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米国政府:COP21に向け、原子力がCO2排出削減で果たす役割に注目

2015年11月9日

 米ホワイトハウスは11月6日、温室効果ガスの排出削減に原子力が果たす役割について政府当局者と原子力産業界のリーダーが検証するイベントを開催し、小型炉など先進的な原子炉設計の開発が加速されるよう政府の融資保証プログラムを補足する計画など、米国のクリーン・エネルギー戦略において原子力を活力ある産業とし続けるための政府アクションを発表した。オバマ政権はこれまで、温暖化防止に活用可能なエネルギー源はすべて利用するとして再生可能エネルギー開発やエネルギーの効率化について多くの促進策を打ち出す一方、米国の低炭素発電量の6割を賄う原子力については目立った施策を講じていなかった。今月末から国連気候変動枠組条約・締約国会議(COP21)がパリで開催されるのに先立ち、世界的な低炭素経済への移行を米国が牽引するため、原子力はクリーン・エネルギー戦略の重要な構成要素と認めており、先進的な原子力技術の開発を継続するとともに既存炉の運転を支援する方針を打ち出している。

 政府はまず、2016会計年度予算として米エネルギー省(DOE)による民生用原子力部門の支援に9億ドル以上を計上した事実に言及。連邦政府による原子力技術の研究開発・実証支援は、発電から安全性、ハイブリッド・システム、セキュリティ技術まで、多岐にわたっていると指摘した。また、DOEは昨年9月、先進的な原子力プロジェクトを対象に総額125億ドルの融資保証を提供する案を公表し、同年12月に申請の受付を開始している。既存原子力設備の出力向上や革新的な改修計画も対象に含めて申請の受付を行っている。これらを踏まえた上でオバマ政権は、原子力を維持・発展させるための政府アクションとして次の計画を提示した。

●「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」の創設
 DOEは、原子力産業界が新たな先進設計を商業化していく際に必要となる技術的、財政的、規制的支援を提供するため、広範な人的資源や施設、資機材、データが広範に得られる玄関口(ゲートウェイ)をアクセスポイントとして設定する方針だ。人的資源については、DOEが今年3月に新設した技術移行局(OTT)のクリーン・エネルギー投資センターを通じて、専門的知見などを提供する。データ関連ではDOEが既存の原子力インフラ設備のカタログとなる「原子力インフラ・データベース(NEID)」を発行する計画。米国内外の84機関が保有する377施設について、802の研究開発設備の情報を網羅することになる。また、先進的な原子力技術開発に強い関心を持つ新たな企業に対しては、DOEが200万ドルを小規模ビジネスの支援バウチャーとして提供する。規制手続についても支援を行う計画で、米原子力規制委員会(NRC)の規制・許認可手続について申請者が理解し、新たな原子炉技術で認可取得手続を進められるよう、DOEが指導協力するとしている。

●先進的な非軽水炉技術に関する第2回ワークショップの開催
 今年9月の第1回ワークショップに続き、NRCとDOEは来年春、第2回会合を開催する計画。技術的および規制的な観点で効率性のある、革新的かつ安全な原子力オプションを探るのが目的で、短期・長期の両面から、新型炉の原型を試験・実証・建設する機会を検証し、最も適切な許認可プロセスを評価することになる。

●政府による融資保証プログラムの補足
 総額125億ドルという既存の融資保証プログラムでは、新型炉や小型炉の建設計画や既存炉の出力向上と改修、およびフロントエンド施設が対象。補足計画としてDOEは、設計承認(DC)や建設許可、建設・運転一括認可(COL)といった規制手続きを進める際に発生するプロジェクト・コストを明確化し、融資保証の対象に加えるとしている。

●軽水炉の研究開発・設置(RDD)でワーキング・グループを設置へ
 競争力のある新型軽水炉の開発や既存炉の安全かつ効率的な運転維持を目的とする、将来的なRDDにおいて何が必要であるか検証するワーキング・グループの設置をDOEはまもなく正式発表する方針。同グループは連邦政府や国立研究所、産業界のメンバーで構成し、2016年2月までにDOEに勧告を提示することになる。

●産業界とのコンソーシアムによる小型炉開発への取り組み
 DOEは11月6日付けで、「軽水炉の先進的シミュレーション・コンソーシアム(CASL)」に関するニュースケール社との合意文書に調印するとした。オークリッジ国立研究所に置いたCASLエネルギー技術革新ハブの下、先進的な軽水炉のモデリング・シミュレーション設備を同社との経費折半で設置する計画で、合意文書では同社のシステムによりバーチャルな原子炉設備を設置することなど、CASLで行われる作業を特定した。小型モジュール炉(SMR)の運転シミュレーションが一層改善されるよう、CASL設備を拡大するとしている。

●SMR許認可手続への投資
 DOEはSMRの設計認証活動に要する初号機エンジニアリング・コストを支援するため、2012会計年度から6年計画で4億5,200万ドルの投資計画を開始した。これは産業界との経費折半で行っているもので、DOEではこのような革新的な原子力技術が米国で開発されるよう産業界を支援。それによって、米国の製造能力と原子力サプライ・チェーンを強化し、国内の雇用状況を改善するほか、米国が原子力技術を輸出するという重要な機会を創出する方針だ。同プログラムによる最初の設計認証申請は2016年後半に予定している。

●軽水炉の近代的な中央制御室設計
 DOEはアリゾナ・パブリック・サービス社のパロベルデ原子力発電所と連携して、商業用軽水炉の近代的な中央制御室を設計中。これも経費折半による連携で、制御室の操作を合理化できるよう、これまでのアナログなシステムをデジタル方式に替える最良の方策を考慮するとしている。