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IAEAの低濃縮ウラン備蓄バンクがカザフで完成

2017年8月31日

          ©NTI

 国際原子力機関(IAEA)は8月29日、加盟国に原子力発電所用の燃料供給を保証する「低濃縮ウラン(LEU)備蓄バンク」の貯蔵施設がカザフスタンで完成したと発表した(=写真)。経済成長に必要なエネルギー源の確保と地球温暖化による影響緩和の観点から、世界では約30か国が原子力発電の導入を検討している一方、これらの国が発電所への燃料供給目的で独自のウラン濃縮施設開発を始める可能性も出てくる。IAEAが所有・管理するLEUバンクの設立は、そうした国で莫大な濃縮施設開発費が発生するのを抑えるとともに核物質が拡散するリスクを軽減し、世界レベルの安定とセキュリティ確保の一助とすることが主な目的。IAEAは現在、2018年にも同貯蔵施設にLEUを搬入できるよう調達手続を進めているところで、関心を持つLEUサプライヤーへの入札招聘文書となる「提案依頼書」も間もなく発出する。このような作業が済み次第、同バンクが本格的に始動する段取りで、カザフの首都アスタナでは同日、貯蔵施設の落成式がN.ナザルバエフ大統領を交えて開催された。この席でIAEAの天野之弥事務局長は、関連するIAEAの安全基準とセキュリティ・ガイドラインが同施設で適用された点を強調。「LEUバンクの設立をようやく宣言できることを喜ばしく思う」と語った。

 核燃料を多国間で管理するシステムの構想は、2003年に当時のM.エルバラダイIAEA事務局長が初めて提唱した。IAEAのLEUバンクは、商業市場や既存ルートによるLEU供給が途絶した場合の最終手段として、IAEAの適格性基準を満たした加盟国のみが利用可能。一般的な軽水炉の燃料製造に適したLEUを最大90トン備蓄する予定で、2010年12月にIAEA理事会が同バンクの設置・操業計画を承認した後、カザフ政府が2011年7月にホスト国になることを提案した。貯蔵施設の建設は、カザフ北東部、かつてウスチ・カメノゴルスクと呼ばれていたオスケメン市にあるウルバ冶金工場(UMP)で2016年9月から開始され、当初の日程通りかつ予算の範囲内で完成。総面積880平方メートルの鋼製設備で、安全・セキュリティ上、堅固な対策が施されたという。バンクの経費は任意の拠出金によって賄われており、設立とその後20年間の運営費として、米国の民間団体「核脅威イニシアチブ(NTI)」、米国、欧州連合、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート、ノルウェー、およびカザフが合計1億5,000万ドルを拠出。天野事務局長は、これらの国に感謝の言葉を述べるとともに、IAEAの予算と活動には何ら影響がない点を強調した。また、バンクからLEUを輸送する際、通過国となる中国とロシアがIAEAと協力協定を結んだことに対しても、謝意を表明している。