンツァーノ・ヨニコ地点(バジリカータ州マテラ県)を国営放射性廃棄物処分場として選定したと発表した。

 事業主体である原子力発電所管理会社(SOGIN)は、イタリア地質調査所の調査結果に基づき、国際原子力機関(IAEA)のガイドラインにしたがって、イタリア原子力・代替エネルギー資源研究開発委員会(ENEA)、大学などとともに立地選定を進めてきており、2005年にも着工、2009年から操業開始する予定である。

 スカンツァーノ・ヨニコ地点は、面積10km2、厚さ150mの岩塩層からなるきわめて安定した地層で、その下に厚さ700mの粘土層がある。SOGINによれば、処分容量は約8万m3で、約5万5000m3の中・低レベル廃棄物と病院、医療機関、産業、研究機関などから年間500トン程度発生する廃棄物が処分されるほか、再処理に伴い生じた約8500m3の高レベル廃棄物と使用済み燃料約350トンが最終処分場の建設まで中間貯蔵される。

 ただ、地元の反対は激しく、政府と州の交渉が決裂し、高速道路や国道の封鎖、商店、銀行の休業などの抗議行動が相次いでおり、バジリカータ州議会もイタリア憲法裁判所への提訴に同意するなど、今後も紆余曲折が予想される。

 イタリアの原子力開発政策は、1986年4月のチェルノブイリ事故によって180度転換した。

 それまで同国では、1982年3月に閉鎖されたガリリアーノ原子力発電所(BWR、15万kW)のほか、カオルソ(BWR、86万kW)、トリノ(PWR、26万kW)、ラティナ(GCR、15万3000kW)の3基が運転中だったほか、1982年の国家エネルギー計画では、モンタルト・ド・カストロに2基と他の3地点(ピエモンテ、ロンバルディア、プグリア)に合計6基の原子力発電所建設が盛り込まれていた。

 しかし、チェルノブイリ事故による国民の懸念の高まりに伴い、1987年11月に実施された3つの国民投票を受け、燃料サイクルも含むあらゆる原子力部門の活動の5年間の凍結が決定され、1987年12月には政府経済計画委員会(CIPE)がモンタルト・ド・カストロ原子力発電所とピエモンテ原子力発電所の建設を中断。同12月のラティナ原子力発電所の閉鎖に続き、1990年7月にはカオルソ、トリノの両ユニットも閉鎖された。さらに、ウラン濃縮施設(EUREX)、燃料加工施設(IFEC)、再処理施設(ITREC)およびカサッチア・エネルギー研究センターのプルトニウム施設などの燃料サイクル関連施設も閉鎖され、現在に至るまで、イタリアの原子力発電・燃料サイクル部門の活動は中断されたままである。

 現在、イタリアの原子力政策は、デコミッショニングなどバックエンドに焦点があてられている。

 1999年3月の電力市場自由化・国営電気事業民営化の一環として、原子力発電所を所有・運転していたイタリア電力公社(ENEL)の原子力発電所は、全て新たに設立された原子力発電所管理会社(SOGIN)に移管された。SOGINはイタリア経済・財務省が株式を保有する国営企業で、イタリアの原子力発電所および燃料サイクル施設のデコミッショニング、バックエンド、原子力発電所および原子力施設の資産評価、原子力分野のコンサルティング・サービス――などを行っている。

 イタリア政府(産業省)は1999年12月、@原子力発電所や燃料サイクルで貯蔵されている液体・固体廃棄物の国営放射性廃棄物処分場へ輸送するための処理・コンディショニング(〜2010年)、A国営中・低レベル廃棄物処分場(ここでは最終処分されるまで高レベル廃棄物も中間貯蔵される)の立地選定(〜2010年)、B原子力発電所のデコミッショニング(〜2020年)――などを骨子とした原子力発電所および燃料サイクル施設の閉鎖に伴う戦略計画(総額:31億ユーロ)を策定した。

 しかし、イタリア環境保護庁(ANPA)が原子力施設の早急なデコミッショニングを求めたため、2001年5月には産業省も計画を前倒しし、SOGINも4段階からなる新たなデコミッショニング計画をとりまとめた。同計画の内容は次の通りである:

  • 第一段階(2001年〜2005年半ば):国営放射性廃棄物処分場の立地選定、原子力発電所の二次系および低汚染部の解体撤去、運転廃棄物のコンディショニング、許認可手続き等
  • 第二段階(2008年〜2009年): 最終的な解体撤去に向けたモックアップ試験、国営放射性廃棄物処分場の建設
  • 第三段階(〜2020年): 原子力発電所の一次系の解体撤去、国営放射性廃棄物処分場への輸送と埋戻し

 この計画は国営放射性廃棄物処分場がスケジュール通りに操業開始できなければ根底から崩れるため、今回、地元の強い反対にも関わらず、SOGINは、「テロ行為や事故、自然災害のリスクの高まりを考えれば、集中処分場は不可欠」と処分場建設に強い姿勢をとっている。

 現在、イタリアは表面的には脱原発を達成したかのようにみえるが、実際にはフランス(同国の電力の80%近くが原子力発電)から大量の電力を輸入しており、電力需給の逼迫や電力価格の上昇など多くの弊害に悩まされている。

 事実、イタリアでは総発電設備容量の75%が輸入石油と天然ガスを燃料とした化石燃料火力であるため、欧州連合(EU)ではEU平均の1.6倍と最も電気料金が最も高い(フランスと比べると3倍、スウェーデンだと4倍)。

 とくに、毎年、電力需要の14%〜18%をフランスの原子力発電所に頼っており、電力輸入を安定的に確保するため、イタリア電力公社(ENEL)が外国の発電設備(とくに原子力発電所)を買収できるようにするための法案も議会に提出されているのが現状で、1986年からの脱原発以来、イタリアは、電力コストが年間70億ユーロも余分にかかっているとの試算もある。(11月13日)

[チェコ]

貿易・産業省、テメリン原子力発電所の増設を含むエネルギー政策の草案を策定

 M.ペシナチェコ貿易・産業相は、チェコの週刊誌「TYDEN」(This Week)のインタービューに対して、2003年6月に貿易・産業省(MTI)がとりまとめた今後30年間を対象とした6つのエネルギー・シナリオのうち、テメリン原子力発電所への2基のユニットの増設を含む「グリーン・シナリオ」が最も望ましいとの見解を明らかにした。この

 7つのエネルギー・シナリオは、@ホワイト(現行のエネルギー政策を維持)、Aグリーン(褐炭生産量を制限、再生可能エネルギーを助成、2基の原子力発電所を新規建設)、Bブラック(石炭輸入を拡大)、Cレッド(天然ガス輸入を拡大)、Dブルー(原子力発電所建設を促進)、Eイエロー(原子力発電所建設を大幅に促進)−−の6つ。「グリーン・シナリオ」では、具体的な炉型等については特定されていないが、欧州加圧水型炉(EPR)が最有力候補とみられている。

 貿易・産業省のシナリオについては、同国のエンジニアリング企業であるテボディン社が環境影響評価(EIA)を実施。2003年10月に公開された環境影響評価結果によれば、「今回、評価されたオプションの中では、原子力発電が最も環境影響が小さい。褐炭と石炭(瀝青炭)は最悪である」とされている。この結果は、現在、チェコ環境省(ME)による評価が行われている。(11月)

[北朝鮮 − KEDO]

朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)、北朝鮮への軽水炉供給事業を1年間凍結

 朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)は11月21日、北朝鮮への軽水炉建設事業を2003年12月1日から1年間停止すると正式に発表した。

 同時発表されたKEDO理事会(米国、韓国、日本および欧州連合:EUが理事国)の声明によれば、「北朝鮮が軽水炉建設事業を継続するのに必要な条件を満たしていない」ことが理由。軽水炉供給事業の再開については、2004年中にあらためてKEDO理事会で検討されることになるが、米国などは完全な事業の中止を主張しており、理事会の意見が一致するかどうかは微妙である。

 KEDOの軽水炉供給事業は、1994年10月の「米朝枠組合意」1と1995年12月に北朝鮮とKEDOの間で調印された「軽水炉供給契約」2に基づくもので、1997年8月から 北の咸鏡南道(ハンギョンナムド)新浦(シンポ)市・琴湖(クムホ)サイトで敷地造成工事がスタート。2001年9月には、北朝鮮から建設許可が発給され、サイト掘削工事が始まり、その後、2002年8月には原子力発電所の建設工事が着工(原子炉建屋のベースマット・コンクリートの打設)されていた。

 2003年11月現在、建設工事進捗率は34%。すでに、総工費46億ドルのうち約15億ドルが投じられており、日本も負担額10億ドルのうち約3億ドルあまりが国際協力銀行を通じて融資されている。

 今回の軽水炉供給事業凍結の原因となったのは、「北朝鮮が軽水炉供給事業を継続するのに必要な条件を満たしていない」(KEDO)のが理由。北朝鮮は2003年2月に平安北道(ピョンアンプクド)・寧邊(ヨンビョン)の出力5000kWの黒鉛炉を再起動したほか、9月には核兵器級高濃縮ウラン生産を行った事実が明らかになっていた。

 一方、北朝鮮は11月6日、建設不履行に対する損害賠償(電力損失補償)を要求。「建設現場にある設備、資材等の搬出を認めない」とするなど大きく反発。これに対して米国も、「すべての事の発端は北朝鮮が米朝枠組み合意の約束を破ったことにある」(国務省)と反論するなど対立姿勢を強めており、2003年内にも開催が予定されている6ヶ国協議への影響も懸念される。(11月21日)


1) 北朝鮮の核拡散防止条約(NPT)からの脱退表明(1993年3月)を受け、1993年6月、米国のカーター元大統領と北朝鮮の金日成主席(当時)の会談を経て、1994年10月に「米朝合意枠組」が署名された。同枠組は、@北朝鮮はNPTにとどまるほか、IAEA保障措置協定上の義務履行を通じた核開発の検証、寧邊(ヨンビョン)と泰川(テチョン)に建設中だった出力5000kWと2万kWの黒鉛炉の建設を中断する、A米国は国際コンソーシアムを通じて、合計出力200万kWの軽水炉を北朝鮮へ供与するとともに、初号機が完成するまで年間50万トンの重油を供与する。

2)「米朝合意枠組」に基づき、1995年3月、米国、韓国、日本の3ヶ国が「朝鮮半島エネルギー開発機構設立協定」に署名。1995年12月には、KEDOと北朝鮮との間で「軽水炉供給契約」が締結され、北朝鮮への出力100万kWの軽水炉2基の供給、軽水炉完成後、北朝鮮が20年間で無利子返済(3年の据え置き期間を含む)することが合意された。また、軽水炉供給契約の実施細目を定めた@特権免除等、A輸送、B通信、C労働力、D用地、E債務不履行、F訓練、G品質保証――の8つの議定書がそれぞれ締結されている。なお、軽水炉の総工費46億ドルのうち、韓国が32億2000万ドルを、日本が10億ドル、EUが8000万ドルを分担することになっていた。

【終わり】


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