[原子力産業新聞] 2001年7月12日 第2095号 <3面>

[フランス] ラアーグ周辺で白血病調査

放出物による発病は否定

フランス政府の委託で実施された最新の疫学調査で、「再処理工場など大規模な産業施設の近隣での白血病の集団発生は、過疎地だった地域に急速に人口が集中移動したことに起因した可能性がある」と示唆する結論が6月28日付けで明らかにされた。

今回の調査は、78年から92年を対象に実施された初回調査 (98年に公表) の担当者で、著名な疫学者であるA.スピーラ氏のチームが新たに対象期間を98年までに広げて実施したもの。同氏は今回初めて、コタンタン半島北部のラアーグ再処理工場近隣に居住する若年層には統計的に見て有為な白血病の増加があったことを認めている。しかし、その原因については「再処理工場からの放出物に関連するとは非常に考えにくい」と指摘しており、ラアーグ工場やそのほかの原子力施設による放出物の理論的な影響は実質的に検出できないくらい低いとの認識を表明した。

今回の報告書はまた、英原子燃料会社 (BNFL) のセラフィールド再処理工場近隣における小児白血病のわずかな増加と人工放射線による被曝との関連性に関する10年以上にわたる研究成果に言及。英国の調査も両者の直接的な関連性を否定しており、「最も可能性の高い原因は離れた産業サイトに大人数の労働者が集中した際の住民混合」と示唆している点を強調している。今回の調査の概要は次の通り。

78年から98年の期間に対象地区に居住していた25才以下の住民すべてをグループ分けして実施。対象地区としてはラアーグ施設から10km以内、10kmから20km以内、20kmから35km以内の3種類を特定し、対象地区での実際の白血病発生件数を統計的に予想される発生件数と比較した発生率 (SIR) を算出した。

35km以内全体で見たトータルの数値は予想される理論的な発生件数36.93に対して実際の発生件数が38と有為な差異は認められなかった。しかし、10km圏内に絞ると予想値の2.3件に対して実際値が5件になったほか、5才から9才までのグループでは予想値0.47件に対して実際の発病件数が3件であったことから、SIR は最も高い6.38倍になっている。15才以下の子供の中で発生した白血病は多くが急性リンパ芽球白血病であるため、さらなる調査やモニタリングはこれに対象を絞って行うべきである。

環境放射線に関する調査の結果、コタンタン半島北部の原子力施設からの放出物による被曝がボーモン・アーグ郡における白血病の検出し得る増加に結びつくとは非常に考えにくい。

ディッキンソンおよびパーカー両氏による英国カンブリア州での小児白血病および非ホジキン性リンパ腫に関する研究では、近年になって発病率と住民混合との関連性が定量化されているが、この関連性は1才から6才までの子供の急性リンパ芽球白血病については一層強いことがわかっている。90年代にはボーモン・アーグ郡という特定の地域でラアーグ工場のほか大型の関連施設が複数建設中であり、劇的に激しい人口の流入があった同地域で急性リンパ芽球白血病の増加があったという点で、決定的とは言えないまでも両者が関連している可能性は否定できない。


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