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原子力の自主的安全性向上、学協会規格・基準の役割でシンポ

2015年6月8日

 原子力の自主的安全性向上における学協会規格・基準の役割について考えるシンポジウムが6月4日、東京大学・本郷キャンパス(東京・文京区)で開催された。日本電気協会の原子力規格委員会の主催で、同委員会とともに原子力関連学協会規格類協議会を組織する日本原子力学会の標準委員会、日本機械学会の発電用設備規格委員会も議論に参加した。

パネルディスカッションの模様(日本電気協会提供)

パネルディスカッションの模様(日本電気協会提供)

 シンポジウムではまず、電力中央研究所原子力リスク研究センター所長のジョージ・アポストラキス氏が講演を行い、確率論的リスク評価(PRA)手法によるリスクマネジメント支援、規制に関する意思決定のあり方について説いた上で、米国学会におけるPRA標準の考え方などを述べ議論に先鞭を付けた。

 パネルディスカッションに移り、リスクマネジメントについて、日本機械学会の宮口治衛氏(IHI)は、「発電所のリスクを正しく把握、評価、合理的に低減すること」とした上で、ヒューマンファクターを課題として指摘し、また、資源エネルギー庁で原子力の自主的安全性向上に関するワーキンググループの座長を務める山口彰氏(東京大学教授)は、「リーダーシップと安全文化」をポイントとしてあげた。これらを受け、電気事業連合会原子力開発対策委員長の豊松秀己氏(関西電力副社長)は、経営トップが関与するリスクガバナンスを構築する上で、事業者が自主的に安全目標を設定していく必要からPRA手法の活用や、「プラント全体を俯瞰できる人材」の重要性について触れ、学協会に対し専門家集団としての活動に期待をかけた。

 アポストラキス氏が、「リスクマネジメントは合理的でなければならない。合理的であれば信頼が得られる」と述べると、豊松氏は、協力企業や地元とのコミュニケーションなどを通じた安全文化醸成の取組がリスクガバナンスの基盤となることを強調し、また、傍聴に訪れていた原子力委員長の岡芳明氏もマイクを持ち、「全体像を理解することが一番重要」とした上で、国民向けの理解活動や情報提供を行っていく必要を述べた。

 今後の学協会規格・基準の整備・活用について、原子力規格委員会の委員長を務める関村直人氏(東京大学教授)が問うと、日本原子力学会の宮野廣氏(法政大学客員教授)は、「津波対策にしても原子力と土木ではまったく考え方が違う」と述べ、他分野の学協会とどのようにコンセンサスを得ていくかを課題としてあげたほか、学術全体として知見収集に努めていく必要を訴えるなどした。