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EU裁判所、英国の新設計画に対するオーストリアの異議申し立てを却下

2018年7月13日

 欧州連合(EU)の一般裁判所は7月12日、英国のヒンクリーポイントC(HPC)原子力発電所建設計画に関して、オーストリアが申し立てていた異議を却下する裁定を下した。
 同計画については英国政府が複数の財政支援策を提供しており、EUの執行機関である欧州委員会(EC)は2014年10月、これらの方策はEU競争法の国家補助規則に適合していると判断。これに対して、反原子力の立場を取るオーストリアがこの判断を無効とするよう求めていたもので、ルクセンブルクもこの主張に賛同していた。一方、英国に加えて仏国、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアがECの判断を支持。一般裁判所も今回の裁定でこの判断を改めて確認しており、英国政府には原子力発電開発を公益目的であると定義する資格があり、EU加盟国すべてがこの目的を共有出来ないとしても、ECが英国政府のスタンスを受け入れたことは間違っていないと説明した。このような一般裁判所の裁定について、オーストリアは2か月以内にEU司法裁判所に控訴することが可能である。
 HPC計画ではすでに、2017年3月に最初の部分的建設許可が発給されており、事業者のEDFエナジー社は2023年の初号機の運転開始を目指して作業を進めている。

 英国政府が提供する財政支援策は3種類あり、EDFエナジー社がHPC発電所の運転会社として設立したNNBジェネレーション社に適用される予定。すなわち、(1)HPC発電所の電力を政府が安定的に買い取ることを約束した固定価格による差金決済取引(CfD)制度、(2)政治的理由によりHPC発電所が早期閉鎖された場合に、NNB社の投資家に対して担当大臣が行う補償、(3)英国政府の信用保証制度により、NNB社の発行社債について最大170億ポンド(約2億2,289万円)の適格債務を保証――である。
 これらについてECは「EUの域内市場に適合し得る」と結論付けており、その理由として、新たな原子力発電設備を必要な時期に間に合うよう建設するという目的の達成に必要なものである点を指摘。域内市場の競争原理が歪められるリスクは限定的と考えられるほか、これらの方策による悪影響があるとしても、好影響によって相殺されるとの認識を示していた。

 この判断に対するオーストリアの異議申し立てに関し、一般裁判所はまず、EUの国家補助規則は原子力分野の方策にも適用可能であるものの、適用に際しては欧州原子力共同体(ユーラトム)協定の条項と目的も考慮する必要があると述べた。
 次に、「原子力発電の推進は、国家補助を正当化する上で必要となる共通の利益という目標には相当しない」とするオーストリアの主張について、まず「一加盟国が追求する目標は公共の利益に資するものでなくてはならず、企業が私益を得ることのみが目的であってはならない」と指摘。ただし、必ずしもすべての加盟国や大多数の加盟国の利益である必要もないとした。新たな原子力発電設備の建設という目標は、原子力分野の投資促進というユーラトム・コミュニティの目標とも結びついており、EUの基本条約においても、加盟国それぞれが好ましいとするエネルギー源を選択する権利が保証されている点を強調した。
 また、「HPC建設計画に英国政府の介入は不必要」としたオーストリアの論点について、一般裁判所は「工期の長期化など、原子力投資がさらされがちなリスクの回避で市場本位の金融手段や契約が不足していることを考えれば、必要な時期に新たな原子力発電設備を得るためには国の介入も必要である」と指摘。ECは法に基づいて正しく判断したとの認識を示した。
 同裁判所はさらに、ECが「再生可能エネルギーの間欠性を考慮すると、HPC発電所の建設工事と同じ期間内に、同発電所と同じ容量の風力発電所が建設できると期待するのは非現実的」と結論付けていた点に言及。オーストリアはこの結論を覆すことができなかったと説明している。