フォントサイズ:

金沢工業大学 学生主体の「プロジェクトデザイン教育」で、ものづくりの腕磨く

2015年5月11日

特集のロゴ(仮)
~工学部 電気系 電気電子工学科 大澤 直樹 准教授に聞く~

<自主性を重んじ、技術者として必要な実践力を育成>

大澤直樹准教授

大澤直樹准教授

 本学では「プロジェクトデザイン教育」を掲げ、チームラーニングで問題を解決していく方法を実践的に学ぶことを大切にしている。学生同士で意見を出し合ってそれぞれのアイディアを組み合わせ、成果を生み出していく経験を積んでいく。
 高校までの勉強と違い、大学での勉強というのは、答えを出す方法を考えることから始まる。ものをつくるためには何が必要でどう進めていけばよいか。ユーザーにとって何が問題でどう解決したらよいか。ユーザーに満足してもらうにはどうしたらよいか。こうしたことを考える「デザインシンキング」の手法を取り入れ、まずは充分考える時間を与えている。その結果として、学生たち自らアンケートやネット調査または現地訪問などでニーズを探ったり、インタラクティブな機能を持った発表ブースを使って実際に企業で働く人も交えた聴衆の前でスーツを着用して製品のプレゼンテーションを行ったりもする。
 こうした中で学生たちが自然と協力し合う雰囲気が生まれている。学生の自主性にまかせて教員はあまり関わりすぎず、必要な時だけヒントを与えながら導いていくような姿勢で臨んでいる。企業現場の実態と離れた従来の知識偏重型の大学教育を脱して、実社会で技術者に求められる技能、自発性や創造性、リーダーシップやチームワークなども身につけられるような教育をめざしている。
 このような教育方針が合致し、本学は2011年、工学教育の世界的組織「CDIO」に日本で初めて加盟した。CDIOは、マサチューセッツ工科大学とスウェーデンの3つの大学によって設立された教育フレームワークで、技術者教育の理念として「Conceive(考える)→Design(設計する)→Implement(実行する)→Operate(運用する)」を掲げており、現在世界で100以上の教育機関が加盟している。工学の基礎知識を習得した上で、実践的なシステムや製品開発に活かす力を伸ばすことを重視する方針は世界の工学教育で主流となってきている。

真:夢考房5245

夢考房

<充実のものづくり環境で、やる気をサポート>
 さまざまな切断機や溶接装置などを備えたワークスペース「夢考房」では、学生が自由にものづくり活動に取り組んでいる。ここでは専門技師がアドバイスを行ったり、学内インターンシップによる学生スタッフが運営に携わったりしている。作業が安全に行えるよう、各種講習会の開催やヒヤリ・ハット事例の展示などを行い、次に取り組む学生が学び合える仕組みを作っている。
 また学内では、インタラクティブなホワイトボードを使ってグループでアイディアをまとめていったり、3Dプリンタやポスター印刷用の大判プリンタを使って発表する資料を揃えたりすることもできる。英語でのプレゼンテーションに備え、基礎英語教育センターで集中してレッスンを受ける学生もいる。365日24時間開館している自習室もあり、学生が夜通し研究に励む姿も見られる。
 課外活動の一つである「夢考房プロジェクト」では、いろいろな学科からやりたいことを持った学生が集まってグループを作り、立案から、調査、設計、製作、分析、評価に至るまで、ものづくりにおける一連のプロセスを体験する。スケジュール予算の管理や組織運営に関しても学生が自主的に行っていき、企業が新製品の開発に取り組むのと同様の手順を踏んでいく。現在ソーラーカー、エコラン(省エネカー)、人力飛行機、ロボットなど14のプロジェクトがある。1リットルのガソリンでどれくらい走れるかを競う「本田宗一郎杯Hondaエコマイレッジチャレンジ全国大会」では本学が4連覇を達成中であるなど、各種コンテストでも好成績を挙げている。
 また、本学の「地域志向『教育改革』による人材育成イノベーションの実践」は、文部科学省が実施する「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業(COC)」に選定されている。金沢市や大学が所在する野々市市などの関連自治体や周辺住民と一緒になって、地域ブランドの創出や市内インフラの改善などに取り組み、魅力ある地域づくりに貢献する内容での研究も進めている。また、地域の企業で働く人たちも含めて電気主任技術者取得の講義を行ったり、夢考房を地域住民に開放したりする試みも行われている。

真:金沢工業大学5178

金沢工業大学

<実社会で求められる力を身に着け、企業で必要とされる人材育成へ>
 就職指導を通じて人生観を養っていくのも本学の教育目標であるため、教員側も力を入れている。教員の半数以上が企業出身者であることもあり、研究を社会で活かしていくことや企業で求められる人物像など、実践的なアドバイスもできる。
 教員ばかりでなく業界で活躍する専門家の最先端の声を生で聞く機会も作っている。原産協会との協力で毎年行っている次世代層対話集会などもその一環で、原産協会から国際的なエネルギー問題や高レベル廃棄物処分の現状について情報提供が行われ、それをもとに学生で議論しながら理解を深めていく取り組みを行っている。理系の学生でも「これまでメディアの偏った報道などで原子力に対して誤解していた部分が多かった」などの声が挙がっており、多角的な視点を身に着けることに役立っている。
 本学には、元気がよくて、何でもまずやってみようという気持ちをもった学生が多い。学生生活を通じてすぐに行動していける力を身に着け、社会に出てからもゴールを意識して物事に取り組む姿勢を発揮し、活躍の場を広げていく卒業生を多く輩出している。
(中村真紀子記者取材)