[原子力産業新聞] 2001年9月20日 第2104号 <2面>

[原子力安全委員会] 被ばく医療分科会、ヨウ素剤投与めぐり議論

原子力安全委員会被ばく医療分科会の第2回ヨウ素剤検討会 (主査・山下俊一長崎大医学部教授) が7日開かれ、ヨウ素剤予防投与の必要性について審議を行った。

この日はまず、ヨウ素剤投与の対象者について委員から基本的な考えが示され、投与対象者として住民に加え、防災担当者や原子力施設従事者が予防的に服用するケースについてもその必要性が指摘された。年齢などによる制限に関連しては、「発達途上の新生児や乳幼児に対しては投与量を少なくして連用を行うべきでない」とする考えも述べられた。チェルノブイリ事故に見られるように放射性ヨウ素による小児甲状腺がんリスクも事故時の年齢が若いほどリスクが高いことが認められることから、「40歳以上の成人が甲状腺がんリスクを低減する目的でヨウ素剤を服用する必要はない」などの意見もだされた。

また、ヨウ素剤は放射性ヨウ素以外の放射性物質による内部被ばくや外部被ばくには効果がない点などの周知が必要だとされたほか、ヨウ素剤予防投与の時期についても放射性ヨウ素被ばくのリスクの高い集団に対しては予測線量に基づき予防投与を考慮することや、事前に周辺住民などに配布しておくことの困難さなども指摘された。

この後、こうした論点をもとに自治体からの出席者らを交えて委員の間で様々な意見が交わされた。

同検討会は、放射性ヨウ素の異常放出の際、施設周辺住民や従事者が受ける甲状腺被ばくを低減するための医療介入としてのヨウ化カリウム製剤投与に関する問題を詳しく検討する専門家会合。

7月に改定された防災指針でうたわれた緊急被ばく医療体制の実効性を一層高めようとするねらいから設置されたもの。


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