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特集 ペスコ「知見と人材のハブとして、原子力技術の継承と社会との良好な関係づくりに貢献」

2016年5月16日

特集のロゴ(仮) ペスコは高度な技術力と数多くの経験を活かし、技術面での貢献とともにコミュニケーションや調査研究などの各分野で、原子力技術と社会をつなぐ役割を担ってきた。今後、人材を有効に活用していくためのプロジェクトスタッフ制度をさらに強化していき、原子力に関する知見と人材のハブとなっていくことに意欲を示す3氏に話を伺った。(中村真紀子記者)

小島久雄代表取締役社長=写真中央
小島公人取締役/経営管理部長=写真右
堀越秀彦研究主幹(社会環境調査担当)/企画部次長/第1エンジニアリング部次長=写真左

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<原子力の専門家から科学技術に親しみたい子どもたちまで幅広くサービスを提供>
 ペスコは1988年に動力炉・核燃料開発事業団(現日本原子力研究開発機構)OBが設立し、今年で創業28年目を迎えた。「未来のために、今できること。」をコーポレートアイデンティティとして、原子力・科学技術に関する幅広いサービスを提供している。「技術」と「社会」が弊社の二本柱となっており、エンジニアリングコンサルタント事業、調査研究事業、人材育成・教育研修事業、コミュニケーション事業、福島復興支援といった事業を通じて、原子力技術を社会に還元し貢献していくことを目標としている。原子力技術のノウハウを必要とする企業や、社会と良好な関係を築いていきたい企業、原子力および科学技術の知識を得たり理解を深めたりしたい団体などが主な顧客となっている。
 原子力人材育成分野では、原子力事業者などの専門家から科学技術に親しみたい子どもたちまで、様々な方を対象としたメニューを用意している。放射線取扱主任者や核燃料取扱主任者の資格取得を目指す合格講座や、霧箱などを使用した身近な科学に出会えるワークショップなど、幅広いラインアップを揃えているのが特徴だ。特に福井県では日本原子力研究開発機構が行っている児童・生徒向けの環境やエネルギーに関する出前授業を支援しており、昨年も年間通して100回近く実施した。最近は放射線教育へのニーズが増えており、福島県での除染作業員に対する放射線の教育や実習などの支援も行っている。

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    子どもたち向けの放射線授業


 弊社幌延事務所では、日本原子力研究開発機構幌延深地層研究センターゆめ地創館での地域交流等業務や、原子力環境整備促進・資金管理センター地層処分実規模試験施設での研究支援及び来場者対応などを行っている。また青少年科学の祭典へのブース出展などを行うこともあり、地域との交流を深めている。弊社の事業を通じて、技術と社会の良好な関係作りを支援していきたい。
 日本原子力研究開発機構保有技術を中心として、原子力技術を事業者等に移転する際の支援も行っている。国内の原子力事業者向けに限らず、日本の技術を外国に移転することもあり、世界の原子力安全に寄与しようとしている。ソ連が崩壊してロシアになったばかりでまだ混乱が続いていた2000年頃には、原子炉やナホトカの原子力潜水艦が危険な状態で放っておかれた状態だったので、適切に管理していけるよう文部科学省(旧科学技術庁)を通して日本の技術を供与していた。
 福島第一原子力発電所事故が起こってからは、事業の柱の一つに福島復興支援事業を加えた。福島事務所では積極的に福島県内で社員を採用しており、浜通りから避難したという社員もいる。弊社もこれまで原子力分野で培ってきた技術で貢献していきたいと思っており、国や県が進めている事業に主に放射性安全という切り口から協力している。内部被ばく検査測定業務では弊社放射線取扱主任者を配し、単に数値を測るだけではなく、測定結果としてどうなのか、受検者一人ひとりにデータの意味をわかりやすく説明している。また、日本原子力研究開発機構が行っているセシウムの環境動態研究や東電福島第一発電所廃炉技術開発へも協力している。今後も福島の復興に向けて弊社のこれまでの知識や経験等を活かし、支援していきたい。
 また、放射線遮蔽機能付き仮囲いパネル「アフィラウォールRS」を、積水樹脂プラメタル社と共同開発した。従来の遮蔽材は、鉛や重金属類などが使われていたが、アフィラウォールRSは環境負荷の少ない特殊芯材を使用し、施工性と再利用性を高めた製品となっている。

<社会との接点を大切にし、常に最先端の生きた情報を見極めていく姿勢>
 ペスコでは、人と情報が主たる経営資源となっている。情報は集めただけでは生きた情報かどうかわからない。現場の最先端と社会の接点でどのように動いているのか見極めることが重要だ。
弊社の事務所は、北は幌延から西は敦賀まで、全国9か所にあり、各地から情報を集めることができるのが強みとなっている。また、弊社では一般の人々と触れ合う場での仕事が多く、社会との接点を大切にしながら事業を進めている。リサーチ時には市民の声を大量に読んだり聞いたりするほか、イベントで来場者の不安や疑問に触れるなど、現場の生の声に触れる機会が多い。震災当時の意識調査では、自由回答部分の記述ではふるさとを奪われた悲しみが生々しく感じられた。これを何千と読み、涙がこぼれた記憶がある。

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     全社員が参加した社内研修

 現場では、我々が教えるという側面もあるが、学び合うという面もある。講座受講者や展示館などの来場者と話をしながら、「一般の方はこうした点が気になっているのか」と気付かされることも多く、原子力や放射性廃棄物、放射線などの問題に対して、社会の空気を感じるのに役立っている。コミュニケーション施設では来場者との会話を記録に残すなどしており、意見交換の中でいただいたことは、統計的に解析して次に活かしている。
 特にコミュニケーション事業では社内でも連携を図り、社会環境的な専門分野の社員と技術的な専門分野の社員で意見交換しながら、一般の方にも理解していただけるわかりやすい説明をしていくよう取り組んでいる。社員研修では全社員を集めて、それぞれの業務を紹介し合い、各分野に共通する課題について話し合う機会を設けている。以前はそれぞれの分野で理解活動に苦心していたが、近年様々な分野のノウハウを共有するようになり、知恵を集積している。
 全国の社員を集めるのはなかなか難しいので、将来的には、WEB会議システムを使った社内研修も試みたいと思っている。弊社の社員数は100名少々と少ないが、放射線取扱主任者1種資格を持つ社員が18名、学校教員資格のある社員が9名、核燃料取扱資格者が4名、博士号取得者も6名、各事務所に点在している。それ以外の社員もそれぞれの現場で多様な経験を積んでいる。若手からベテランまで、基礎的なことから専門的なことまで、学び合っていければと思う。教えるには自分がきちんと理解していなければならず、教える側にとってもいい復習の機会にもなるので、切磋琢磨していけるはずだ

<プロジェクトスタッフ制度で原子力技術の継承に寄与>
 原子力分野は、技術的にも多岐にわたり、社会との関わりも非常に重要な分野である。もともと裾野の広かったところに、さらに震災で医療や災害など多様な分野にも展開してきた。求められるスキルも多様化している。弊社の社員だけでは限りがあるため、仕事に応じて外部の専門家に得意分野で手伝っていただく「プロジェクトスタッフ制度」を採用している。登録者は常時募集しており、登録用紙に各自のスキルを記入してもらって、それぞれプロジェクトごとに必要な方を斡旋していく。適宜プロジェクトごとに外部のスタッフを含めたチームを組んで、ベストな体制で取り組んでいけるようにしていきたい。家庭の事情で退職されたり定年後にスキルを活かせなかったりする人材と、原子力施設停止などの理由から技術の承継ができない現場をつなぎとめて、原子力の未来へ還元していくことも期待している。また、本制度は大学院生にも門戸を開いており、就職前に現場を体験するよい経験にもなる。まだ立ち上げたばかりの制度だが、今後、分野横断的なネットワークを形成していき、当社が知見と人材のハブとなって様々な場面で貢献できるようにしていきたい。
 原子力分野では専門性を高めることも重要だが、幅広い視点を持つこともとても大事なことだ。ペスコでは、いろいろな分野に携わることができ、視野を広げる機会が豊富にある。意欲のある方々の沢山の登録を期待している。