[原子力産業新聞] 2007年8月30日 第2393号 <3面>

バチカン法王庁 地球温暖化問題に配慮 原子力発電推進姿勢を鮮明に

ローマ・カトリック教会総本山バチカン法王庁のR.マルチノ枢機卿はこのほど、「原子力発電を有益なエネルギー源ととらえるべき」との考えを示し、話題となっている。

これは法王庁の「正義と平和評議会」議長であるマルチノ枢機卿が、バチカン・ラジオ(バチカン市国のラジオ放送局)の番組内で発言したもの。同枢機卿は、原子力発電が多くの環境論者の間で「持続可能でない上に危険なもの」ととらえられていることに疑問を提示。「人々や環境を守るための安全措置や、軍事利用防止のための保障措置がとられており、どうして原子力発電を禁止する必要があるのか」と述べ、原子力の平和利用推進を強く訴えた。

またイタリアを例に挙げ、「先入観や大惨事に対する恐怖から原子力発電を禁止するのは誤りであり、逆説的な結果を生む」とし、1986年のチェルノブイリ事故を受けて1987年以来原子力発電を禁止しているイタリアが、原子力大国であるフランスから恒常的に電力を輸入している現状を強く非難した。

バチカンは過去、核軍縮を支持し、核拡散に対して強く警告してきたが、原子力エネルギーの平和利用については余り論議してこなかった。しかし最近になってローマ法王ベネディクト16世が、核軍縮の重要性を訴えるだけでなく、「原子力の平和利用のメリット」に言及するなど、このところバチカンでは地球温暖化問題を考慮し、クリーンなエネルギー源として原子力発電を見直す傾向にある。

なおバチカンは、国際原子力機関(IAEA)創設以来の加盟国である。


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