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IEAが「世界エネルギー見通し」最新版 原子力設備、40年に6割増

2014年11月21日

 国際エネルギー機関(IEA)は12日、長期的な世界のエネルギー動向を見通した「世界エネルギー見通し(WEO)2014年版」を公表した。今回、初めて予測期間を2040年まで延長するとともに、原子力発電の現状と展望を詳細に検証しているのが特徴。中国など4か国を中心に世界の原子力設備は40年までに6割増加するものの、発電シェアは歴史的なピークを迎えた約20年前より、かなり低いレベルに留まるとした。また、競争市場等でのリスクや使用済み燃料の増加、国民受容という大きな課題への取り組みに加え、40年までに約200基が閉鎖時期を迎えることから、1000億ドルを超える廃炉基金確保の必要性を呼びかけている。
 「WEO2014」の主要シナリオによると、世界の1次エネルギー需要量は40年までに37%増加する一方、供給側は、原子力と急速に拡大する再生可能エネルギーなどの低炭素エネルギー、停滞期に入る石油と石炭、および天然ガス――の4要素がほぼ同量になると予測。昨年、世界のエネルギー部門では多くの長期的不確定要素が浮上しており、各国の政策決定者はこうした長期的なストレス兆候をきちんと認識し、それと取り組むことから目をそらしてはならないと警告している。
 原子力の現状と展望
 主なトピックの1つに取り上げた原子力発電については、WEOは次のように分析した。
 2013年末に世界では434基・3億9200万kWの商業炉が運転中だった。総発電量におけるシェアは11%で、ピークだった1996年実績の約18%からは低下している。設備容量の80%以上はOECD諸国のもので、現時点で非OECD諸国のシェアは低い。しかし、現在建設中の7600万kW分のうち4分の3以上が非OECD諸国の計画であり、将来的な容量拡大の大部分はこれら諸国における設備が占める。
 新たなエネルギー政策が実行に移された場合のシナリオでは、世界の原子力設備は40年までに60%増の6億2400万kWになると予測されるのに対し、発電シェアは12%と1ポイント増加する程度。ここでは追加容量として3億8000万kWを加える一方、1億4800万kW分が閉鎖されると計算している。中国、インド、韓国およびロシアで設備容量の拡大が最も目覚ましく、中国で予想される増加分1億3200万kWは米国とロシアの既存設備を合計した容量よりも大きい。インドとロシアでもそれぞれ、3300万kWと1900万kW分増加する見通しだ。
 原子力の有用性
 国際的な燃料市場の混乱に原子力が関わる程度が限られているのに加え、信頼性のあるベースロード電源という役割からも、原子力はエネルギー・セキュリティを促進することが出来る。原子炉を新設する際の先行投資コストは高額で時に不明瞭だが、原子力は電力価格が安定しているほか、国際収支の改善に役立つなど、経済的な恩恵の提供が可能。世界全体の原子力設備容量が現在より7%低下するとした「低原子力シナリオ」では、原子力利用国のエネルギー・セキュリティ指標が悪化する傾向が見られており、国内のエネルギー源で需要を賄える率を主要シナリオと比較した場合、日本で13ポイント、韓国で6ポイント、欧州連合では4ポイント低下すると考えられる。
 原子力はまた、CO2の排出量削減に利用可能な限られたオプションの1つ。1971年以降、原子力によって現在の排出率で約2年分相当の560億トンのCO2排出が抑えられた。エネルギーの新政策シナリオでは40年までに4年分相当の排出量が抑制可能になると考えられる。
 原子力の抱える課題
 一方で原子力は大きな課題に直面しており、新たなエネルギー政策シナリオでは使用済み燃料の累積発生量が40年には現在の2倍以上の70万5000トンに到達する。最初の原子炉が運転を開始して60年が経過した現時点で、商業炉から出る高レベル廃棄物の永久処分施設を設置した国は未だ1つも無く、暫定的な貯蔵を続けている状態。これまでに原子力発電施設を保有していたすべての国に、これらの長期的な貯蔵で解決策を講じる義務がある。
 また、経年化した多くの原子炉が閉鎖時期に近づいており、13年以降40年までの間に約200基が閉鎖される計算。多くは欧州連合や米国、ロシア、日本の原子炉で、かなりの数の原子炉が新規設備でリプレースされるものの、産業界ではこのようなかつて無い規模の廃止措置を管理していく必要がある。IEAの見積では、これらの廃止措置コストは1000億ドルを超えるが、現時点で原子炉の解体・除染やサイトの復旧経験が比較的乏しいため、この額については非常に不明瞭な部分が多い。各国の規制当局や電力会社は、将来発生するこれらの経費をカバーするために適切な基金の確保を継続していく必要があろう。

お問い合わせ先:企画部 TEL:03-6256-9316(直通)