第29回日韓原子力産業セミナー原産協会代表団
概要報告

平成19年11月12日
(社)日本原子力産業協会


日韓セミナーを10月29-30日、釜山で開催

 日本原子力産業協会は、第29回日韓原子力産業セミナーへの参加と韓国の原子力関係施設を視察する目的で、10月28日から11月2日まで、第29回日韓原子力産業セミナー原産協会代表団(団長:服部拓也・原産協会理事長、合計27名)を派遣しました。


原産代表団(中央が服部団長)と韓国原産事務局等メンバー

 日韓セミナーは、日本原子力産業協会と韓国原子力産業会議が、相互の情報・意見の交換により両国の原子力産業の発展に資するために、1978年以来、両国で毎年交互に開催しているもので、第29回セミナーは、10月29日、30日の2日間、韓国の釜山で開催されました。セミナーには、韓国から韓国電力公社、韓国水力・原子力(株)(KHNP)、韓国電力研究所、韓国原子力研究所、斗山重工業(株)等から合計170名が参加しました。

 開会セッションでは、両国の代表挨拶に続き、KHNPの金鍾信社長と原産協会代表団の服部団長が、両国の原子力開発の現状について基調講演しました。

原子力設備利用率、2000年以来7年連続で90%台を維持

 韓国側の基調講演では、韓国が現在20基、1,772万kWの運転中の原子力発電所を有する世界第6位の原子力発電国に成長したこと、原子力の設備利用率が2000年以来、7年連続で90%台という好調な運転実績を誇っていること、中低レベル放射性廃棄物処分センター(最近、正式名称を月城原子力環境管理センターに決めたとのことです)のサイト準備工事が始まっていること、韓国国産炉(OPR1000、APR1400等)の開発を進めていること、世界的な原子力ルネサンスの潮流の中で、韓国自身もアジア諸国の原子力開発や欧米先進国への原子力機器輸出に積極的に関与していく方針であることなど、韓国の力強い原子力開発への取組が表明されました。

原子力発電所の平均設備利用率の推移
 '96'97'98'99'00'01'02'03'04'05'06
韓国87.587.690.288.290.493.292.794.291.495.592.3
世界72.972.273.975.676.478.978.976.578.879.379.5
(出典:KHNP発表資料)


地震の影響と耐震設計や日本原子力技術協会の活動を紹介

 セミナーでは、原子力発電所の設計・製造・建設、放射性廃棄物と環境、原子力発電所の経年管理、原子力発電所保守の人材養成、原子炉運転経験のフィードバックと保守の最適化、中小型炉開発等のセッションが組まれ、両国の専門家による発表と意見交換が行われました。

 今回のセミナーでは、今年7月に起きた柏崎刈羽原子力発電所における地震の影響と耐震設計についての関心が高いことから、特別のセッションを設けて、東京電力の専門家2名による講演と討論が行われました。また、2005年4月に発足した日本原子力技術協会から2名の専門家が、運転経験情報の共有や運転・保守の改善等に関する活動について講演し、原子力発電の発展における同技術協会の役割をアピールしました。

韓国女性の活躍ぶりがクローズアップ

 セミナー初日の開会セッションでは、「原子力を理解する韓国女性の会」(WIIN)のナ・ソウォン会長から特別講演が行われました。WIINは、原子力関係企業・機関で働く女性の団体組織であるWIN-Korea(韓国原子力女性の会)とは別組織で、1994年に釜山で旗揚げし、現在、韓国内に1万人の会員と16の支部を持っています。ナ会長からは、文化活動を含めたWIINの多彩な活動が紹介されました。

 また、人材養成のセッションでは、韓国原子力研究所のミン・ビョンジョ博士(女性)から、この夏に韓国で実施された世界原子力大学の夏期研修(WNU/SI)について、大変示唆に富む講演が行われました。今夏の世界大学はミン博士が中心になって取り組まれたもので、前述のWIIN活動とあわせて韓国における女性の活躍ぶりがクローズアップされました。

斗山重工業は米国に取替え用蒸気発生器等を製作・輸出

 原産協会代表団は、セミナー終了後、斗山重工業(株)昌原工場、月城原子力環境管理センター、蔚珍原子力発電所を視察しました。


     AP1400模型の前で説明を受ける代表団メンバー
 斗山重工業(株)昌原工場では、鋳鍛造工場、タービン工場、原子力工場を視察しました。斗山重工業は、米国のセコヤー1、2号機、ワッツバー1号機向けの取替え用蒸気発生器、インディアンポイント2、3号機、パロベルデ1〜3号機向け取替え用原子炉圧力容器上蓋等の製作・輸出をしています。鋳鍛造工場は世界最大級の13,000トンプレスを備えており、大型原子力用のタービンローター等の製作が可能です。同社は海水淡水化設備の製造では世界の46%のシェアを誇っているとのことでした。

月城原子力環境管理センター、11月9日に大統領臨席のもと起工式典開催


   処分場サイト模型:中央はPRセンター、奥左手から右へ
   新月城発電所、地下処分場入口、管理施設
 月城原子力環境管理センターは、サイト掘削工事が進捗中で、事務本館も完成し、11月9日には盧武鉉大統領の臨席のもとに起工式典が開催されるとのことでした(後注:実際に開催されたとの報道がありました)。放射性廃棄物処分場サイトの選定作業は1986年以来続けてきたもので、2005年11月、住民投票の結果を受けて、約20年ぶりに慶州への立地が決定されました。同センターは、新月城原子力発電所サイトに隣接して海岸沿いに立地しています。住民の希望で地下洞窟方式を採用し、地下約100mのサイロに廃棄物を埋設する計画で、第1期工事(10万ドラム缶)は2009年12月に完成の予定です。月城原子力環境管理センターは中低レベル廃棄物の処分のみを対象にしたもので、使用済み燃料の取り扱いについては近いうちに国が方針をまとめることにしています。

蔚珍原子力発電所、18ヶ月サイクル運転を採用


      (韓国水力・原子力(株)パンフレットから抜粋)
 蔚珍原子力発電所は、1〜2号機(仏製、1988、89年運開)、3〜6号機(韓国国産OPR1000炉:1998、99、2004、05年運開)の6基(合計出力590万kW)からなる韓国でも新しい原子力発電所です。同発電所は1996年以来、18ヶ月サイクル運転を採用しています。サイト内の小高い丘の展望台からの眺めは壮観でした。約2km離れた近くのサイトでは、新蔚珍原子力発電所1〜2号機(韓国国産APR1400)の建設計画が進行中との話でした。原産協会代表団は、見学者用ギャラリーが整備されている5号機(タービンホール、中央制御室、使用済み燃料プール)を見学しました。インフォメーションセンターも含め、新しくきれいで印象的でした。なお、この地域は赤松林があり、シーズンには地元の人によるマッタケ販売の露店が出るそうです。

以 上

お問い合わせは、国際部(03-6812-7109)まで