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英議会上院の小委員会、Brexit後のエネルギー供給保証で政府に提言

2018年1月30日

 英国議会上院(貴族院)のEUエネルギー・環境問題小委員会は1月29日、EU(欧州連合)から離脱(Brexit)した後の英国におけるエネルギー供給とその価格、および低炭素化など、エネルギー供給保証全般について、エネルギー関係者の証言を取りまとめた報告書を公表した。
 EUおよび欧州原子力共同体(ユーラトム)からの離脱は、英国がEUとの間で現在享受している円滑なエネルギー貿易をリスクにさらすとした上で、異常気象や発電設備で計画外停止が発生した際、英国はエネルギー供給不足に陥り易くなると示唆。同小委はそうした事態の発生防止と対応についてEUとの協働方法を提示するよう政府に勧告するとともに、EUの単一エネルギー市場から離れることで、顧客が支払うエネルギー価格にどのような影響が及ぶか評価することを求めている。
 また、EU域内から原子力専門労働者の入国が制限された場合、ヒンクリーポイントC計画を含めて英国の原子力発電所建設能力が不確かなものになると警告。離脱時までにユーラトム条約に代わる規定条項を準備できなければ、核物質の輸入も難しくなり、英国のエネルギー供給保証にさまざまな影響が及ぶとの見解を示している。

 上院では現在、ユーラトムからの離脱にともない原子力分野で必要となる英国独自の原子力保障措置体制を構築するため、保障措置の規則法案を下院に続いて審議している。エネルギー供給保証全体に関する今回の報告書は、上院の同小委員会が2017年9月から10月にかけて、様々なエネルギー業界から証言を聴取して作成したもの。英国内でヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画を進めているEDFエナジー社や英国原子力産業協会(NIA)などのほか、電力やガス、石油、再生可能エネルギー、送・配電などの各事業者や関係産業団体、研究機関が協力した。 
 
エネルギー貿易
 報告書の中で同小委員会はまず、信頼性のある適正価格の電力・ガスの供給に英国全土の事業者や個人がいかに依存しているかに言及。また、EU加盟国との迅速かつ廉価な貿易が、そうした供給を支えてきたという事実を強調した。同小委によると、英国はEU域内エネルギー市場(IEM)の形成で主導的役割を果たしたが、Brexit後にIEMの外でEU諸国とエネルギー貿易を続けた場合は、効率性が低下し、顧客のエネルギー・コストも上昇する可能性がある。このため同小委は、IEMから外れた際のエネルギー政策の明確化や、EU加盟国とのエネルギー貿易継続において、EUの関係法制をどの程度遵守する必要があるか、明らかにすることを政府に勧告。英国とEU間でガスと電力を融通している国際連系線に関しては、どのような規制体制を適用することになるのかについても、出来るだけ早急に明確にするよう要請した。

ユーラトム
 ユーラトム協定は、EU域内で原子力資機材や核物質を適切に供給・管理・監督する枠組を定めており、英国の原子力発電においても重要な役割を果たしている。このため同小委は、国際原子力機関(IAEA)の要件を満たせるレベルの保障措置体制を国内で構築することが、エネルギー供給保証を維持する上で重要になると指摘。政府と原子力規制庁(ONR)の両方に対し、早急に措置を講じるべきだと訴えた。ONRにとっては、離脱時までに十分な数の査察官を採用・訓練する必要があるなど難しい課題であり、政府には可能な限りONRをサポートすることや、必要となる対策の検討を促している。 
 同小委はまた、既存の原子力供給チェーンを維持するため、英国は新たな原子力協力協定(NCA)を結ぶ必要があると明言。英国は現在、多くの国と核物質貿易を行っているが、NCAはその法的枠組となるため、米国、カナダ、日本、豪州等とのNCA締結は特に優先すべきだとした。さらに、そのための交渉を始める前に英国がIAEAレベルの保障措置体制を構築するのであれば、可能な限り早急にIAEAと合意に達することが政府に求められる。原子力資機材と核物質関係の貿易が、タイムリーかつ合理的コストで行われるよう、政府は原子力貿易関係の協定を整備しなければならないと強調している。