フォントサイズ:

UNSCEARが発電技術毎の被ばく線量を比較調査

2017年3月8日

 国連総会直属の委員会である「原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」は先月、「電離放射線の線源、影響及びリスクに関する(2016年版)報告書」を公表した。人や環境に及ぼす放射線や放射性物質の影響を評価した総会用の主要テキストに加えて、A~Dまで4つの科学的内容の付属書をとりまとめており、付属書Bでは石炭火力や原子力などの発電にともなう放射線被ばく線量を発電技術毎に評価。発電による一般住民の年間被ばく線量は概して少なく、一般的に見て環境放射線による平均線量の1%を大きく下回ることを確認したほか、発電技術の中でも総線量の半分以上が石炭火力によるものであり、原子力発電では総線量の5分の一以下であることが明らかになったとした。しかし、このような判明事項だけで、どの発電技術がほかよりも好ましいと指し示すつもりはなく、各国ともに放射線被ばくを含む様々なファクターに基づいて、適切な電源ミックスを選択しているとの認識を示した。

 UNSCEARの説明によると、世界各国における電源ミックスは気候や環境、財源、政策的および経済的課題などの状況に応じて時と共に変化。各国政府や研究者が、様々な発電技術による一般住民や作業従事者および環境への影響を比較研究するなかで、電離放射線による影響は考慮すべき多くの評価ファクターの1つに過ぎない。それでも、1993年の前回報告書よりも一層完全なデータの収集や改良された手法が可能であることから、過去の評価結果を改訂し範囲を広げることは、そうした調査活動に対する有効な情報源になるとしている。

 比較する電源として同報告書は、原子力、石炭、天然ガス、石油、バイオ燃料、地熱、および太陽光を対象としたが、情報データベースの豊富な原子力と石炭については特に詳細に調査を実施。どちらについても2010年実績に基づいて、燃料の採掘から発電所での燃焼、石炭灰や使用済燃料といった廃棄物の処理活動を含めた燃料サイクル全体の被ばく線量を評価した。その結果、原子力発電による集団線量は一般住民対象で130人・シーベルト(Sv)だった一方、石炭火力では発電所の新旧タイプにより、670~1,400人・Svの幅があった。このほか、LNGは55人・Sv、石油は0.03人・Sv、地熱は5~160人・Svだったとした。報告書はまた、当時のエネルギー供給シェア(石炭は40%、原子力は13%)を考慮して発電所1基分の発電量に対する被ばく線量についても、2つの主要電源について評価。原子力が100万kWあたり0.43人・Svだったのに対し、石炭は0.7~1.4人・Svという結果になり、短期的にはどちらもほぼ同じという認識である。数百年単位の超長期で見た場合、原子力では長寿命核種による非常に少量の線量が蓄積されるため集団線量は大きくなるものの、一般住民の被ばくと職業被ばくを合計した1基あたりの集団線量は、たとえ500年間、長寿命核種が蓄積されたとしても石炭火力の線量が原子力より高くなるとの見方を示している。

 一方、事故時の合計集団線量について報告書は、今回の電源比較評価の範囲外だったことを明らかにした。UNSCEARは過去に、チェルノブイリ事故について3回、福島第一原子力発電所事故についても2013年に線量評価を実施したが、事故による被ばく線量を通常運転による線量と直接比較することは難しいと指摘。理由として、事故直後における一般住民の被ばく線量は地理的に非常に局地的に分布するのに対し、発電所の通常運転による集団線量は地域的な人口や広域的人口の中で、一層均等に分布することを挙げた。それでも同報告書は、チェルノブイリや福島第一発電所のように深刻な事故による広域的人口の集団線量は、今回評価した電源の発電所を1年間通常運転した場合の世界人口の集団線量より、数桁大きくなるとの認識を示している。