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量研機構、特殊なマウスによる実験で低線量率被ばくの発がんリスク評価

2016年12月14日

  髄芽腫の発生率ⓒ量研機構

 量子科学技術研究開発機構の放射線影響研究部は12月13日、特殊なモデルマウスを用いた実験により、低線量率被ばくによる発がんリスクを分析した評価結果を発表した。それによると、被ばく総量が同じでも、時間当たりの被ばく量が少ないほど、被ばくに起因するがんのリスクは低下するなどとしている。研究部では、本成果について、低線量率被ばくによる健康影響は科学的データがまだ十分ではなく、 今回、新しい実験手法の導入により、より詳細な信頼性あるデータが得られたものとしており、全容解明には様々な実験動物、条件下、がんの種類も踏まえさらに研究していく必要がある。
 実験に用いたモデルマウスは、被ばくに起因するがんと自然に発生したがんを遺伝子解析により区別することが可能で、低線量率被ばくをした個体群では、同じ放射線量を短時間で一度に被ばくした高線量率被ばくの個体群と比べて、がんの発生率が低くなっていた。また、線量率をさらに小さくすると、被ばくに起因するがんは観察されなくなったとの結果が示された。
 この「Ptch1遺伝子ヘテロ欠損マウス」と呼ばれる特殊なマウスは、小脳のがんである髄芽腫を自然発生し、その原因となる遺伝子の状態は、自然発生のものと被ばくに起因するもので異なることから、遺伝子解析により、低線量被ばくの発がんリスクを直接的に評価することができる。
 実験では、「Ptch1遺伝子ヘテロ欠損マウス」の生後直後に、高線量率被ばく(540ミリグレイ/分、総線量500ミリグレイ)、線量率を6,000分の1に下げた低線量率被ばく(1)(5.4ミリグレイ/時間、総線量500ミリグレイ)、さらに線量率を5分の1に下げた低線量率被ばく(2)(1.1ミリグレイ/時間、総線量100ミリグレイ)の3つの条件でガンマ線を照射し、生後500日までの期間中に発生した髄芽腫の発生率を算出した。その結果、非照射群に比べて明らかに発生率が増加したのは、高線量率被ばく群のみで、低線量率被ばく群は2つとも発生率の増加は見られなかった。
 さらに、原因となる遺伝子の解析を行ったところ、低線量率被ばく(1)群でも、非照射群に比べて被ばくに起因する髄芽腫の発生率が、高線量率被ばく群ほどではないが増加していた。一方で、低線量率被ばく(2)群まで線量率が下がると、被ばくに起因する髄芽腫がほぼ検出されなかった。この現象について、今回の研究結果では、「生体に備わった修復能力がジワジワと被ばくによって生じたDNAの傷を修復し、結果、発がんを抑制した」などと推察している。