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放射線医学オープンスクール 学生たちが陽子線治療施設など見学

2017年9月4日

 医療系または理工系大学生対象のプログラム「放射線医学オープンスクール-最先端技術に触れる」が8月29日から30日まで開催され、放射線医学に興味を持つ37人の学生が参加した。
同スクールは、医用原子力技術研究振興財団および医師のキャリアパスを考える医学生の会などが中心となって2008年より毎夏行っており、今回が10回目の開催となる。講義および特別講演のほか最先端技術の現場見学も含む内容で、1泊2日の研修となっている。

  放射線治療装置Radixact

 1日目は、日立製作所ヘルスケアビジネスユニット日立高精度放射線治療研修センターで、X線・粒子線治療装置の講義を受け、放射線治療装置と放射線治療計画システムを見学した。放射線治療計画では、正常細胞を傷つけずに腫瘍細胞に集中した線量分布を得るため、患者のCT(コンピュータ断層撮影)画像を元に照射の方向や形状、投与線量などを放射線治療ソフトウェアでシミュレーションして最適な照射方法を検討するデモンストレーションが行われた。続いて、ヘリカルCTシステムとC-ARM型放射線治療装置が一体となった「トモセラピー」について説明を受けた後、腫瘍の線量均一性に富み正常組織を避ける能力に優れた照射装置「Radixact」を見学した。量子科学研究開発機構放射線医学研究所の野田耕司所長が重粒子線がん治療の歩みについて講演を行い、T.ライアン(梁祥光)医師がアジアの粒子線治療の事情についての特別講演を行った。

  小児がん患者用の陽子線治療施設

 2日目は、筑波大学附属病院で、榮武二教授が放射線の可視化について、磯辺智範教授が放射線の医学利用について、それぞれ講義を行った。その後の陽子線治療施設見学では、陽子を最初に加速させるライナックや、その陽子を直径7mの円軌道上でさらに光速の約60%にまで加速させるシンクロトロンなどの治療装置の現場を訪れ、高さ10mで重さ200t以上もある巨大なガントリが回転する様子や、治療を受ける小児がん患者の不安を和らげられるようスヌーピーの絵柄が描かれた照射室で照射口が治療台の周りを回転する様子などを目の当たりにした。さらに福島県立医科大学の長谷川有史教授が放射線災害医療について、筑波大学の櫻井英幸教授が切らずに治すがん治療について講演し、最後に同大学サイバニクス研究センターでロボットスーツHALを見学した。
 同スクール顧問を務める辻井博彦医用原子力技術研究振興財団副理事長は、学生のうちに放射線医学の現場を実際に目にできる機会を設けることは意義深いとして、「企業や研究機関等からも『次世代育成のためなら』と毎年好意的に受け入れてもらえている」と開催への協力に感謝の意を示した。また近年の傾向として、医師を志す女子学生が増えていることや、工学系専攻でも医学系分野に進みコンピュータ診断などに携わりたいと希望する学生が増えていることなどに触れ、放射線医学の将来を担う若い力に期待を込めた。