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国連大学セミナー それぞれの実情ふまえた参加型のリスクコミュニケーションが重要

2015年11月17日

UNUriskcommunicationIMG_6497 国連大学サステイナビリティ高等研究所(UNU-IAS)は11月13日、「福島原子力発電所事故後におけるリスク理解とコミュニケーションのあり方」をテーマとする公開セミナーを開催した。5人の研究者が、同セミナーに先立って開催されたUNU-IAS研究ワークショップで得られた主な成果を報告し、放射線の問題が社会の中でどのように理解されてきたかを考察しながら、信頼回復に向けた参加型リスクコミュニケーションの可能性を探った。
 ミャンマー・パートナーズ政策研究所のリカ・モリオカ氏は、放射線のリスク認知で男女に差異が見られた調査結果を示し、男性にとって放射線リスクとは仕事や国家経済の安定に根差した稼ぎ手としての視点が中心となっており、男性中心で構成された機関での決定は、女性が持つ健康への不安に十分応えていないという思いを語った。
 ベルギー原子力研究センターのガストン・メスケンス氏は、もともと民主的なディベートがなかった日本の原子力に対し事故で不信感が増すのは自然なことだとし、科学的に不確実性が残る放射線の影響に関して、しきい値なしの説明が採用されているが、もっと市民を巻き込んだ議論が必要だと語った。
 ベルギー原子力研究センターのターニャ・ペルコ氏は、科学的数字やマーケティングの観点を使った説得型のコミュニケーションは機能してこなかったとして、異なるステークホルダーが集まってそれぞれの意見や目的を共有し、決定に至ったベルギーの放射性廃棄物処分場の議論を例に挙げ、参加型のコミュニケーションの重要性を強調した。
 福島県立医科大学放射線災害医療センターの宮崎真氏は、郡山市にずっと住み続け2011年に生まれた双子の父親でもある立場から、放射線被ばくについて市民に数字だけが伝わってしまったことを憂慮し、数字の意味やとるべき対応などについて説明するインタープリターが必要との考えを述べた。
 国際赤十字・赤新月社連盟のマーティン・クロットマイヤー氏は、若い人も活動の中に巻き込んで市民と積極的に関わっていくことが大切だとして、それぞれの実情に合ったソリューションを提供し、十分な情報を与えた上で個人に納得できる決断をしてもらうことが大事だと意見を述べた。
 国連大学では2013年4月より、東日本大震災および原子力発電所事故の影響やこれに関連するリスクや情報提供の問題などについて検討する国連大学サステイナビリティ高等研究所の研究イニシアチブ「FUKUSHIMAグローバルコミュニケーション事業」を実施しており、調査結果をもとにポリシーブリーフを通じた提言活動などを行っている。