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米南東部の原子力発電所、大型ハリケーンを万全の体勢で乗り切る

2016年10月17日

 米国では10月7日~9日にかけて、過去11年間で最大級というハリケーン「マシュー」が南東部沿岸の諸州に大きな被害をもたらしたが、これらの州に立地する原子力発電所では設計が堅固であったのに加え、万全の準備体勢を取ったことにより、ほとんど被害を受けなかったと米原子力エネルギー協会(NEI)が13日付けで発表した。マシューの進路となったフロリダ州からバージニア州にかけて200万以上の世帯が停電に見舞われたものの、原子力産業界は極端な気象現象に対処する緊急時計画や、米原子力規制委員会(NRC)のガイドラインに沿って準備のための特別行動を取るとともに、連邦政府、州政府の関係機関などと緊密に連携。進路に近かった原子力発電所すべてにおいて、綿密な準備や日頃の訓練が発電所を無傷のまま保ち、近隣地域への電力供給再開が可能になったとNEIは強調した。

 NEIの調べによると、マシューの接近が予想されていたフロリダ州のフロリダ・パワー&ライト(FPL)社は、ハイチなどのカリブ海諸国で数百人の死者が出た段階で、NRCが定めた4段階の緊急時対応で最もレベルが低い「異常事象」を進路に近いセント・ルーシー原子力発電所で宣言。深刻な悪天候時における手続を開始し、暴風と洪水の影響を受け易い機器を安全な場所に移設した。重要システムについては現状調査を行っており、少なくとも7日間分の燃料を備えた外部電源喪失時用のバックアップ・ディーゼル発電機で試験を実施したという。同様の準備措置はこのほか、マイアミ南部にあるFPL社のターキーポイント原子力発電所で、またデューク・エナジー社がノースカロライナ州とサウスカロライナ州で保有するブランズウィック、シアロンハリス、H.B.ロビンソンの各原子力発電所で取られた。

 9日になると、マシューはサウスカロライナ州に上陸。その際、一部の送電線がダウンし変電器が水浸しになるなどの被害が出ており、ロビンソン発電所では一時的に発生した外部電源喪失に適切に対応し、原子炉を安全に停止。燃料交換のため停止中だったシアロンハリス発電所でも外部電源が失われたが、両発電所では緊急用ディーゼル発電機が設計どおり起動しており、外部電源も24時間以内に復旧した。また、ブランズウィック発電所では送電グリッドの安定性の問題から、給電司令員が同日、発電所運転員に出力を50%下げるよう要請した。これらの発電所は12日までにすべて、「異常事象」宣言を解除しており、ブランズウィック、ロビンソン発電所が定格運転を再開。セント・ルーシー発電所も、NRCと連邦緊急事態管理庁(FEMA)から運転再開の許可を得ている。

 この間の対応についてNEIは、「支援モード」を通常より高めたと強調。原子力発電所の状況を常に把握できるよう事業者とコミュニケーションを図り、必要に応じた支援を提供したという。また、様々な関係機関同士でも、発電所の状況や顧客への送電再開努力について相互に連絡し合うなど、足並みを揃えたとNEIは説明。事業者内では最高経営責任者から発電所従業員に至るまで、NEIのほかアトランタにあるNRCの事象対応地域センター、エジソン電気協会(EEI)、原子力発電運転協会(INPO)、電力サブ・セクター調整審議会、エネルギー省(DOE)などの連邦政府や州政府の対応機関がこれに加わったとしている。