[原子力産業新聞] 2001年10月26日 第2109号 <2面>

[NUPEC] PWR燃料の熱的安全性確認

沸騰遷移現象を究明

財団法人原子力発電技術機構は22日、東京・大手町の経団連ホールで第20回報告と講演の会を開催した。

来賓としてあいさつした佐々木宜彦原子力安全・保安院長は安全確保にむけた同機構の役割を評価するとともに、発足から約10か月を経た原子力安全・保安院の活動について「その活動が国民の信頼に足るものであるべき」などとして、リレーションシップ・マネージメントの導入など、規制機関としての陣容を名実ともに整えるため知識ベースの共有化システムつくりを含めて取り組みを進めていることを述べた。

続いて、高城眞専務理事が同機構の事業概要を説明した。同氏は耐震や燃料などの安全性、機器信頼性、広報、防災等に関する設立以来の事業活動をふりかえり、安全研究のなかで実施してきた炉心溶融実験では1999年に世界で初めて注水による炉心溶融の抑制に成功し、「装置固有の結果でないことを確かめるため、OECD が、より大がかりな試験を行う計画だ」などと紹介、実験的研究を通じて新たな知見が得られていることを紹介した。また、燃料部の上村勝一郎部長は BWR 燃料の沸騰遷移現象の熱的安全性に関して報告。沸騰遷移現象は、BWR 燃料間の冷却水の挙動に関するもので、出力の上昇等の変化によって、燃料被覆管が局所的に冷却水に接しない部分が生じて、その部分の温度が上昇する現象として知られている。現行の安全基準は同現象の発生を許容していないが、同機構ではその現象が発生しうる限界出力と、現行安全設計手法との安全裕度を確認、さらに同現象が発生、進行した場合の挙動研究について実験を行ってきた。その結果、現行の設計手法で十分に安全裕度が保てていることを実験的に確認できたことが報告された。また、沸騰遷移現象を意図的に発生させても被覆管の温度上昇は緩やかで、短時間に再び冷却水により熱伝達が再開し、温度上昇が抑制される (リウェット) ことが確認されたとの報告が行われた。


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