[原子力産業新聞] 2006年3月16日 第2323号 <3面>

[IAEA] イラン核問題で最終報告書 協議の場は安保理に

 6日からウィーンで開かれていた国際原子力機関(IAEA)理事会(=写真)は8日、エルバラダイ事務局長から出されていたイランの核開発問題に関する最終報告書を審議。同事務局長は理事会の閉幕を受けて、8日、この報告書を国連安全保障理事会に通達した。安保理は14日から非公式会合を開き、イラン核問題の実質協議に入る。

 エルバラダイ事務局長は理事会の冒頭演説の中で、IAEAが過去3年間、イランの核開発問題について集中的な調査を行ってきたと強調。この結果、核物質が核兵器等に転用された証拠は見つからなかったものの、イランの原子力計画の規模と性格には謎が残り、現在及び過去の原子力計画がどの方向を示しているのか疑問が残るとした。

 このため同事務局長は、「最大限の透明性を確保し、信頼を築くべき」と強調。イランの過去の開発計画の疑問を解き、信頼を再構築することによってのみ、同国の現在の原子力活動への信頼が得られるとして、これが、同国と国際社会の両者にとっての利益だと述べた。

 エルバラダイ事務局長は記者会見で、イラン問題の解決には「核問題、安全保障問題、経済問題、政治問題などの相互に関連した問題を包括的に解決するのが唯一の方法」だと述べた。国際社会が懸念しているウラン濃縮については、現在約20基の遠心分離機を運転中だとし、イランが濃縮の研究開発活動を凍結するよう求めた。一方で、「関係者が言葉を控えるよう求める」として、問題解決のためには「冷静なアプローチ」が必要だと強調した。


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