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米国のV.C.サマー増設計画でオーナー企業が2基とも断念

2017年8月1日

 米サウスカロライナ(SC)州のスキャナ社と州営電力のサンティー・クーパー社は7月31日、同州中央部のジェンキンズビルで2013年3月に着工したV.C.サマー原子力発電所2、3号機(各PWR、110万kW)増設計画について、2基とも完成を断念すると発表した。同プロジェクトは米国で約30年ぶりの新設計画であるとともに、第3世代設計の原子炉を建設する初の工事であったため工期が大幅に遅延。追加経費が生じたほか、エンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約を結んだウェスチングハウス(WH)社が今年3月に再建型の倒産申請を行ったことから、2基とも完成させるか1基のみとする、あるいは両機とも建設を止めるかについて包括的な分析評価を行っていた。断念する理由として両社は、2基とも完成させる場合の追加経費が極めて高額であることや、共同出資者であるサンティー社の判断などがあったと指摘。その他のファクターも考慮した結果、プロジェクトの放棄が顧客その他のステークホルダーにとって最良の選択肢との結論に至ったと述べた。なお、米国では同様にWH社製AP1000を採用したA.W.ボーグル3、4号機(各PWR、110万kW)増設計画が、サマー計画と同じ時期にジョージア州で始まった。ただし、サザン社の子会社を始めとするオーナー企業には合計83億3,000万ドルの融資保証が連邦政府から適用されており、スキャナ社らとは状況が異なる。また、サザン社の子会社2社は、WH社とオーナー企業間で新たな「サービス協定」を締結して、プロジェクトの管理業務をWH社から引き継ぐ方針を今年5月に表明。最終的にどのような結論を出すか注目されている。

 WH社が倒産法の適用を申請した後も、サマー2、3号機の建設サイトではオーナー企業2社とWH社間の「中間評価協定」に基づき、WH社の主要受託業者であるフルアー社が工事作業を継続していた。7月27日になると東芝は、WH社の親会社としてスキャナ社と結んだ保証契約により、オーナー企業2社への保証上限額を21億6,800万ドルとすることで双方が合意に至ったと発表した。同プロジェクトで2基とも完成させるオプションを分析評価した結果、スキャナ社の100%子会社であるサウスカロライナ・エレクトリック&ガス(SCE&G)社は、「EPC契約額を超えて必要になる経費が実質的にWH社の当初見積額および東芝の親会社保証額を超える」と説明。その上、新規原子力発電所の支援策として2005年に政府が融資保証制度とともに設定した発電税の控除を受けるためには、2021年1月1日までに両機とも送電可能な状態にする必要があり、現時点でその可能性は低いと述べた。一方、1基だけ完成させ、不足分の発電量を天然ガス火力で補うオプションについては、同社が完成容量の55%を得られることと、CO2排出関係の規制が敷かれた際や天然ガス価格が乱高下した場合の長期的防護策になり得ることを考慮すると、実行可能性はあったという。しかし、45%出資するサンティー社が「たとえ1基でも建設続行することは気が進まない」との結論を出したため、SCE&G社としても同オプションを最終選択することは出来ず、SC州のベースロード・レビュー法(BLRA)に従って両機とも断念することに決めたとしている。

 スキャナ社の同日付けプレゼン資料によると、最も近い過去に承認されたサマー2、3号機の運転開始予定日はそれぞれ、2019年8月と2020年8月だったが、現在の予測では2号機が2022年12月、3号機は2024年3月と、さらに3年ほど遅延する見通し。両機とも完成させる場合のコスト分析では、総工費のうちSCE&G社が負担する55%分は99億ドルで、ここから東芝が同社に支払う親会社保証額11億ドルを差し引いても経費は88億ドルになるとした。また、2号機だけ完成させる場合でも同社分の経費は71億ドルと高額だった。これに対して、両機とも建設中止した場合の同社の負担分は49億ドルで、ここから東芝の保証額や税控除を差し引くと、正味の経費は22億ドルに留まる。スキャナ社のK.マーシュ会長兼CEOは、経済的な実行可能性を考慮すれば「非常に難しいが必要な決断だった」とコメント。WH社が経営破綻したことで追加コストを同社が負担するという制度が適用できなくなったり、サンティー社が全面中止の判断を下すなど、スキャナ社側では制御出来ない多くのファクターが変化してしまい、「正しいことだが当社が最も望まないオプションを選択せざるを得なかった」と強調した。また、原子力がSC州のみならず、米国全体に恩恵をもたらすという同社の信念に変わりは無く、サマー発電所の既存の1号機を使って、顧客に低炭素で低コストな電力を供給し続けると述べた。

 スキャナ社とサンティー社は今後、プロジェクトの放棄手続を開始する旨、SC州の公益事業委員会(PSC)に詳しく説明する方針。放棄計画への承認が得られるよう、早急に請願書も提出する考えだ。