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IAEA:世界の原子力開発規模は2050年まで引き続き拡大する可能性

2017年8月10日

 国際原子力機関(IAEA)は8月7日、国際的な原子力発電開発規模の現状と見通しを長期的に予測した報告書の2017年版を公表した。その中で、今後数年間は拡大ペースに鈍化傾向が見られるものの、長期的に見れば開発規模は現在の2倍以上に大きくなる可能性があるとの結論を明らかにした。前回の予測から数値が低下している理由として報告書は主に、いくつかの国で原子力発電所が早期閉鎖され、運転期間延長への関心が不足している点を指摘。これらは福島第一原子力発電所事故後に複数の国で取られた原子力政策や、原子力発電における短期的競争力の低下がもたらしたとしている。報告書はまた、原子力発電の将来に影響を及ぼすファクターである建設資金の調達問題や電力市場、国民受容などを分析。低炭素電源としての原子力の可能性が一層強く認識され、先進的な原子炉設計によって安全性と放射性廃棄物管理問題の両方が改善されれば、原子力の開発利用は飛躍的に拡大するとの見方を示した。このような分析を、IAEAはすでに7月28日の理事会で報告済みで、詳細説明についてはIAEAが毎年発行している「2050年までのエネルギー、電力、および原子力発電の予測」の第37版としてまとめられ、9月の総会で公開されることになっている。

 同報告書において、IAEAは高低両ケースの開発規模を予測。「低ケース」では、各国の原子力発電政策にほとんど変更がなく、現状傾向のまま推移することを前提とした。ただし、開発目標すべてが達成されるとしたわけではなく、「保守的だが妥当な線」で試算を行っている。それによると、世界の原子力発電設備容量は2016年末実績の3億9,200万kWが2030年までに3億4,500万kW(12%減)、2040年までに3億3,200万kW(15%減)に低下していくが、2050年までには現状レベルに回復する見通し。地域的な格差が際立っており、北米および東欧を除いた欧州全域で開発規模が大きく縮小することが予想されるものの、アフリカと西アジア地域ではわずかに増加する。これとは対象的に、アジアの中部と東部地域では原子力設備容量が大きく拡大し、2050年までの成長率は43%に達することになる。現在、世界で運転可能な447基のうち、半数以上が運転開始後30年以上経過。2050年までの見通しでは設備容量に実質的な増加はないように見えるが、低ケースにおいても2050年までに3億2,000万kWが新たに設置されると予測されており、閉鎖された容量の不足分を補う形になっている。

 一方の「高ケース」では、現在の経済成長率と電力需要増加率が維持され、極東地域では特に高くなることを想定。また、多くの国が、原子力をコスト効果の高い温暖化防止オプションの1つとして受け入れることを前提とした。その結果、世界の原子力設備容量は2030年までに5億5,400万kW(42%増)、2040年までに7億1,700万kW(83%増)、2050年までには8億7,400万kW(123%増)まで拡大。世界の多くの地域がこうした数値に貢献しており、成長率が最も高いアジアの中部と東部では2030年までに設備容量が倍加するほか、2040年までに現在の2.9倍、2050年では約3.5倍に増加することが予想される。北米では2050年までに設備容量が若干低下する見通しだが、東欧を除く欧州地域では、一時的に減少した容量が2050年に1億2,000万kWまで回復。これは現状レベルの1億1,300万kWをわずかに上回る数値である。

 電力の効率的な利用を促進しても、世界の電力需要は新興経済国を中心に増加していく見通しで、現在28か国が原子力発電の導入に関心を示している。また、すでに原子力発電所を運転中の30か国のうち、13か国が新規の原子炉を建設中か、一時中断していた建設プロジェクトの完成に向けて積極的に活動中。16か国で新規に建設する提案やプランがあることを明らかにしている(=)。
 

【表】原子力発電を利用中の30か国のうち、拡大計画等の方針を表明済みの国々©IAEA