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放医研・東芝 世界初の超伝導磁石を採用した重粒子線がん治療用回転ガントリー完成

2016年1月12日

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     重粒子線回転ガントリー

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     回転ガントリー治療室

 放射線医学総合研究所(放医研)と東芝は1月8日、放医研の新治療研究棟に設置した腫瘍に対して360度の任意の角度から重粒子線照射ができる軽量・小型の回転ガントリーをプレスに公開した。同ガントリーは超伝導磁石を採用しており、直径が11mで長さが13mと、現存するドイツの全長25mの重粒子線回転ガントリーと比べ大幅な小型化・軽量化に成功した。また3次元スキャニング照射装置とX線呼吸同期装置を搭載しており、腫瘍周辺の動きを直接観察して、正確に腫瘍へ照射できる。
 同ガントリーは回転体を回すことで360度どの角度からでも重粒子線をピンポイント照射できるため、治療台を傾ける必要がなく患者の負担が軽減される。また、脊髄や神経など重要器官を避けて細かく角度を調節して多方向から照射することができるため、腫瘍への線量をさらに集中することが可能となり、治療後の障害や副作用の更なる低減が期待できる。
 超伝導磁石の開発にあたり、液体ヘリウムを使用しない直接冷却方式を採用したことで、一般の医療施設でも容易に扱える。また、磁石内部の構造を工夫して、回転や振動があっても超伝導状態を保てる構造とした。さらに2.9テスラから1テスラへと1分で変えられる高速な磁場変化を可能とし、深さ30cmから体表までの高精細スキャニング照射を実現した。
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鎌田センター長

 鎌田正・放医研重粒子医科学センター長は、超伝導では日本が世界のトップを走っているとし、「東芝の技術と放医研のノウハウが結実した今回の開発は、重粒子線の世界でエポックメイキングとなる」と述べた。綱川智・東芝代表取締役副社長は、「日本ばかりでなく世界の研究者も見学に訪れるなど今回の装置に興味を持っており、普及型システムを広めて世界の医療に貢献したい」と意欲を示した。畠沢守・東芝電力システム社原子力事業部長は、「東芝は原子力発電のみならず、核融合、超伝導、加速器など先端技術の開発に長らく携わっており、医療の場で活かせることを非常に誇りに思う」と胸を張った。
 今後、放医研で必要な試験を実施した後、2016年度には回転ガントリーを使用した治療を開始する。なお山形大学では、2015年9月に納入する重粒子線がん治療装置の導入を決定しており、東芝が納入する回転ガントリーを主要治療装置と位置付けている。