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原子力リスク研究センターがシンポ開催

2015年9月3日

NRRCsymposium 電力中央研究所の原子力リスク研究センター(NRRC)は9月2日、大手町サンケイプラザホール(東京・千代田区)でシンポジウムを開催し、2014年10月に、原子力発電の自主的安全性向上に資する研究開発拠点として発足した同センターの今後の活動や、リスク情報活用のあり方について、パネルディスカッションが行われた。
 パネルディスカッションの前半は、NRRCの活動に対する期待をテーマに行われ、モデレータを務めた尾本彰氏(東京工業大学特任教授)は、討論の成果を、(1)PRA(確率論的リスク評価)の向上と活用、(2)リスク情報が米国ほど活用されてこなかった反省、(3)PRAの質を高める研究、(4)リスク情報を役立てる基本思想の確立、(5)リスク評価とその結果への視点、(6)リスクコミュニケーション、(7)自由化の中の電力と原子力安全、(8)海外の知見の活用、(9)安全監視の仕組み――に整理し、後半の議論につなげた。
 新規制基準の策定審議にも関わった山口彰氏(東京大学工学系研究科教授)をモデレータとする後半のパネルディスカッションで、同氏は、「よりよい意思決定にはどういう視点が必要か」と問題提起した上で、リスク情報活用に関する構成要素として、法制度、メディア、安全文化、リスク研究の連環を図示し、これらを専門とする登壇者らに発言を求めた。
 法制度に関して、学習院大学法学部教授の櫻井敬子氏は、安全性を巡る意識のズレとして、(1)工学的安全性と社会科学的安全性、(2)事業者から見た安全性と住民から見た安全性――をあげた上で、他の防災分野と比較して、原子力では事業者と行政の役割が不分明と指摘した。
 さらに、食の安全・安心財団理事長の唐木英明氏は、消費者のゼロリスク志向、情報の非対称性などについて述べた上で、BSE問題を例に、政府による情報発信の不適確さを「最初からリスクをキチンと伝えるべき」と非難した。
 また、メディアの立場から、読売新聞編集局次長の長谷川聖治氏が「住民の側に立ったPRA活用」を訴えると、東北電力副社長の渡部孝男氏は、「不確実性の部分があまりにも大き過ぎる」などと、PRA導入が進まなかった経緯を述べた。東日本大震災時、女川原子力発電所の所長を務めていた同氏は続けて、重大事故に至らなかった要因として、伝統的にその時々の知見を収集しながら津波に対する安全性を確認し、対策を強化してきたことを述べた。
 「ネガティブな情報を伝える」ということについて山口氏が発言を求めると、原子力安全推進協会代表の松浦祥次郎氏は、原子力安全委員長を務めていた頃の安全目標検討を振り返り、人間の死亡確率と対比することに対し激しい非難があったことを述べ、リスク情報について理解を得る難しさを訴えた。
 パネルディスカッションには、原子力規制委員会委員の更田豊志氏も登壇し、規制におけるリスク情報の活用、社会とのコミュニケーション、安全性向上のインセンティブなどに関する議論もあったが、同氏は事業者側の自主的な安全性向上の取組とともに、NRRCに「リスクを共通言語として規制当局と透明性あるコミュニケーション」が図られることを期待した。