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長岡技術科学大学 大学院課程に原子力規制人材育成コース設立へ

2016年11月1日

特集のロゴ(仮)
~原子力システム安全工学専攻 専攻長 鈴木 雅秀 教授に聞く~

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鈴木雅秀教授


<安全専門家の育成に長い実績>
 このたび開学40周年を迎えた長岡技術科学大学は、原子力に関する学部はなく、大学院修士課程から原子力について学び始める。本学の「原子力システム安全工学専攻」自体は新しいが、実践的技術者教育に40年の経験と実績を持つ。この10年間を振り返ると、長岡技術科学大学は、社会人を対象とした日本で唯一の安全専門職課程として2006年に「システム安全専攻」を専門職大学院に設立し、10期にわたって100人超の安全専門家を育ててきた。その後、原子力分野では、2011年(折りしも東日本大震災直前だった)に文部科学省に「原子力システム安全工学専攻修士課程」設置届け出の最終申請を行って、2012年4月に開設となり、同省の原子力人材育成の取り組みとして、2012年から2014年までは原子力安全人材育成イニシアティブ事業、2013年から2015年にかけては機関横断型の国際原子力人材育成イニシアティブ事業を実施してきている。そして、2016年度に原子力規制庁が新規事業として立ち上げた「原子力規制人材育成事業」に、原子力安全の専門家育成を謳ってきた当専攻が応募し、大学院課程に2017年度以降に原子力規制人材育成コース(仮称)を開講することを目指した取り組みが進められている。
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長岡技術科学大学


<技術者視点から規制を理解し、サイバーテロ対策なども学ぶ>
 このほど開講する原子力規制人材育成コースでは、原子力安全の原点にかえって技術者視点から原子力発電プラントの規制体系を実践的に理解し、原子力システムの安全性向上に係る課題を解決する能力を持った原子力規制人材および技術者を育成するカリキュラムを開発していく。今回の事業計画の基礎となった2014年度関連講義などの参加者数から、延べ人数ではなく、年間220名程度の人材育成が可能であると予想している。本学システム安全専攻に既設の機械安全や機能安全などシステム安全に関する科目群に加え、確率論的事故影響評価(レベル3PRA)やレジリエンス工学、雪害対策やサイバー攻撃対策等の外部ハザード対策など、防災および法規制やリスクなどの原子力の安全規制に必要な科目を拡充することで、カリキュラムを組み立てている。
 システム安全の基礎科目では、システム安全の基本概念や関連する国際規格について学ぶとともに、民間航空、医療、食品、労働安全など他分野における実践例も比較する。システム安全系教員には、元労働基準監督官や元運輸安全委員会スタッフなどもおり、国際的な視点から事例の比較もできるため、安全専門家としてトータルな技術的知識・経験を養うことができる。
 原子力規制については、安全規制の歴史と法律的基礎理論、他分野も含めた安全規制法の体系、原子力安全規制法令などについて、弁護士資格を持つ法学教員や、システム安全系教員、原子力発電所検査官経験者、規制行政経験者、東京電力から招いた講師などから学ぶことができるほか、実地のプラントウォークダウン演習を原子力発電所検査官の同行のもとに行い、検査項目の意義とポイントの理解にもつなげていく。
 さらに特長として、まだ日本の大学では教えることが少ない実践的なサイバーテロ対策のカリキュラムも用意していることが挙げられる。元々本学の教授であり、フランスのアレバ社で核施設サイバーテロ対策のコンサルティングを担当していたP.ザバースキー教授による集中講義と演習を行う。米国原子力規制でのデジタル・コンピュータ&コミュニケーション防護の法的要求を満たす国際的にも最先端の対策について、実践的に習得していく。
 国内や海外へのインターンシップも実施する予定であり、派遣先としては、日本原子力研究開発機構、原子力機器メーカー、量子科学技術研究開発機構(旧:放射線医学総合研究所)などを想定している。また、福島工業高等専門学校と連携し、福島第一原子力発電所や周辺地域および廃止措置の現場などを見学して原子力規制に係る者としての意識を醸成させる。また外国語でのコミュニケーションを体験し、グローバルな視点で原子力の位置づけや原子力システム安全および規制について学ぶという面から、インドのインディラガンジー原子力発電所、オーストラリアの原子力科学技術機構なども選定している。
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加速器を利用した研究


<規制人材育成の「新潟モデル」全国展開めざす>
 長岡技術科学大学は、柏崎刈羽原子力発電所から20kmほどの地点に立地するという「地の利」を活かして、周辺自治体および住民団体と連携した体験型演習の実績があり、オフサイトセンターでのロールプレイングや技術コミュニケーション学習など地域に根差したプログラムを開発している。
 また、2003年の「eラーニング研究実践センター」設立以来、eラーニング・出前講義教材を開発しており、本原子力規制人材育成事業終了後には全国51国立高等専門学校に原子力規制を学習する教材配信が可能となる。地域連携型の中学生、高専生、大学生、大学院生までをカバーする重層的な教育プログラムで、全国の高専生に対応できる。自治体の防災・危機管理当局や原子力発電所立地地域周辺の高専教員等と連携して、ロールプレイング、材料劣化シミュレーション、住民とのコミュニケーション演習、プラントウォークダウンによるハザード検出など体験型の演習プログラムの開発および充実を図り、原子力規制人材育成の「新潟モデル」を全国へ展開することを目指している。本学で多分野を俯瞰する安全システムを学び、グローバルな視野を持った人材が原子力規制の現場に羽ばたいていって欲しい。