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IAEAの原子力中等教育事業に日本チームが貢献 ~ アジア諸国で実地指導 東京大学環境安全本部准教授 飯本武志

2015年6月5日

 国際原子力機関(IAEA)では、「アジア太平洋地域における支援持続と原子力機関のネットワーク化事業」(RAS/0/065、2012~2015年)の枠組みの中で、「中高生のための原子力・科学技術教育プログラム及び教材開発に関するミッション」が進行中である。目的は、原子力科学技術(NST)のほか、広く科学技術・工学・数学(STEM)に魅力を感じるような中高生教育プログラム策定と教材開発であり、これらを参考にして、東南アジア等の複数の国々で試験的授業を実施することである。これまでに、日本、米国、豪州、英国等から、政府機関や学術団体等が主催する教育実践、展示物の事例等が持ち寄られ、参加者間で情報交換されてきた。日本からは、文部科学省等による小中高生の放射線教育事業に長年参画している飯本が原子力人材育成ネットワークを通じて参加している。

霧箱観察のためのドライアイス準備(インドネシア)

霧箱観察のためのドライアイス準備(インドネシア)

 本事業の次のステップとして、試験的授業実施国として選ばれたフィリピン、インドネシア、マレーシア、アラブ首長国連邦(UAE)の4か国が、先進国の事例を参考にして、自国の教育パッケージを策定し、教育現場へ導入する準備を開始している。このミッションでは、各国の教育省関係者が活動を牽引し、原子力エネルギー分野の担当者が支援にまわる構図が特徴的である。

「はかるくん」実習(フィリピン)

「はかるくん」実習(フィリピン)

 このほど、独自の活動方針を決めたUAEを除き、フィリピン、インドネシア、マレーシアの3か国は、日本型の「放射線教育2時間カリキュラム」(1時間の座学+1時間の実習〈霧箱観察+放射線簡易測定器「はかるくん」による環境放射線測定〉)をほぼそのまま試験導入することとなった。このため、今年1月~4月、3か国がそれぞれ実施した高校教員育成セミナーに、IAEA公式派遣専門家として、日本から、飯本、掛布智久氏(日本科学技術振興財団)、高橋格氏(日本原子力文化財団)、高木利恵子氏(エネルギー広報企画舎)の4名が講師として招かれ、講義や実習の実践上の留意点等について直接に現地指導した。各国では、同セミナーの経験を基盤として、自国の事情に合う方法でより多くの学校に向けて放射線教育プログラム等を試験展開、浸透させるプロセスに移りつつある。

放射線講義の実演(マレーシア)

放射線講義の実演(マレーシア)

 IAEAでは中等教育段階での原子力・放射線・エネルギー教育が重要であるとして本プロジェクトをスタートさせたが、放射線教育に関して日本の関係者が長い期間をかけて積み上げてきた先進的な経験が、今回改めてIAEAならびに国際社会で高く評価されたといえる。このミッションは2015年末まで続く。