[諸外国における原子力発電開発の動向]
主なできごと (2003年12月中旬〜2004年1月中旬)

USEC、2010年の操業開始めざしてパイクトンに商業ウラン濃縮工場を建設

新型遠心分離技術の実証試験施設もパイクトンで2005年に運転開始

 USEC社は1月12日、新しい遠心分離法ウラン濃縮工場(濃縮能力:3500トンSWU、総工費:15億ドル)の建設地をオハイオ州パイクトンに決定したと発表した。

 USEC社は、2010年の操業開始をめざし、今年8月にも米原子力規制委員会(NRC)に商業ウラン濃縮工場の建設認可を申請する計画である。なお、パイクトンの新ウラン濃縮工場が完成するまでは、現在、米国唯一のウラン濃縮工場(ガス拡散法)であるパデューカ濃縮工場(ケンタッキー州、米エネルギー省:DOEからリース)が同社の生産拠点となる。

DOEは1960年代から総額30億ドルを投じて新型遠心分離法ウラン濃縮技術の研究開発を実施してきており、1985年には現行の遠心分離機を大幅に上回る性能を確認している。USEC社は2002年6月、DOEが開発した新型遠心分離技術の商業化などを骨子とした協力協定をDOEと締結。2002年12月には、DOEの遠心分離技術の研究開発拠点であるオークリッジ国立研究所との協力強化をはかるため、同研究所の管理運営を行っているUT-バッテル社と共同研究開発協定(CRADA)を取交わし、同研究所のK-1600施設をリースして遠心分離機の主要機器の製造および試験を実施している。

 パイクトンの商業ウラン濃縮工場に導入される新遠心分離技術(USEC社は、「アメリカン・セントリフュージ」と呼んでいる)は、現在、USEC社の主力であるガス拡散法ウラン濃縮技術(濃縮コストの半分以上が電気代)の約5%しか電力を必要としないなど経済性が高いのが特長。さらに、新型遠心分離機(実証機)の濃縮能力も1台あたり300kgSWUとライバル企業の現行機種(30kgSWU程度)を大幅に上回ると期待されている。

 今回、新しいウラン濃縮工場の建設が決まったオハイオ州パイクトンでは、2001年5月まで操業していたDOEのポーツマス濃縮工場(ガス拡散法、USEC社がリース)では、現在、除染作業等が進められている。今回、パイクトンが商業ウラン濃縮工場の建設地として選定されたのは、DOEの遠心分離技術の研究開発の施設・インフラを活用できること、もう1つの候補地だったケンタッキー州パデューカには近くに地震断層が存在すること、および雇用促進を狙ったオハイオ州と地元自治体が税制優遇措置を提案していること(商業ウラン濃縮工場の操業に伴い500人が雇用される)――などが理由である。

 なお、USEC社は2002年12月に新型遠心分離技術の実証試験施設(American Centrifuge Demonstration Facility)のパイクトンへの建設を決定しており、その後、2003年2月には、2005年の運転開始をめざして実証施設の建設認可をNRCに申請している。同実証施設は実機規模の遠心分離機240台からなるカスケード(リード・カスケード)を備え、商業ウラン濃縮工場の建設・操業に向けて、コストやスケジュール、パフォーマンスなどの評価を行うことにしている。(1月12日)


Copyright (C) JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. (JAIF) All rights Reserved.