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仏放射線防護研:受動的安全系の性能と信頼性評価で本質的な難しさを指摘

2016年1月8日

 フランスの放射線防護安全研究所(IRSN)は1月7日、近年建設中の原子力発電所で多く採り入れられている受動的安全系に関する報告書を公表し、それらの主要な特徴を概説する一方で、その性能と信頼性を適切に評価するには本質的な難しさが存在するとの見解を表明した。このような困難を乗り越えるための優先的研究分野として、受動的安全系の運用に影響する物理的現象の解明や、そうした現象の性能シミュレーション、シミュレーション・ソフトの確証テストなども明示。西欧原子力規制者協会(WENRA)の原子炉調和作業部会やEUの研究・技術革新プロジェクト助成枠組など、諸外国の関連機関と共同活動する枠組の中でこれらの研究を実施し、得られた知見を共有・有効活用する必要性を強調している。

 IRSNはまず、フランスで稼働中の原子炉(すべてPWR)には電力などの動力源を必要とする動的安全系が装備されているものの、一部には受動的特徴を持つものも含まれると説明。具体例として、電源喪失時に重力で落下する制御棒や内圧が設定値を下回った際に冷却系に注水するシステム、自動停止した原子炉冷却ポンプへの熱サイフォン式冷却、格納容器内の水素を大気中の酸素と結合させる水素再結合装置などを挙げた。

 IRSNによると、原子炉メーカーが近年、提案している原子炉設計のいくつかは、運転員の介入なしに限られた支援機能だけで原子炉を安全に停止し、その状態を長時間保持できるよう、一層広い範囲で受動的安全系を採用。福島第一原子力発電所事故以降はさらに、受動的安全系の中でも電源や最終ヒートシンクの長時間の喪失といった事故条件緩和を目的としたものへの関心が高まっている。こうした背景からIRSNは、安全系の主な特徴として(1)起動に際し動的機器への依存が低い、(2)重力、密度差、圧力差などで運用、(3)運用に際し支援機能を必要としない、(4)起動と運用に人的介入を必要としない--と定義。受動性の度合いに応じて国際原子力機関(IAEA)が行った4種類の分類も紹介した。

その上でIRSNは、受動的安全系の性能上の特徴を適切に評価するには、起動と運用に用いられている物理的現象を深く理解する必要があると断言。システムが機能している全体的な時間、および施設の稼働期間全体においても、その性能を実証すべきだとした。また、安全系の運用では多重防護が基本原則であるため、新たな原子炉設計の開発で受動的安全系が多用される根拠になっている。多重防護上、異なるレベルの安全系を同じ自然現象で作動させる場合は、相互に影響を及ぼさないよう十分独立させておかねばならないにも拘わらず、一部の設計ではそうなっていないとIRSNは指摘。すべての条件に対応する安全機能を正しく作動させるため、その自然現象を元にした駆動力には高い信頼性が求められるが、動的安全系の存在も、受動的安全系が事故の条件下で正しく機能することを実証する上で、プロセスを複雑にしていると説明した。

 IRSNはさらに、安全系の受動特性が単一の自然現象に依存している場合も、注意を払う必要があると警告。駆動力が小さい自然現象は、システムの配置といった周辺条件の影響で十分機能しない可能性があり、受動的安全系の故障確率を確率論的安全評価(PSA)で評価するには難しさがあるとした。同安全系の信頼性について適切な評価を行うには個別の開発アプローチが必要であり、システムに使われている熱水力学的メカニズムの故障確率を特に重点的に評価すべきだと呼びかけている。