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NUMO:地層処分場サイト選定におけるスイスの取り組みで講演会

2016年7月12日

NUMO 原子力発電環境整備機構(NUMO)は7月8日、スイスが使用済み燃料を含むすべての放射性廃棄物を地層処分するために進めている建設サイトの選定プロセスに関する講演会を都内で開催した。同国で廃棄物処分の実施主体となっている放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)からT.エルンストCEO(=写真)を招き、候補地域を2地点に絞り込むまでに進展した同国の取り組み状況を紹介。翻って、日本では未だに地質環境調査の受け入れ地点が見つからず、政府が基本方針を改定して科学的有望地の洗い出しを行っている段階にあることから、講演会を通じて国際社会の最新動向について理解を深め、日本においても適用可能な方法論を探った。

スイスの処分計画の概要
 NAGRAのエルンストCEOの説明によると、スイスでは原子力法に基づいて使用済み燃料およびガラス固化された高レベル放射性廃棄物(HLW)のみならず、低中レベル廃棄物も地層処分する方針。将来的な回収可能性を残した監視付きの処分とし、処分場のサイト特性調査、建設、操業、シーリングなどの許認可を連邦政府に一元化するなど、連邦政府が強い責任を負う。サイト選定プロセスも連邦政府による指導の下、選定基準を定めた「特別計画」に基づいてNAGRAが実施中。3段階で構成される同計画のうち、適性のある母岩など地質学的な適地として6つのサイト候補地域を選定した第1段階が2011年に終了し、第2段階として候補地域を少なくとも2地域まで絞り込んでいる。この段階では、関係自治体や監督官庁および一般市民約100名で構成される「地域会議」が選定作業に参加。NAGRAはこれらとの協議の上で2014年12月、第3段階の調査を実施する地域としてジュラ東部と北東チューリッヒの2地域を提案したが、立地の潜在的可能性が残る北部レゲレンでも同様の調査を行うと発表した。現在は連邦原子力安全検査局(ENSI)がNAGRAの提案を評価しているところだが、最終段階では立地点を1か所に決定するため、すでに準備作業としてこれら2地域で三次元地震探査を実施したほか、ボーリング孔の掘削も行うことになる。

広報活動における「より良いコミュニケーション」
 講演会の後半では、NAGRAが選定作業において展開した全国的なコミュニケーション活動について、エルンストCEOと近藤駿介NUMO理事長、およびモデレーターとして国際環境経済研究所の竹内純子理事を交えた座談会を実施。エルンストCEOは、全国キャンペーンの方法として2億年前のオパリナス粘土層を体感できるバーチャル・リアリティ「TIME RIDE」が非常に功を奏したと説明した。また、初回のキャンペーンを帰宅ラッシュ時のチューリッヒ中央駅で行ったことが大きくメディアに取り上げられており、多くの人が居る場にこちらから出ていくことや、「面白い」と興味を持たれるアトラクションで科学的なものを説明することが重要だと指摘した。これに対して近藤理事長は、東京タワーの下などでキャンペーンをいくつか行ったものの、方法論の開拓でまだまだやるべき事があるようだとコメント。ただし、ブレずに「科学」をキチンと伝えることも重要だと述べ、それには創意工夫が必要になるとの認識を示した。
 また、竹内氏が地域における対話活動で回答する側が役割分担を明確にする意味を尋ねたのに対し、エルンストCEOは「試行錯誤の一言につきる」と断言。廃棄物問題を国レベルの重要問題と捉えて責任を持つ連邦エネルギー庁、独立の監督機関として規制を行うENSI、実施主体であるNAGRAがそれぞれの役割に基づき、責任を持って答える者を決めておく必要があるとした。続いて近藤理事長は、NUMOが昨年度に3Dシアターを備えた移動展示車「ジオ・ミライ号」で行ったキャラバン活動について、全国の移動に時間がかかったため実働時間が50~60日程度しか取れなかった点に言及。情報機器などを活用してパーソナルベースで情報をくまなく伝えていく仕組みが欲しいと述べた。最後に全体を総括した竹内氏は、コミュニケーションに正解や魔法の杖はなく、国毎に文化的背景の違いもあると指摘。学ぶべき事は透明性や公平性のあるルール、解決に向けた強い意志と国民全体での共有、明確な役割分担をそれぞれが果たすことなどではないかと締めくくった。