「福島原発事故は防げた」米カーネギー財団が報告書

米国のシンクタンクのカーネギー国際平和財団は6日、東京電力と原子力安全・保安院が原子力安全に関する国際的な良好事例や基準、最新の安全確保対策に基づいて設計を改善していれば、福島原発事故は防げたとする報告書を公表した。

欧米ですでに取られている深刻な外部事象への対策や国際原子力機関(IAEA)が策定した洪水指針等に触れた上で、福島第一原発など日本の発電所でこうした対策が実行されなかった理由を分析。決定的な回答は出せないとしつつも、対策として最も重要なファクターが何であるかや、誰に事故の責任があるかに関するコンセンサスが日本には欠けているようだと指摘している。

同報告書によると、東電と保安院の津波リスク評価手法は少なくとも次の3点で国際的な基準から遅れを取っていた。すなわち、(1)1000年に1回という頻度の巨大津波が発電所周辺地域を冠水させていたという証拠に十分な注意を払わなかった(2)津波の脅威に関するコンピューター・モデリングが不適切だった。津波リスクが著しく過小評価されていることを示唆する08年の暫定シミュレーションに対し、東電は十分なフォローを行わず、事故の4日前に保安院に報告しただけ(3)保安院も東電のシミュレーションを審査せず、適切なモデリング装置の開発促進を怠った――である。

諸外国、特に欧州の国々では、原発の重要な安全システムは日本より厳重に防護されており、99年に仏国のルブレイエ原発で洪水により一部の電源を喪失する被害が出た後、欧州各国では堤防を高くするなど、規制当局が深刻な外部事象に対する発電所の防護策を強化。米国でも88年以降、米原子力規制委員会が各原発に対して、4〜8時間の完全な交流電源喪失に耐えられるよう要求しており、特に9.11以降はB5b対策と呼ばれるテロ対策要件を満たすための改善が行われた。

このほか、IAEAは2003年に原発での洪水対策について安全指針を策定。04年のスマトラ沖地震による津波でインドの原発が被害を受けた後はこれを改定するなど、津波リスクの評価と対策強化を促していた。報告書によると、日本の事業者もこうした事実を認識しており、東電も福島第一原発の防護策を改善することは可能であった。しかし、日本の方法論では津波の高さ評価に注意が集中するあまり、瓦礫の影響など他の要因を考慮せず、IAEAの指針を満たしていなかったとしている。

同報告書はさらに、潜在的な根本原因として以下の点を特定した。例えば、保安院は原子力促進の政府機関および原子力産業界のどちらからも独立の立場を有していなかったし、日本の産業界は耐震安全性に意識が集中し、それ以外のリスクを除外。官僚と事業者の縦割り構造によって、原子力当局者は外部の専門家から助言を得るのを良しとせず、原子力事業者の方でも、現場の知見の効果的な活用に失敗した可能性がある。そしておそらく、最も重要な点は、多くの関係者が過酷事故など起こるはずながないと信じていたことだと強調している。

報告書は最終的に、福島事故が提起したものについて分析。原子力発電についてこれまで知られていなかった致命的な欠陥を暴露したというよりも、外部からの圧力や良好事例の進展、そうしたプロセスを効果的に監督する規制当局などによって、発電所の安全性を定期的に再評価する重要性を改めて強調したことであると締めくくった。


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