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豪州:サウスオーストラリア州政府委が外国の使用済み燃料の処分場建設勧告

2016年5月10日

 オーストラリア南部に位置するサウスオーストラリア(SA)州政府の核燃料サイクル委員会は5月9日、SA州には諸外国からの使用済み燃料と中レベル放射性廃棄物を安全に処分する特性と能力があることから、SA州政府は世界クラスの深地層処分場を州内に建設すべきだと結論付ける最終報告書をSA州のJ.ウェザリル首相に提出した。同委が実施した実行可能性分析では、保守的に見積もっても同処分場の操業で得られる総収入は1,000億豪ドル(約8兆円)以上にのぼるとしたが、その推進には社会的合意が不可欠であるとも指摘。出来るだけ積極的かつ早急に進められるよう、処分場建設に関する協議や分析を禁じた関連法条項の撤廃と、処分場建設に関する一層詳細な実行可能性調査の実施をSA州政府に勧告している。

 同委員会は、ウランの採掘や濃縮、原子力発電、および廃棄物貯蔵といった核燃料サイクルにSA州が現状より深く関与した場合の経済的、実質的、倫理学的な課題を検討するために、2015年3月に州政府が設置した。今年2月に暫定的な報告書をとりまとめたのに続いて、同委は今月6日に12の勧告と145の判明事項を網羅した320ページの最終報告書を州知事に提出。今回、同報告書のブリーフィングを受けた州政府閣僚らは、これに対する州政府としての対応を年末までに州議会に提示することになる。
 豪州は世界有数のウラン資源埋蔵国でありながら、今のところ商業用の原子力発電は行っていない。この点について同報告書は、「現行の市場規則の下ではSA州における原子力発電所の建設は商業的に実行可能ではない」とした。ただし、今後数10年間にCO2排出量を大幅に削減する必要性が生じるため、低炭素電源の1つとして原子力が必要になる可能性に言及。連邦政府レベルで原子力発電の禁止規定を廃止することを州政府に勧告したほか、原子力も含めて低炭素な発電技術すべてを利用可能とする包括的な国家エネルギー政策の策定に協力していくべきだとした。特に、小型炉のように原子力に経済的価値を生む可能性のある新型炉設計については、専門家による情報収集や商業化の検討などで連邦政府と協同することを提言している。同報告書の「放射性廃棄物の管理・貯蔵・処分」に関する概要は以下の通り。

 現在、世界では多量の使用済み燃料と中レベル廃棄物が安全に中間貯蔵されている。しかし、長寿命核種を含む使用済み燃料の場合、少なくとも10万年は閉じ込めて隔離する必要がある。このような長期にわたる廃棄物の管理には、深地層処分が最も有効との見解で国際社会は一致。いくつかの国ではすでに、使用済み燃料を最大10万年間、深地層に隔離するシステムと技術の開発プログラムを進めており、最も進んでいる国では2020年代にも操業開始できると言われている。

 深地層処分の安全性は、地層と人工バリアを組み合わせることで保証され、詳細な調査の実施により過去何億年もの地層の変化から、今後数10万年先の挙動を予測することが可能。周辺地層の役割を補完できるように人工バリアを設計・建設すれば、廃棄物の閉じ込め・隔離において受動的な安全性が確保される。使用済み燃料と地層と人工バリアの将来的な相互作用を予測するため、高い精度でモデル化や試験を実施することも可能であり、SA州には世界クラスの処分場を建設し、安全に操業するために必要な特性と能力が備わっていると言える。

 その実行可能性を見定めるため、世界の使用済み燃料在庫量と処分場の利用を希望する可能性のある国について慎重かつ保守的な評価を実施した。その後の分析により、120年間のプロジェクト期間中、処分場の閉鎖と監視に必要な予備費320億ドル(約2兆5,000億円)を含めたコストが必要になる一方、処分場が生み出す収入は1,000億ドルに達するとの結果がでた。これにより、SA州政府に対しては本報告書・最終章の原則と手続に従って、州内に使用済み燃料と中レベル廃棄物の貯蔵・処分施設を建設することを勧告するが、直ちに取るべき措置としては以下の点を提案する。すなわち、
(1)本報告書を可能な限り早急に、すべて公開する
(2)外国の使用済み燃料と中レベル廃棄物を貯蔵・処分する大まかな概念を特定し、SA州内のコミュニティから意見聴取する
(3)社会的合意を形成できるか評価するため、コミュニティをプロジェクトに関与させる専門機関を設置する
(4)同専門機関は、立地基準などの概念作成をさらに進める枠組案を準備し、連邦政府に支援と協力を要請、潜在的顧客となる国がどのような基盤の下でプロジェクトへの参加を約束するか見極める

 これらの早急な措置は、プロジェクトの推進に公的資金を使うことは違法かといった議論と切り離して取りかかるべきである。このため、SA州政府に対しては、州内でこのような施設の建設について詳細かつ徹底した分析や議論の実施を制限した「放射性廃棄物貯蔵施設(禁止)法・第13項」の撤廃を勧告する。