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Vol.01 ドイツの脱原子力がもたらす、地球環境への悪影響

2015年12月24日

脱原子力 ドイツの実像
脱原子力 ドイツの実像

文|ベン・ハード  訳|石井敬之

候変動問題に対処する際、事実を否定する行為は、大きな害悪のひとつである。

こうした「事実の否定」は、さまざまな形をとって現われる。
2015年12月2日、国連気候変動枠組条約締約国会議へ初参加するために、私はパリに降り立った(もちろん私以外にも初参加の人間は大勢おり、私が最重要人物であったわけでもない)。私はシャルル・ドゴール空港から、低炭素技術展示会「La Galerie des Solutions」の会場へ急行し、気候変動に関するサイエンス分野のロックスターたちによる記者会見にギリギリ間に合った。ロックスターとは、トム・ウィグリー、ケン・カルデイラ、ケリー・エマニュエル、そしてジェームズ・ハンセンの4名である。うちハンセンも含めた3名は、今回のCOP21が初参加である。

が彼らをパリへと駆り立てたのか?

いまだに流布している、気候変動に関する科学的事実を否定する動きを牽制するためだろうか?
答えはノーだ。
今回彼らは、NGO団体「Energy for Humanity」の名の下に、地球温暖化対策の一部として原子力技術を認めさせることを目的に集まった。気候変動のサイエンスではなく、エネルギーに関する現前の事実を否定する風潮こそが、彼らをパリへ駆り立てたのだ。
彼らと私とは、「地球温暖化対策に有効なツールは無視しない」という共通のスタンスで一致している。原子力というツールに関して言うならば、私たちはその価値をはっきりと認識している。原子力の価値は、確固たる決意をもって原子力を推進している国/地域の例と、迂闊にも脱原子力へ踏み出してしまった国の例を比較すると、明らかである。
フィンランドのラウリ・パルタネンとヤンネ・コルホネンが著した『Climate Gamble』は、カナダのオンタリオ州にスポットを当て、原子力の価値を雄弁に描いている。人口1,350万のオンタリオ州は、温室効果ガスの排出がゼロに近い電力供給体制を確立している。2003年には総発電電力量の4分の1を石炭火力でまかなっていたオンタリオ州だが、2014年4月に石炭火力を全廃することに成功した。それを可能にしたのは、原子力などクリーン電源の設備容量拡大だ。
オンタリオ州での暮らしぶりは、わが母国オーストラリアのそれと大差ないのだが、オンタリオ州民が1kWhあたりのCO2排出量=50グラムで電気を供給されているのに対して、ほとんどのオーストラリア人は全く同じ電気を850グラム-CO2/kWhで入手しているのだ。
CO2フリーでクリーンな大気を望むのならば、原子力は、適切に配置された再生可能エネルギーと相まって、間違いなく役に立つ。スウェーデン、フランス、スイス、フィンランドと同様に、オンタリオ州の例はこの事実を明示している。発電分野のCO2フリー化は、地球温暖化防止という大規模で困難なチャレンジにおいて、不可欠な第一歩だ。発電分野は間違いなく対策が容易な分野なのである。

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