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米ブラトルGr.が報告書:2州4基の早期閉鎖計画は州経済に悪影響

2018年4月17日

 エネルギー問題の分析を専門とする米国の大手コンサルティング企業ブラトル・グループは4月16日、オハイオ州とペンシルベニア州の商業炉4基で計画されている早期閉鎖は、温室効果ガス排出量の実質的な増加につながるとともに、電力価格の大幅な上昇といった経済的悪影響をこれらの州にもたらすとの分析報告書を公表した。
 両州では北米最大の地域送電機関(RTO)のPJMが電力システムと卸電力市場を運営しているが、PJMの制御エリアすべての再生可能エネルギー源よりも、閉鎖予定の4基の方がはるかに多量の無炭素電力を供給している事実に同グループは言及。これら4基を閉鎖すれば、CO2の削減目的で過去25年間に設置された再生エネ源による恩恵、および投入された数十億ドルが無駄になると警告している。

 ISOや地域送電機関(RTO)が運営する自由化された卸電力市場においては、廉価なガス火力や州政府が優遇する再生エネにより電力価格が低下。電力需要も伸び悩んでいるため原子力発電所の採算性が悪化し、早期閉鎖に追い込まれるものが続出している。オハイオ州でデービスベッセ原子力発電所とペリー発電所、ペンシルベニア州でビーバーバレー発電所1、2号機を運転するファーストエナジー・ソリューションズ(FES)社は3月末、こうした理由に加えて、PJMの容量オークションで十分な結果が得られないことから、4基を2020年から2021年にかけて閉鎖すると発表。これらの閉鎖が卸電力市場の信頼性に影響を及ぼす場合はPJMの承認も必要になるため、閉鎖計画をPJMにも伝えたことを明らかにしていた。
 ペンシルベニア州ではまた、エクセロン社が昨年5月、スリー・マイル・アイランド1号機を2019年に早期閉鎖する方針を公表。このような事態を回避するためには、同社とFES社はともに、イリノイ州やニューヨーク州で取られたのと同様の政治的解決策、すなわち「無炭素で信頼性の高い電力供給」という原子力の特質に対し、財政的な補償を与えるような措置がオハイオ州とペンシルベニア州でも必要との認識を示している。

 ブラトル・グループの報告書によると、これまでに行われた調査の分析結果から、4基の原子炉が運転を継続した場合に抑制されるガス火力や石炭火力の発電量はかなりの量になる。これにともない年間2,100万トンのCO2排出を抑えることができるが、これは路上の自動車450万台分および潜在的に必要となる年間の社会的費用(SCC)9億2,100万ドル分に相当。SOxやNOx、PM2.5といった基準汚染物質についても、年間数万トンの排出が抑制可能で、軽減されるSCCは年間1億7,000万ドルになるとした。

 また、これら4基の合計発電量は年間390億kWhにのぼり、PJM管内にある太陽光と風力発電による2017年の合計発電量260億kWhを大きく上回った。4基の原子炉を閉鎖してしまえば、PJM管内の無炭素発電量が2017年レベルに戻るまで、現在の再生エネ発電量の増加率では2032年までかかるとした。コスト的にみても、4基の無炭素発電量を再生エネで代替した場合、年間約20億ドルが必要になると報告書は明言。この数値は、国際エネルギー機関(IEA)による再生エネの平均的なコスト見積に基づくとしている。

 同グループはさらに、原子炉4基を温存することで全体的な電気料金を低いまま維持できると指摘。州内のGDPと税収の拡大にも貢献し、一層の雇用創出にもつながるとした。具体的には、閉鎖した場合と比べて顧客が年間に支払う全体的な電気料金をオハイオ州では年間約4億ドル、ペンシルベニア州では約2億8,500万ドル低く抑えることが可能。PJM管内全体では、15億ドルに達するとしている。また、これらの原子力発電所は現在、3,000人以上の直接雇用に加えて、関連する契約雇用も提供しているが、早期閉鎖によりこれらの多くが失われる。原子力発電所は経済的側面において、数千人分の二次的雇用を支えているだけでなく、州のGDPを数億ドル分増加させていると強調した。