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ハンガリー政府、国内財源によるパクシュ増設計画への資金調達 示唆

2017年4月24日

 ハンガリー首相府のJ.ラーザール長官は4月20日、政府の2018年予算に関する記者説明の中で、パクシュ原子力発電所Ⅱ期工事建設プロジェクトに対する資金調達は中央政府の財源、もしくはロシア以外の国際的な信用供与枠でも賄うことが可能だと発言した。また、同プロジェクト全体を管轄する無任所大臣として、V.オルバーン首相がパクシュ市のJ.シューリ市長を指名したことを明らかにしており、同プロジェクトの実現がハンガリーの国家経済と国内総生産、および国全体に大きな影響を及ぼす優先事項である点を強調した。ハンガリー唯一の原子力発電設備であるパクシュ発電所は総電力需要の約50%を満たす重要電源であり、Ⅱ期工事となる5、6号機(各120万kWのロシア型PWR)は、経年化が進んだ既存の4基(各50万kWのロシア型PWR)を将来的にリプレースする目的で計画されている。欧州委員会(EC)は3月6日、同プロジェクトには国家資金による財政支援が含まれると結論付けたものの、ハンガリー政府がエネルギー市場における競争原理の歪みを制限する対策を誓約したことから同プロジェクトへの投資を承認。国家原子力庁も同月31日付けでサイト許可を発給しており、同プロジェクトは2018年の着工目指して大きく動き出した。

 ハンガリーは2014年、パクシュⅡ期工事についてエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を含む3種類の契約をロシアのエンジニアリング企業と締結。これに先だち、総工費の約8割にあたる最大100億ユーロ(約1兆1,929億円)の融資をロシアから低金利で受けることについても、同国政府と合意していた。しかし、ラーザール長官によると、プロジェクトの資金調達においてハンガリーはいかなる信用取引にも依存しておらず、調達オプションとしては(1)ロシアからの融資額を減額して60日以内に返済する、(2)その他の国際的な信用供与枠を利用する、(3)経費全体を今後数年分の国家予算から充当する--が考えられると説明。ハンガリー経済と財政状況は国際的に高く評価されているため、国外の融資企業連合からロシアより廉価な信用供与を得ることができるとした。また、現在の見積では約1億ユーロ(約119億円)分の準備作業がこれまでに完了しており、この金額を財政支出する承認がECから得られたことから、準備作業関係で障害となる物は何も無いという認識。信用供与を最後の手段とせずに国家予算の範囲内で賄うことも可能だとした。同長官としては、今年の後半にも建設サイトでの準備作業を開始し、来年の春までには6億~7億ユーロ(約715億~836億円)分の作業が始められるかもしれないと予想していることを明らかにした。

 同長官はまた、今月10日にJ.シューリ市長がパクシュ5、6号機の計画策定と建設、および起動に責任を持つ無任所大臣に任命され、5月2日にも議会で就任宣誓を行う予定であると明言。ECとの調整は今後も首相府が継続して担当する一方、シューリ氏はプロジェクト企業の所有権を有する大臣として、パクシュ発電所の設備容量維持に関するその他のすべての課題に取り組むことになったとした。シューリ氏はパクシュ市長選挙の際、与党「ハンガリー市民同盟」の対抗馬に大差を付けて当選。市民から広く敬愛されており、パクシュ発電所で働いた経験もある。首相としては建設プロジェクトを原子力専門の人材に託し、準備調整や計画の監視、許認可の取得などにあたらせたい考え。議会の「持続可能な開発委員会」もシューリ氏の大臣就任を承認済みとなっている。

フォーラトムがプロジェクトの進展を歓迎
 ハンガリーにおける原子力発電所建設計画の進展は、EU域内の原子力産業界にも大きな励みとなっており、ECが3月に同プロジェクトへの投資を承認した翌日、フォーラトム(欧州原子力産業会議連合)は「欧州における将来的な原子力投資に向けた積極的かつ強力なシグナルになった」とのコメントを発表。J.-P.ポンスレ事務局長は、「英国のヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画でECが投資契約を承認したのに続き、パクシュⅡ期工事プロジェクトについても好意的な裁定を下したことは産業界全体にとっての朗報だ」と強調した。
 フォーラトムとしても、EU加盟国が自国のエネルギー・ミックスに原子力を加える権利や、欧州原子力共同体(ユーラトム)協定の目的に即して原子力に長期的な投資を行う権利を有している事実に改めて言及。ハンガリーの場合は、輸入エネルギーへの依存度がEU加盟28か国の平均値より高く、原子力発電は同国が石油やガスの輸入量を大幅に下げる一助になると指摘した。また、2030年にハンガリーでは電力供給量が50%不足すると予測されている点にも注意が必要との認識を示している。
 フォーラトムによれば、EU加盟国のうち半数の14か国が合計129基の原子炉を運転しており、稼働率は85%~90%と概して高いレベル。EU域内における総発電電力量の27%が原子力によるものであり、低炭素電源の発電量に限った場合、原子力の発電シェアは50%近くに到達している。また、全稼働期間中の温室効果ガス排出量については、陸上の風力発電とほぼ同等。その上、60年間にわたって安定したベースロード電源設備となり得るほか、2050年までにEU経済を80%~95%低炭素化するという目標の達成に大きく貢献できると強調している。