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英規制当局:2020年までの戦略計画で人的資源を10%増強

2016年3月30日

 英国の原子力規制局(ONR)は3月23日、原子力発電所の新設を含む規制業務において関係者の期待するものにONRがどのように応えていく方針であるかを示した2020年までの戦略計画を公表した。国内25年ぶりの原子炉新設計画が進展するなか、原子力の安全・セキュリティを原子力発電部門全体で改善していく方策や得られた教訓の適用方法など、ONRが原子力規制で行使する権限の重要さを強調。業務の大幅な増加も見込まれることから、積極的な対応を可能とするため2020年までに年率9~10%で現場の技術的な専門家の人数を増強していく計画なども明らかにした。

 ONRが法定の機関となってから3年目に入るが、ONR理事会は2014年、尊敬と信頼が得られるような模範的な規制当局となるためのビジョンを設定した。その際、ONRの業務に影響するファクターや原子力を巡る環境の前提条件、主要な関係者グループである国民と政府、事業者などへの誓約を果たす方法について、一層詳細なものを設定する時が来たと判断。今回の戦略計画では同ビジョンを統合した上で、今後4年間にONRが目標とする事項を提示したほか、2016年/2017年の計画活動と予算に関する詳細を盛りこんだ。同計画は状況の変化に応じて毎年見直しと改定を行い、原子力を巡る状況や運営・事業環境の前提条件も改定。規制上の優先項目も考慮するとしている。

戦略計画の主要ファクターと前提
 ONRはまず、対象期間中に同局の規制業務に影響を及ぼす主要なファクターについて言及。第1に政府が指定した優先事項を挙げており、具体的には(1)原子力発電所の新設や小型モジュール炉(SMR)開発を含めた低炭素エネルギー・ミックスとエネルギー供給の保証、(2)戦略的な核抑止能力への投資、(3)安全かつ確実な廃止措置、(4)放射性廃棄物の深地層処分場(GDF)開発--であるとした。続いて、サイバー・セキュリティなど原子力産業のセキュリティに対する脅威の進展状況、古い原子力関連施設の廃止措置や放射性廃棄物の安全な管理および新規炉の建設を可能にするような古い原子力発電所サイトの復旧、EU法その他の国際条約や国際的な基準と原子力規制の関わり合いを指摘。既知の原子力災害に対する理解を深めるだけでなく、潜在的な災害とリスクについても情報を得るため、科学・研究活動のコミュニティにも幅広く関わっていく重要性を指摘した。

 次にONRは、同計画の策定において前提とした条件を明示。すなわち、AP1000とABWRについて現在進展中の包括的設計評価(GDA)が2017年までに完了することや、中国製原子炉設計で今年中にGDAを開始すること、技術面と経済面で有望なSMR設計の選定評価に必要な技術的支援が政府に提供され、2017年末までにGDA段階にこぎ着けること--を挙げた。また、ヒンクリーポイントC計画が計画通りに進展するとともに、ウィルヴァ・ニューイッド計画とムーアサイド計画で事業者がそれぞれ2016年と2017年にサイト許可(NSL)を申請。サイズウェルC計画でも事業者がNSL申請に向けた作業を継続する、などとした。これらの新たなNSLが2018年に発給され、深地層処分場についても、許認可申請の準備も含めてサイトの選定作業が継続されることが同戦略計画の前提となっている。

 ONRはまた、同局の事業環境について影響するファクターと前提条件を説明。国民に代わって原子力産業への責任追求を行う効率的かつ効果的な規制当局になることや、原子力部門の災害・リスクに関する信頼性の高い情報源となることが引き続き求められるとした。また、原子力市場では競争性がますます増大しており、原子力部門で規制上の要求に対応するには、高度な能力を持った経験のある人材を登用する能力が必要になる。ここでの前提条件としてONRは、納税者の負担を軽減しつつ効率性を向上させることや、スタッフの人数確保と能力増強に対する投資などを挙げている。

3つの戦略的テーマ
 このようなファクターや前提の下で、ONRは2020年3月末までの期間で集中的に追求する3つの戦略的テーマを提示。それらは(1)原子力の安全・セキュリティ改善、(2)関係者から尊敬と信頼が得られるような環境を鼓舞、(3)スタッフを通じたONRビジョンの達成--で、(1)については今後4年間で特に、原子力規制の最新化や新世代の原子力発電所の準備、既存の民生用原子炉の規制のほか古い施設の廃止措置と廃棄物処分の規制--などを集中的に改善するとした。(2)の実現に際しては、ONRの規制活動に関する出来るだけ多くの情報を公開し続けるとともに、主要な関係者グループの見解をONR活動の中心に置くため、積極的にこれらのグループと議論し、フィードバックに努める方針である。(3)に関しては、スタッフの養成と登用を継続的に実施するとしており、増大する規制作業に対応し、高品質な原子力規制が行えるよう人数、能力ともに拡充。技術的な専門家など現場の人的資源は2015年/2016年から2019年/2020年までの間、年率9~10%増強する計画となっている。また、組織の規模が拡大するのにつれてコストも増大していくことから、ONRの財政規模も2015年/2016年の総計6,400万ポンド(約103億円)が、2019年/2020年には8,540万ポンド(約138億円)に拡大すると予想している。