[原子力産業新聞] 2001年4月19日 第2084号 <2面>

[ITER] 国内検討結果まとまる

建設協議にむけ「十分な技術基盤」

原子力委員会核融合会議の下部組織である ITER/EDA 技術部会が国際熱核融合実験炉 (ITER) の最終設計報告書案に対して進めてきた検討・評価作業が終了し、同案は概ね妥当だとする結果がまとめられた。近く ITER 所長に伝えられる。

今回、評価の対象となった設計案は2000年1月に「ITER-FEAT (コンパクト ITER) の概要設計報告書」として承認された設計に基づきその詳細化が進められてきたもの。最終設計報告書案は2月末にカナダで開かれた ITER 理事会に提出され、各極が同報告書案を評価することが決められていた。

ITER/EDA 技術部会は、昨年の概要設計報告書から新しく進展が見られた部分や当時の報告書に我が国が指摘した点を中心に、最終報告書案の評価を行った。

概要設計で新たに示されていた技術的指針は、(1) 誘導方式でエネルギー増倍率 (Q 値) が10以上で、300〜500秒の長時間燃焼を達成すること (2) Q 値が5以上で非誘導電流駆動方式の定常運転を実証すること (3) 自己点火条件の可能性も排除しない (4) 超伝導コイル、遠隔保守機器などの工学技術を実証すること (5) 高熱負荷機器等の炉工学機器試験、原型炉用ブランケットモジュールの試験を行う (平方メートルあたり、平均中性子束0.5メガワットで積算中性子照射量0.3メガワットa) −など。

同技術部会は評価作業の結果プラズマ性能について、エネルギー増倍率 (Q 値) が10以上の誘導運転と必要なパルス長が実現可能であるとともに、Q 値が5以上の非誘導電流駆動方式の定常運転も必要なデータが整備されつつあるとの判断を示した。平均中性子束や積算中性子照射量を確保できる技術的要件も満たしているとして、「プラズマ性能や運転シナリオと整合した設計」だと評価した。

一方、安全性の面でも、最終設計案は核融合固有の安全性や実験装置としての柔軟性を維持することを考慮されているとしたうえで、「安全確保の原則に基づいた放射性物質の閉じ込め性能を確保する」との基本的考え方を妥当だと判断。このほか、建設費用も各機器ごとの単価積み上げによる妥当な金額であるとし、建設スケジュールも適当なものだと加えている。

同部会はこうした判断から、最終設計案は建設への協議を開始するための十分な基盤を持つものだとの結論を示したうえで、今後 ITER の技術目標達成の可能性を高くするためには、定常運転モードや扱うトリチウムの量、材料等の放射化量、コスト評価の精度向上等の課題を指摘。これらが7月の ITER 最終理事会への最終報告書提出までに検討されるよう求めた。


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