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IEAが日本のエネ政策で報告書、原子力含む電源の多様化 提言

2016年9月23日

 国際エネルギー機関(IEA)は加盟各国のエネルギー政策を総合的に評価する国別詳細審査を定期的に実施しており、9月21日にはその一環として「日本に関する2016年の詳細報告書」を公表した。東日本大震災以降、燃料の輸入依存度が94%に上昇した日本で、政府が電力市場改革とエネルギー分野の技術革新促進に取り組んでいる点を高く評価。昨年末のCOP21を受けて世界が温室効果ガスの排出抑制目標達成を目指して動くなか、原子力発電所の再稼働は非常に重要であるとし、日本政府がエネルギーの安定供給や経済効率、安全性および環境保全等に考慮しつつ、原子力と再生可能エネルギー、高効率火力発電を組み合わせて、バランスの取れた多様なエネルギー・ミックス実現に向けて努力するよう勧告した。これにより、日本は一層安全確実で適正価格、かつ低炭素なエネルギー供給システムの構築が可能になる。ただし、再稼働に際して最も厳しい安全基準を満たすとともに国民の信頼を取り戻した上で、徐々に進めることなどを提言している。

 全体で183ページにおよぶ同報告書は、第一部で日本における総合的なエネルギー政策や省エネルギー政策などを分析したほか、第二部で石油、石炭、天然ガス、電力、再生エネ、原子力を取り上げた。第三部ではエネルギー技術の研究開発と実証活動に焦点を当てている。冒頭部分ではまず、日本がエネルギーの大量消費・輸入国である一方、エネルギー技術開発においては世界的リーダーと認められており、同部門の主要輸出国であると指摘。ほとんどすべての化石燃料を輸入に頼るなど、その安定供給確保は伝統的な重要課題であったが、近年は東日本大震災にともなう原子力発電所事故への取り組みが最も重要になっているとした。2013年に国内の原子力発電所が完全停止してからは電力供給に約3割の不足が生じ、その分は当時高額だった化石燃料で賄われているが、2010年に80%だった輸入依存度は2013年末に94%に増加。電気料金の急速な値上げが続くなどの状況は長期的に持続可能なものではないことから、日本政府がエネルギー政策の根本的見直しを決めたという事実に言及した。

 日本政府がその後に打ち出した「第4次エネルギー基本計画」、「(2030年までの)長期エネルギー需給見通し」などでの目標値を踏まえ、IEAは「エネルギー基本計画を最も費用効果的に実施する方法は、安全性の確認された原子力発電所を再稼働することだ」と指摘。それには新規制基準に基づく保安検査に合格する必要があるとした上で、「もし、原子力発電が2030年に発電シェアの目標値である20~22%を下回れば、不足分を再生エネだけで埋めることは非常に困難」との見解を提示した。この場合、一層多くの天然ガスと石炭が使用されることになり、温室効果ガスの排出抑制目標を国内施策だけで達成するのは非常に難しくなると強調している。

 IEAはまた、原子力産業を日本で再生させることは重要だと明記したものの、それには発電所の安全性を可能な限り高い水準で維持することが条件だと言明。再稼働に関する安全認可のみならず、福島第一原子力発電所事故に関連する重要課題にいかに効果的に対処するかにかかっているとした。具体的には、汚染地域の除染や除染地域への住民帰還、市民生活の深刻な混乱に対する適切な補償提供などを指摘。福島第一発電所の廃炉は優先度の高いプロジェクトとして継続する必要があるが、そこでは国民と率直かつ透明性のあるコミュニケーションを図り、困難が生じた場合は、意思決定を行う前に解決案を公に議論するなど、国民の信頼を取り戻すための施策が必要との認識を示した。

 こうした状況を踏まえてIEAは、原子力関係で日本政府が実施すべき項目を以下のように勧告している。すなわち、
・原子力規制庁は、重要な業務の遂行に必要な高い専門知識水準を維持するため、経験豊富な職員を確保するとともに新規職員を雇用、必要に応じて開発訓練の継続に要する全手段を保持する、
・詳細を理解した上で原子力に関する決定が下せるよう、日本国民に必要な情報すべてを提供し、日本のエネルギー・ミックスにおける原子力の役割について、中立かつ双方向で、透明性のある形で国民と話し合う、
・安全で低価格、低炭素な電力の供給に貢献できるよう、原子力発電所は安全性が確保され次第、再稼働を進める、
・原子力発電所において、上級管理職が一貫して支持・強化するとともに全スタッフが実践するような強固な安全文化が確立・維持されることを目指し、産業界が国際社会から支援を受けるための取り組みを奨励する、
・国際的な経験や教訓を日本の状況に適用し、原子炉の廃止措置費用を賄う既存の積立制度について適性評価を行う--である。