[JAIF] 国による事業者の自主管理に対する指導と科学的・合理的な規制の促進について(要望)
−原子力発電の健全な推進基盤の構築にむけて−
 当協会は平成19年6月1日に公示されました「実用発電用原子炉の設置、運転等に関する規則及び研究開発段階にある発電の用に供する原子炉の設置、運転等に関する規則の改正案に対する意見募集」について下記のとおりパブリックコメントを提出しています。

国による事業者の自主管理に対する指導と科学的・合理的な規制の促進について(要望)
−原子力発電の健全な推進基盤の構築にむけて−


経済産業省原子力安全・保安院殿

平成19年6月30日
(社)日本原子力産業協会

 社団法人日本原子力産業協会は、国の指示に基づき電力各社が行った総点検結果及び再発防止対策、並びにそれらに対する国による評価、行政処分及び今後の対応を踏まえ、平成19年5月28日、原子力発電の健全な推進を図るための基盤構築方策について会長声明を公表するとともに、電気事業連合会をはじめとする関係機関に提言を行ったところである。
 この提言で、(1)安全管理、品質管理の原点は現場にあり、現場第一線の一人ひとりが、使命感、責任感及び誇りを持って日々の仕事にあたることが重要であること、(2)安全・品質レベルの向上は事業者の自主管理の徹底と国の科学的・合理的な規制によって達成されること、(3)国による規制は、事業者の努力と創意工夫を促し、事業者による自主管理が徹底し充実する観点から行われるべきであること、を基本的考え方としており、この考え方は我が国の原子力の安全の確保と健全な発展を願う者の共通の認識と考えている。

 然るに、今般の意見募集案件を上記提言に照らしてみると、  
□ 改正案では、作業手順書やプラントメーカーの技術情報の取り扱いなど、詳細な内容まで省令に規定するものとなっているが、これらは既に現行の実用炉則に基づく保安規定において、事業者が自主的に品質保証計画の中で定めることとなっているものであり、上記(3)の基本的考え方から、目指すべき規制の方向からずれるものであると評価される。  
□ 改正案では、安全上の重要度に関係なく一律に規制するような表現があるが、上記(2)の基本的考え方にある、「科学的・合理的規制」という観点から適切性を欠くものと評価される。  
□ 上記の問題を含んだまま、改正案に基づき安全管理検査等が行われた場合には、現場第一線に無用な混乱と過大な負担を強いることになると懸念され、上記(1)の基本的考え方から、原子力現場での安全確保にとって逆効果となる。  
□ なお、行政手続法第39条では「公示する命令等の案は、具体的かつ明確な内容のもの」と定められているが、今回の意見公募の内容は、「改正案の概要」とされており、記載事項も具体的かつ明確なものではないものも見受けられるため、今回の意見公募の結果を踏まえ、改めて改正案自体に係る意見公募がなされるべきものと考える。

 以上のように、今回の改正案は、現場実態の理解のうえに立って事業者の自主的な取り組みを促進するとともに、事業者の自主保安の取り組みと相俟って実効あるものとなるべき規制には程遠いものとなっていると思料され、我が国の原子力の健全な発展を願う当協会として看過できないものである。

 ついては、事業者の自主管理の重要性を再確認し、意見公募にあたっては実効性のある規制となるよう関係事業者と事前に十分な意思疎通を図るとともに、当協会の「原子力発電の健全な推進基盤の構築のための提言」の趣旨を十分にご理解のうえ、前向きかつ建設的な改善措置が採られることを要望する。

以 上

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