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ドイツ:廃止措置関連の全経費を事業者に負わせる法案が閣議了解

2015年10月16日

 2022年までに脱原子力の達成を目指すドイツ連邦政府は10月14日、原子力発電所の閉鎖に伴う廃止措置費や放射性廃棄物処分費など、追加的に発生する諸経費も確実に手当てするための法案を閣議了解した。発電所を運転・所有する事業者が廃業した場合に、これらの経費として公的資金が充当されるリスクを最小限に抑え、事業者の親会社に長期的な法的義務をすべて負わせるという趣旨。原子力発電事業者のE.ON社が昨年11月、分社化予定のUNIPER社に原子力発電事業を移管する計画を打ち出したことから、ドイツ国内では追加経費の負担を逃れるためではないかとの疑念が噴出した。これに対して政府が今年9月に、このような組織改革による閉鎖原子炉への責任回避を防止する法案を提案していたもので、E.ON社ではその後、原子力発電事業の移管を断念している。同法案ではまた、脱原子力政策のための資金調達を審査する委員会の設置を明記。同政策が経済的に進められるよう、追加発生する諸経費の調達方法を政府に代わって検証し、来年1月にも勧告事項を提案することになっている。

 同委員会はその審査過程において、政府が会計監査の専門企業に委託して実施した原子力発電事業者4社の資産に関する健全性検査(ストレステスト)の結果を参照する予定。会計監査企業の専門家は「廃止措置や廃棄物処分の追加経費は事業者達の合計引当金ですべてカバーできる」との報告書をとりまとめており、連邦経済エネルギー省(BMWi)が10月10日にその詳細を公表していた。

 同省のS.ガブリエル大臣はストレステストを実施した専門家の見解として、事業者達が関連規則に基づいて積み立てた引当金383億ユーロ(5兆2,700億円)は、専門家達が検証したさまざまなシナリオの範囲内にあり、現段階でこれ以上の資金調達措置を取る必要性はないとの結論を明示。同専門家によると、383億ユーロという引当金は国際的な平均見積り額より高い見積りに基づいて事業者達が準備したもので、他の国で1基あたりの解体費用が2億500万~5億4,200万ユーロ(282億~746億円)なのに対し、ドイツでは8億5,700万ユーロ(1,180億円)としていた。事業者達は関係コストとその上昇分、割引率を健全に試算した上で383億ユーロという数値を正確に算出しており、解体作業を効率化すればコスト全体で60億ユーロ(8,260億円)の節約が可能になると指摘している。

 同テストではまた、将来的な金利とコストの増加という前提条件を様々に変えて感度解析したシナリオも検証した。結果として必要額には290億ユーロ(3兆9,900億円)から770億ユーロ(10兆6,000億円)まで大きな幅が出たが、ガブリエル大臣も最高額を必要とするような極端なシナリオの可能性は低いとの認識を表明。「ここでは事業者達が長期的に大きな損失を被る前提となっているため、こうしたシナリオが現実化するとは考えていない」と述べた。また、事業者全体の市場純資産を大まかに評価した際、廃止措置と廃棄物処分用の引当金を差し引く前の段階で総額830億ユーロ(11兆4,000億円)に達しており、これらを廃止措置等に充てることも可能であることから、今回の報告書ではどのような場合においても、想定された最高額をカバーするのに十分という結論に至ったことを強調している。

 こうした結果に対して、ドイツで原子力発電所を運転するE.ON社、EnBW社、RWE社、バッテンフォール社の4社は10日に共同声明を発表し、過去数十年間にわたって事業者が使用してきた現行の会計方法を、同報告書が実質的に適切と認めている点を評価。「報告書の明確な所見を踏まえるなら、引当金を引き上げる必要があるかもしれないとの憶測には事実上何の根拠もない」と断言した。また、同報告書の極端なシナリオについては、長期間の超低金利状態の中でコストとその増加率の極端な上昇が同時に起こる、などという前提は非現実的だと反論している。